Z-KEN's Waste Dump

喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第23シリーズレビュー第10回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

f:id:zeluigi_k:20190519084101j:plain

S23 E10 『Grudge Match』『まけずぎらいのラウル』

脚本: デヴィー・ムーア

内容: トーマスと再会したラウルはリベンジする機会を窺う

テーマ: 勝負に勝つより大事なこと

 

【高評価点】

・教訓内容。

・長編作品との連続性とラウルのキャラ付け。

 

【中立点】

・リフティングの場面はサッカー大国のブラジルらしい雰囲気で、カシア、エマソンや他の機関車達との掛け合いも良いが、鉄道らしさの欠片も無い。

 

【低評価点】

無し

 

 

 

【このエピソードについて】

f:id:zeluigi_k:20190519084915j:plain

©Mattel

 初登場の『TGR』から3年の時を経てブラジル代表で貨車押し競争に出場したラウルが短編に初登場します。『TGR』では台詞こそ少ないものの、闘争心が強く出しゃばりな性格がすでに表現されていたので、印象に残った人もいるのではないでしょうか。ちなみに私にとって彼はTGR勢で一番の推しでした。…関係ないか。

 このお話は、一言でいえば短編版『TGR』と云いましょうか。冒頭でTGR基い『世界のなかまたち』の回想があるように、物語内のゲームもその競技や、映画を彷彿とさせられる脱線など似た演出が出てきます。今回のエピソードはラウルが主役で、トーマスの成長した心の活用も垣間見ることが出来る為、同じものを見せられているという気分にはならず後日談としても良い話でした。

 最も記憶が新しいであろうS22『いちばんのきかんしゃ』*1と、とても似た展開であることも言及しなければならないと思います。私個人の意見では、『いちばんのきかんしゃ』よりも良かったと感じています。焦点が誰にあるかというのがまず大きなポイントで、その回はホンメイの導入と同時に成長する場面もありましたが主観はトーマスでした。また、その話でトーマスも同様に得た教訓が今回に活かされているという風にも感じることが出来ました。

『いちばんのきかんしゃ』があっての今回とも感じますが、ラウルの個性が活き活きとしていた事と、トーマスが異文化を学びながらも日常的なやり取りの中で起こった失敗がより現実的に見えたので、より楽しめたと実感しています。教訓内容も伝わりやすく描写されていました勝負に勝つのは良い気分になれるけど、勝つ事だけに拘ってズルをしたり、ゲームのルールを変えたりしては、いつか相手の友達は消えてしまいます。友達との競争で勝敗より大事なのは楽しむこと。『きょうそうしようよ』を思い出させてくれますね。

 

f:id:zeluigi_k:20191004231106j:plain

©Mattel

 恥ずかしながら、実は私はこの話を観て初めて知ったのですが、ポルトガル語って「R」をHないしハ行で読むんですね。なので、英語圏だと「Raul」は「ラウール」と発音されますが、母国では「ハウール」と読むようです。動く城ではありません。

初見時、ブラジル勢が「Raul」と発音してる事に全く気付かなくてここなんて言ってるんだろうと疑問に思っていました。英米版の声優が南米生まれ*2のネイティブの方々なので予備知識なしで字幕が無いと判らないところもありましたが、リアルな会話のように聴こえるのでとても好きです。

 さて、今回もブラジルの公用語であるポルトガル語の単語がいくつか使われているのでご紹介します。母国語の後に英語圏の単語を使って意味を示しているので比較的わかりやすいと思います。

・obrigado (オブリガード)→ありがとう

・três (トレイス)→3

・dois (ドイ)→2

・um (ウム)→1

・vai! (ヴォー!)→行け!

・socorro (ソコホ)!→助けて! 

まあ、きっと日本語版では全て日本語に置き換えられるんだろうと思います。

 

f:id:zeluigi_k:20190519084347j:plain

©Mattel

 『走れ! 世界のなかまたち』より登場した垂直ボイラー型の入換え機ラウル。グレート・レイルウェイ・ショーに2回以上出場したうち1回は貨車押し競争で優勝しており、トーマス出場時の際も連続優勝を狙っていたのでしょう。映画では生意気にトーマスやアイヴァンの線路に割り込んでいく勢いで"激しい競争相手"として描かれていました。『世界のなかまたち』の出来事からずっとトーマスを打ち負かす機会を窺っていたのですから、相当に闘争心が強く、勝つことにばかり執着していますこのように長編作品との連続性があるのが素晴らしいです。最終的にライバルより友達で居ることに満足して改心しました。

あと、アシマ然り、ヨンバオ然り、シェイン然り、ジーナ然り、TGRのキャラクターはもれなく各国のナビゲーターになる傾向にあるのですがラウルはそうではありませんでした。この為、より話の面白みキャラの深みを感じることが出来て良かったです。今期、ラウルの出番ってこの一回だけなんですよね。出来ればまた登場してほしい。

