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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第22シリーズレビュー第25回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S22 E19 『Counting on Nia』『ニアとすうじ』

脚本: リー・プレスマン

内容: トーマスの代わりに支線で働くことになったニアだが、ホームを探す事に四苦八苦してしまう。

テーマ: 助けが必要なときは尋ねる

 

【高評価点】

・頭の良さと知識量は別物という道徳。

・上記の道徳が子供や他国の視聴者にとって分かりやすいように配慮、または関連性がある。

 

【低評価点】

・ニアの頭の良さを強調させるために入換えのベテランであるソルティーとポーターを無能に描写。

 

 

 

【このエピソードについて】

 さあ、第22シリーズの最後の方にようやくニア単体主観の短編が来ました。私はずっとこの時を待ちわびていましたよ。

 

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©Mattel

 数のお勉強? いいえ、識字のお勉強です。

サブタイトルは「頼りにする」と「数える」の二つの意味を持っています。頭が良くていつもみんなの助けになって頼りにされているニアが、1,2,3,4,5と数えたり、物体の数を数える事は可能でも、実は標準的な数字を読むことが出来なかったという事実が明かされます。そう、頭の良さと知識の多さは別物なのです。

ニアが数字を読むことが出来ないのは出身地の文化的な物も含まれていると思いますが、彼女は来島する前まではホームレスでしたので、かつて自分の居場所=機関庫と鉄道が無かった事も遠因となっているようにも考えられます。また、失敗に落ち込み側線へ入り込んでしまう場面は『地球まるごとアドベンチャー』と共通していると思います。映画では約束を破る事や正しく仕事が行われない事が嫌いという描写があります。居場所が失われた事情は不明ですが、先述の彼女の性格と内情を知っていると、あの場面はなかなか来るものがあります…。

 「助けが必要なときは仲間に尋ねる」というテーマは、この作品のみならず他の子供番組でもよく多用されるものなので新しさはありませんが、道徳が強調され、なおかつ理解の早いニアならではの個性が活きていて素晴らしいです。同じく知的なキャラクターであるエドワードとはまた違うポイントを多く持っていますね。

 

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©Mattel

 主人公が把握していない物を数字として焦点を当てることで、今期のターゲット層のみならず、大人を含む学習障害(LD)あるいは識字の出来ないの視聴者にとっても良い働きをすると思います。また、タンク車側面などの文字がCG期以降の際意図的にロゴに変化させた事と同様に、他国の視聴者への配慮のようにも考えられます。逆に、ニアの存在自体が移民へのメッセージであるように、上手く行けば、この類いの話は認知の広くない場所から外国に移住してきた人にとっても助けになるとも思います。

 自分の知識量を活かして独特な方法で識字する場面はかなり面白いです。空想シークエンスの良い使い方の一つでもあります。このような場面は、自分たちの考えるやり方で覚え、成し遂げようというメッセージと捉える事も出来ますね。

 

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©Mattel

 今期の世界編で各々2両ずつ客車達がアドバイス役となったように、ソドー編も同じようにアニーとクララベルが自分たちの方法で活躍している事が好きです。性格は普段と全く変わりません。だけど、同じ2両の客車でも、問題を起こしたり的確に物事を伝えるアンアンとインロン、初対面時には傍観して揶揄うオーブリーとエイデンとは、また違う個性が彼女達にもある事をここで改めて気づかせてくれます。勿論、それは重要な点ではありませんが、私はそう実感しました。そしてニアの強みを生かして協力していたところが本当に良かったです。

それから、女性だけで解決しているところも好きでした。S13『エミリーとおはな』、S19『エミリーとケイトリン』、S21『トップハム・ハットきょうのおかあさん』など、これまでもそのようなエピソードは存在します*1が、私にはまだ新鮮に見え、それが好きです。特に人知れずその子達の間だけで物事を解決するのが良い。

 また、いくつかの鉄道的な要素は*2かなり素敵でした。そしてニアが支線で旅客列車を引っ張る事も、偶然の一致かもしれませんが、モデルになった機関車の運用と合っています。文字さえ読めれば、彼女も旅客列車の牽引は得意なのかも。

 

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©Mattel

 たった数十秒の場面なので大した問題ではありませんが、貨車の入換えのベテランであり行動力の高いソルティーとポーターを、ニアの頭の良さを強調させる場面の為に問題を抱えるキャラクターとして描かれた事が唯一の不満です。2台とも仕事に関しては考えながらテキパキ動くキャラクターなんですよね。年老いたのかな。

 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 フィリップもすっかりプレスマンのお気に入りですね(笑) 前期に数字を扱った物語が二つあったのでそれに関連した形で、そして復習における応用としての登場は素直にうれしかったです。彼は現在番号に誇りを持っているので、ニアが正解した事も嬉しかったでしょうし、楽しい雰囲気を作り出すところが好きです。 

 

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©Mattel

  スカーロイにヘッドランプが付きました。まるでタリシン*3のようです。

 更に、彼が牽いている、今回初登場の緑色の客車はグリン・バレー路面鉄道(GVT)の3等客車です。後にタリシン鉄道*4に譲渡され1等客車として現在も動態保存されています。

私はこれがナイトロジェン・スタジオ*5の使われなかった置き土産なのではないかと推測しています。ナイトロジェンのグレッグ・ティアナン監督は映画『ブルーマウンテンの謎』と第16シリーズの為にタリシン鉄道などへロケハンしに行き、スカーロイを始めとする5台の狭軌機関車達のほか、客車や貨車を実機のデザインに基づいてモデリングを行いました。彼らが凝っているのはそのお蔭です。

 ちなみに、ダンカンのCGはアーク・プロダクション移行後に作成されたと考えられます。ティアナンがロケハンに行った頃、彼のモデル機である「ダグラス」はちょうど改修中でした。

 

 

全体的な面白さ:☆☆

鉄道らしさ:☆☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳教育面:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 今期のお気に入りの一つです。ニアの克服と学習の仕方に焦点を置いているためプロットは小さいですが、上手く纏まっていて楽しい、子供(ら)の為の良いエピソードでした。幸いにも冒頭以外に押しつけは感じませんでした。

私の思う「子供の為」とは、手抜きとは正反対に、今後の経験に役立てるような道徳を含んだエンタ的で楽しい物語を指します。もしあまりに雑な物語に対し、擁護の意で「子供の為」を用いる場合、それはライターの技量が足りない言い訳に過ぎません。

 

 非常に残念な事に、リー・プレスマンのトーマスでの仕事は今回で最後になります。模型期を合わせて全25話、素晴らしく理に適った、開発的で斬新な楽しいシナリオや、元小学校教員らしい視点の道徳的なエピソードをどうもありがとうございました!!

また機会があればよろしくお願いします。

 

総合評価: 8/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:観てない方は観てね。

*2:一応道路でも可能ですが

*3:タリスリン

*4:タリスリン鉄道

*5:ニトロゲン・スタジオ