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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第22シリーズレビュー第4回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S22 E04 『Trusty Trunky』『トラスティー・トランキー』

脚本: ベッキー・オーバートン

内容: トーマスはインドで新しい友達ラジブと出逢った後、アシマからゾウは貨車を入換える事もできると教わる。

テーマ: 異なる物事のやり方

 

【高評価点】

・ラジブのキャラ付けと掘り下げ。

・昔は機関車の代わりにゾウで貨車を入換えた事や、インドではウシは神聖な生き物など、インドの文化ネタが豊富。

・ゾウがトーマスを線路に押し戻す際のアニメーション。

 

【低評価点】

・事故の原因が安直で、そのくだりが学習に影響がない上せっかくのストーリー構成を蔑にしている。

・トーマスとアシマのキャラは活用されていない。

 

 

【このエピソードについて】

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©Mattel

 凄く…シンプルです。決して悪いシナリオではないものの、内容が凄く、とにかく薄い。動作を起こさない場面が多くテンポはゆったりとしていて7分の尺でさえ上手く使い熟せていないように感じます。第1話のように異国(今回はインド)の習慣や文化を感じさせる描写は沢山盛り込まれていますプロットに影響は無くまるで箇条書きでした。

しかしそれをあまり感じさせないほど良いポイントがたくさんありました。その殆どはこれまた私が諦めかけていた、鉄道作品としてのリアリティです。 

 まず、粗筋のようにアシマがトーマスに教えた、ゾウも貨車を入換えできるという事。これは実際の歴史に基づいています。インドの鉄道では第二次世界大戦中、機関車が不足し、代わりにゾウを操縦することで入換え作業を解決しました。

その描写は本編中にはありませんが、代わりに脱線やゾウが線路に押し戻すアニメーションが丁寧に描かれていました。ただ「ドン」と押すのではなく、胴体を駆使して持ち上げたり安全なところまで押し戻したりと、その様子は知的で非常にリアルです。更に水をかけて泥を洗い流したりととても愛らしい。

このように、ゾウは社交的かつ利他的で、周囲の環境や経験から学び、長い鼻で複雑な作業も熟すことが出来るのだそうです。

 

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©Mattel

  空想はユニークでしたが、これに気を取られて脱線する在り来たりさと直後のトーマスの台詞で作家本人が物語の構成(ファンタジー・シークエンス)を否定しています。リブートしたての第4話目でそれ言うのか…と、流石に困惑を隠せません。

(多用されるのも困りものですが)。

また、トーマスとアシマのキャラクター性を上手く活かしきれていない事も残念ポイントの一つでした。トーマスは普遍的な主人公のようにえらく純粋で、アシマは普遍的に習慣を教えるだけです。

 

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©Mattel

       "Crumbling Crowns!"

 このエピソードで私が最も面白いと感じたのはズバリ、ラジブです。

ラジブの初登場作品はアシマと同じ『TGR』でしたが、ヨンバオやシェイン同様台詞が無いどころか、TGRキャラで唯一性格が設定されていませんでした。そんな彼が今回から性格を与えられ(寧ろ判明した)ダイナミックな掘り下げと共に大出世した事を大変嬉しく思います。そしてニキル・パーマーの声も彼にぴったりで可愛いです。

彼の性格は一見インド版ジェームスのように思えますが異なる点が多くあります。

・インド国宝である事を誇りに思っており、煙突の王冠が自慢。

・自分の国と鉄道、そして他の優美な仲間も誇りに思っている。

・育ちがいいのか純粋で子供っぽく素直だが、現金な性格。

・目立ちたがり屋でちょっぴり生意気。

・高所恐怖症*1

これらの性格が番組に明るいユーモラスな瞬間を多く与えてくれます。彼が好意を抱く同僚のディーゼル機関車ヌール・ジャハーンに軽くあしらわれているのも面白いです。

 

 一方でトーマスとアシマの再会が明確に描写されなかったのは少し悲しいです。

 

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©Mattel

  私はまた、同じくラジブの同僚のディーゼル機関車シャンカールとの絡みに凄く興味があります。シャンカルが具体的にどのような性格かはわかりませんが、彼の冷静で真面目そうな態度とラジブの性格の対面は面白そうに写ります。

シャンカールは再来週放送予定のインド回『Tiger Trouble』にも出番があるとのことで、彼の掘り下げや活躍もまた楽しみです。

 

【チェックポイント】

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©Mattel

  脱線の仕方はS19『やまのむこうがわ』と同様、進行方向と異なるポイントレールに乗り上げた事。今回では大袈裟に線路を外れる事も無く自然な感じで脱線しました。

 

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©Mattel

 今回で初登場した女性の急行列車用大型ディーゼル機関車ヌール・ジャハーン。 シャンカルと異なり新規で作成されたCGモデルです。名前は北インドムガル帝国第4代皇帝ジャハーンギールの妃が由来と思われます。

 インド鉄道WDM-3A(1994年以降製造)がモデルで、彼女の塗装と装飾は1982年にインドで最初に登場した豪華観光列車"パレス・オン・ホイールズ (Palace on Wheels)"の牽引機に基づいています。

 私が知る中で彼女はまだ一言しか台詞が与えられていませんが、ご当地機関車の一台として彼女に大きな役割が与えられることを切に願います。

 

 

全体的な面白さ:☆☆

鉄道らしさ:☆☆☆

キャラ活用:☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:PERFECT

道徳教育面:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 幾つかの問題があるものの、インド回のオリジンとしては良いエピソードだったと思います。ゾウが可愛かった。物語の後で流れるお浚いコーナーでは今回のテーマは「異なる物事のやり方」と語られています。お浚いの後でトーマスの「もしチャンスがあったら違うやり方も試してみてね、きっとびっくりするよ!」の台詞で一幕が終わります。私は今の所、本日の纏め方の清々しさが一番好きかもしれないです。

それからゾウはソドー島にも居ますのでトーマスにとっては実に生産性のある有意義な学習だったのではと思います。この経験が今後の物語でも活きて広がってくるといいなぁ。

 

総合評価: 6/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:公式YouTubeの2Dアニメ『Near and Far』シリーズで判明。