※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
S23 E08 『Thomas Makes a Mistake』『トーマス、なんどもまちがえる』
脚本: カミーユ・ユーキャン&ローズ・ジョンソン
内容: 間違いを犯したトーマスは誰にも助けを借りずに取り戻そうとするが…
テーマ: 失敗を恐れず正直に助けを求めよう
【高評価点】
・テンポの良さ。
【低評価点】
・展開とトーマスにとっての教訓はS9-16の間で飽きるほど使われた。
【このエピソードについて】
私はこの手のプロットがS9-16の間*1で飽きるほど何度も使用されてきたことをもう嫌と言うほど知っています。しかも主役は何度も学んだであろうトーマスです。教訓と共にちょっとした工夫が成されていたことと、インドの脇役キャラクターの出番を多く与えた事、そしてテンポが良かった為、楽しんで観ることが出来ました。
ちょっとした工夫とは、昔のシリーズでは言及だけで済まされた事の多い『重ねて混乱と遅れを招く』描写が実際にあった事です。それと当然と云えば当然ですがスリーストライクでなかった事も良いです。
とはいえ、これといって書くことが無いほど平凡でした。前期のインド回のように箇条書き展開でない事が一番の救い。
今回一番の改善点として、サルの宮殿の時みたいな駅の標識ではなく、信号と、信号手の怠惰を映す必要があったように思います。まるでトーマスが自分で線路を選んでいるようです。
それから、インド=知らない土地での体験ですから、トーマスでも理に適っているとは思いますが、忙しそうなチャルバラ局長を気遣う様子や、不機嫌な駅長の様子を確認する描写があると、物語にもっと深みが出たのではないかとも感じます。
最後に、もし、ヌール・ジャハーンが主役だったら、いかがでしょう。彼女の性格は何処にも語られていません。ラジブのように自惚れる事が無い事と、穏やかで現実的である事、特別列車を牽引する以外に物語からの設定を拾えず、まだ空っぽの様です。
今回のMVPは個人的にチャルバラ局長です。性格と立場はトップハム・ハット卿と大差無いと思いますが、柔軟な思考を持っていることがポイント。S22では本当に普遍的で目立たない役割しかなかった彼女に、だんだんと肉付けが施されてきたことは喜ばしい限りです。
更に個人的にスラジプール駅の駅長も面白いキャラクターだなと思いました。凄く穏やかで非常に寛大な心を持つ、この駅長の一日を描いた物語を見てみたい(笑)
【チェックポイント】
アシマが働く描写は無いけれど、ようやく山岳鉄道が登場しました。冒頭の風景を見渡す場面に出てきて、中盤においてトーマスがフワッと触れます。
上の画像の中央より右側に、白い蒸気機関車*2がてっぺんに向かって走る様子を確認することが出来ます。ギア非適応の機関車が先頭に立ち貨物列車とブレーキ車を繋いで走っているのがちょっぴりザンネン。*3
『The Other Big Engine』と同じようなカメラアングルと、対象物がマンゴーであるため、また果物が粗末になるのかと思ったのは私だけではないはず。最も、ごろっと落ちたマンゴーは全部傷んだと思いますが。
中央駅の表示です。
上の行はマラヤーラム語、下の行はヒンディー語で「バルカラ(Varkala)」と書いてあり、この中央駅がバルカラ駅であることが判ります。そして"Varkala Railway Station"で検索すると、バルカラ・シヴァギリ駅の表示の左半分の引用であることも判りました。インド国鉄コラム・ティルヴァナンタプラム線上にある、人気のビーチ近郊の駅です。
実際のバルカラ・シヴァギリ駅はここまで大きな駅ではありませんし、外装もまったく似ていませんが、2019年現在ではインドで2番目に忙しい駅として知られています。一番はティルヴァナンタプラム中央駅。
ちなみにバルカラ・シヴァギリ駅は元々1904年から2005年までバルカラ駅という名前で、2000年に駅の改築が施されたようです。インド編の時代設定は2005年以前と考える事も出来ますが、ヌール・ジャハーン(パレス・オン・ホイールズ)という壁がありましたので、フィクション内のバルカラ駅と考えるのが妥当かもしれません。
【おまけ】
ちなみに、これまでのインド編や設定で出てきた実在の地名や施設を本物の地図(グーグルマップ)と照らし合わせてみると、概ねこんな感じです。注釈も一緒に読んでください。
① バルカラ → 劇中の中央駅の所在地。
② タージ・マハル → S22『トラスティー・トランキー』等で遠景に登場。
③ ガルタ寺院 → ジャイプルにある、別名「サルの宮殿」。*4
④ スラジプール → この話の目的地。
⑤ ニルギリ山岳鉄道 → 設定のみ。アシマが本来働く鉄道。*5
⑥ コルカタ → 設定のみ。ラジブが本来働く鉄道の所在地。*6
とまあ、こんな感じで、めちゃめちゃ偏ってます。このお話までトーマスはスラジプールや不機嫌な駅長の居る駅には行ったことが無いようですが、インド編ではお馴染みのサルの宮殿やタージ・マハルのすぐ近くであることがわかります。それまでの道筋は通っていてもおかしくないような気もしますね。
ちなみにスラジプールに最も近い山岳鉄道はカルカ・シムラー鉄道ですが、もっと北の方に位置するので、順番的にバルカラに近いニルギリ山岳鉄道が妥当かもしれません。
ラクダの居る砂漠は、③北西に位置するタール砂漠かなと思います。
それにしても、どの地域もバルカラから非常に遠いです。なんとバルカラからスラジプールまでは、おおよそ2,400kmの距離があります。自動車でも丸一日はかかるそうで、まさに大冒険ですね。
…なんてツラツラ書きましたが、あくまでも豆知識として、参考程度に留めて頂けると幸いです。
全体的な面白さ:☆
鉄道らしさ:NOTHING
キャラ活用:☆☆
BGMの良さ:☆☆☆
アニメーション:☆☆☆
道徳教育面:☆☆
【最終的な感想】
S9-16でよくあった展開に改めてお浚いコーナーを設けた感じですね。この新時代から観るであろう子供のために配慮したエピソードといったところでしょうか。キャラの開発が行われていない普遍性の役割にも拘らず、S22では解説か背景だったアシマやヌール・ジャハーンに準主役級の出番があるなどの工夫とテンポの良い展開のおかげで、私にとって退屈さは感じなかったのが良かったです。
驚いたことに、今回はラジブが一切出演していません。無論、そんな回があっても良いと私は思います。出てこなくてはならない理由なんてありませんから。それと、もっともっと女性キャラに焦点が当たりますように。
総合評価: 5/10