※この記事にはネタバレが含まれています。また記事の感想は個人的な意見です。
S19 E06 「Very Important Sheep」
脚本:ヘレン・ファレル
内容:焦っていたパーシーは家畜車に開いた穴を確認せず出発する。
【高評価点】
・パーシーのおっちょこちょいな性格が活かされている。また、彼の仕事である郵便に遅れが出たせいで慌てているといった工夫が良い。
・パーシーの走行する支線のルートが細かいところまで地図通り。バーティーなどキャラクターの選択も良い。
・BGMが非常に心地よい。曲によって支線の穏やかな雰囲気がちょうどよく表れている。
【低評価点】
・隣の給水塔にも機関車がいっぱいだとか、せっかく改変された操車場の設定をうまく利用してほしかった。
【その他小ネタなど】
・パーシーの主役回。
・オリバー・マキューとアシュナ・カプールが新たにキャストに参加。彼らは羊を可愛がる2人の子供たちを演じている。
・TFC「I need you to go to Farmer McColl's farm and collect his new spring lambs and ewes.」
・Percy「me, sir?」
・TFC「No, ewes.」
・※↑パーシーによるewe(雄牛)とyou(君)の聞き間違い。
・ナップフォード駅の操車場には給水塔が二つあるはずだが、このエピソードには一つしか存在していない。(CGミス)
・貨車に穴を空けた要因は貨車から突き出したレール。
・ブレーキ車をつながず発車してしまうパーシー。
・子豚と泥遊びをする子羊。
・羊でいっぱいのアニーと押し出された乗客でいっぱいのクララベル。
・トレバー、S15以来の登場。
・いつの間にかアニーに乗車していたトロッターさんのブタ。
・やや不憫なアニー。
【このエピソードについて】
これもUS版のDVDが先でした。『Tales on the Rails』の1番目に収録されていてパッケージのイメージにもなっています。パッケージと大まかなあらすじを見た際、僕は真っ先にS15「グラグラのきてき」やS16「どろんこジェームス」を思い浮かべました。機関庫にハット卿がやってくる、貨車から羊が脱走、パーティ会場っぽいのが写ってる、…。そう、S08~16で家畜運ぶ時の定番です。後に公開されたクリップではS13のようにブレーキ車無しの家畜車一台を牽いているのを目にしました。当初は嫌な予感しかしなかったです。こりゃ退屈しそうだな、と。
予想通り至ってかなりシンプルでした。慌てたパーシーが意図せず貨車に穴を空ける→穴から羊が次々脱走→それをトーマスが拾う。といった内容。
悪く言えば退屈。オチがすぐにわかってしまっているので回りくどい表現にはちょっといらっとします。また、根本的な教訓は「Lost Property」と少し似ています。
ですが、上記の2話と比べ物にならないほど評価できる点が多いのがこのエピソードの特徴。ちょっとしたユーモアがあり、事故の元ネタがありそうな現実味のある内容に仕上がっています。パーシーだって慌てた以外はきちんと家畜運搬のルールを守って運行していますし。僕はこのお話を見て牧師の息子クリストファーさんの原作絵本にありそうなエピソードだと思いました。そう、S17「こおったてんしゃだい」と同じ共通点です。
(※決してクリストファーさんの絵本がつまらないと思っているのではありません。シンプル、リアル、ユーモアの三拍子という点が、それを彷彿とさせられるのです)。
評価点の一つはまずチョイスです。チョイ役キャラクターの選択、登場ロケーションの数々はは地図通り。(新地図に記載されている踏切の後にある"Classic windmil"とはS08以降のOPに出てくるあの風車の事なのでしょう)。方向は相変わらず逆だが…。
給水、踏切、信号、子豚と停車する理由もナイスでした。子供たちが呼び止めたとか目の前に水たまりがあったとか理由にならない事柄はありません。
そして今回はとにかくBGMが素晴らしいです。のどかな支線の風景に自然と流れる穏やかな癒しの曲。おかげで非常にリラックスできました。
やっぱりトーマスの支線をフォーカスするエピソードが一番落ち着くかもしれない。
視聴前に気になっていたブレーキ車や脱走について明確な理由があったのも良かった。
大抵、ゆっくり走らなくてはいけないのに急いでしまう、または大きな音を立ててしまうというパターンが多かったS8~17ですが今回はなんと貨車に開いた穴。それも貨車から飛び出たレールによって壊れるという。良いアイディアだと思いました。
近頃のシリーズで、シンプルなエピソードにつきものなのはちょっとしたユーモア。ニトロゲン・スタジオのCGほどリアルに動いたりはしないけれども、羊と豚がとにかくかわいい。とくに拾われた羊たちが律儀に客席に座っている姿は笑いを堪えられませんでした(笑)
【チェックポイント】
フェアにつきものなのは子供たちの大人気トレバー。S15「エミリーとダッシュ」同様エキストラですが、S20以降にも出番があるようで、パーシーと同じ俳優ナイジェル・ピルキントン及びクリストファー・ラグランドが演じることが判明しています。ちなみにジェム・コールやトロッターさんもS16以来の登場です。
すっかり馴染んでいて可愛い(笑)
養豚場のブタたちの動きも観察してみるのもいいかも。
人間の行動もまた面白いです。
が、個人的に残念なのはせっかく与えられた個性が活用されない"不機嫌なお客さん"。ダンカン回のようなキビキビした動きを観たかったかなぁ。
いつの間にか紛れ込んでいたトロッターさんのブタ。
【日本語版について】
またあとで
全体的な面白さ:☆☆
鉄道らしさ:☆☆☆
リアリティ:☆☆☆
キャラ活用:☆☆☆
BGMの良さ:BEAUTIFUL
アニメーション:☆☆☆
道徳教育面:☆☆
【最終的な感想】
何かあったと思ったら第一に確認することは大事。そしてE03同様、落し物(?)を見かけたら見て見ぬふりをせず助けたり心当たりのあるところへ届けること。
前回同様、脚本はヘレン・ファレルさん。良くも悪くも女性らしい…というと語弊が生じますので言い換えると彼女の脚本にはいつも優しさに包まれるような"癒し"があります。今や僕は彼女の書くエピソードのとりこです。そして音楽担当のロバート・ハーツホーンさんも大変良い仕事をしました。実に微笑ましいエピソードでした。
ただ、胸に残る物足りないものは盛り上がりの無さと物語が極端に一方通行なところのみ、でしょう。
それにしても、新しいパーシーの声は英米共に最高ですね。自然的で受け入れやすい。
総合評価:8.5/10