声優はお馴染みのロブ・ラックストローから、コロンビア系イタリア人のフレデリコ・トルヒーリョ(Frederico Trujillo)に変更。ネイティブな発音と、高めの声が凄くはまっています。

 

 先ほども申したように私の推しです。ラウルの何が好きって、発展させやすいトーマスやフィリップに近い性格を持っている事です。悪意のある勝ち方をしたとはいえ根っから悪い子ではなく、素晴らしい景色の近道を新しく友達になったトーマスと一緒に走ろうと提案するなど友達の在り方をよくわかっているので、上手く行けばもっと掘り下げられるような気がします。

 ここからは話が長いので読まなくて結構ですが、モデルになった機関車が好きなのも理由の一つです。ラウルの実機はサンパウロで使うためにイギリスのセンチネル社が広軌用に新造した物。センチネルと云えば水管を内蔵した垂直ボイラーと、センチネルならではのシリンダーと、それを車輪に介する歯車とチェーンを備えている、自転車みたいな蒸気機関車という特殊な機構を持つ車両を製造していました。他にもセンチネルの車両をモデルにしたキャラクターはスクラフ、エリザベス、イザベラ、ローガン、デンなどが居ますが、ラウルはその機構を最も忠実に再現したキャラクターなんです。

顔のある部分には歯車式車輪を動かすシリンダーが内蔵されており、煙突は機関室の屋根の上にあります。スクラフとローガンも同じ機構をしている機関車なのですが、工業用と云う事もあってどマイナーな為に誤った解釈で描写されて煙突の位置が異なっているんですよね。それから、ラウルにはチェーンも正しく描写されていて―

―とまあ劇中で絶対に説明しない事なので語りたいのも山々なのですが、詳しい話は別の記事に書こうと思います。特殊な機関車には目が無いのです。お目汚し失礼しました。

 

f:id:zeluigi_k:20190519084723j:plain

©Mattel

 『Batucada』や『The Other Big Engine』にも登場した古いタンク機関車のガブリエラは紹介映像によればブラジルの良さを他国の機関車に共有することが好きみたいです。他、陽気で皆とのゲームも楽しむけど、過ちを指摘する常識的な性格と言ったところでしょうか。個性がちょっと足りないので、ラウルに主役が与えられたように、もし第24シリーズにでも出番があるなら、ガブリエラにもキャラ開発と大きな焦点があてられることを強く望みます

 今期も変わらず「Girls power」をテーマに体制を整えているとのことですが、相変わらず新規の女子キャラクターが目立たず、解説役で終わったり、どういう性格なのかがいまいち判らないのがとても残念です。特に解説役って男女問わずBWBAシリーズではどの国にも必ずいるのですが、シェインやジーナを除くとみんな特徴掴みづらい上に大した出番も無く悲しい。

 ちなみに彼女のモデルになった機関車は「バロネーザⅡ(Baroneza Ⅱ)」という名前の1908年製の支線貨物列車に使われたタンク機関車です。近年、博物館となった旧駅舎での静態保存が行われている機関車ですが、かなりマイナーで素性を見つけ出す事に少し苦労しました。1950年代までリオの織物工場と短い支線で稼働していたようです。

 

 

【チェックポイント】

f:id:zeluigi_k:20190519084243j:plain

©Mattel

 冒頭のリフティングをする場面はこれまで類を見ないほどカートゥーンチックで鉄道らしさの欠片も無いのですが、特に目くじらを立てる必要はないと思いました。とはいえ、車体を人間の様に揺らし緩衝器を足代わりに動く演出を好いたわけではありません。複雑な気持ちが混ざりつつも、グスターボとフェルナンドを除くブラジルの仲間たち勢揃いでの掛け合いや、仲の良さ、それぞれの判断力や性格が分かる重要な場面にも思え、寧ろ「よくやったぜ!」とも感じます。

世界編で現地の機関車がいつものソドー島のように絡み合うのって今の所インドとブラジルだけなんですよね。(オーストラリアですら共演が少ないです)。

ていうかこの子たちリフティング上手すぎませんか。乗り物のくせに…ウググ

 

 まあ、ここで注目すべきことは勝敗や継続に拘ろうとするラウルのゲームに対する価値観です。これは後の場面の布石になります。

 

f:id:zeluigi_k:20191004231211j:plain

©Mattel

 先ほど語ったようにラウルは内部クランクではなく歯車とチェーンで動きます。彼が脱線する場面で、その機構を確認できます。画面の明るさを変えると判りやすいです。 

 ちなみに『世界のなかまたち』の終盤においてラウルが会場の作業員に点検をしてもらおうとする場面で確認することが出来ます。アーク・プロダクションのチームのこだわりの遺産物です。

 

 

全体的な面白さ:☆☆

鉄道らしさ:☆☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆

道徳教育面:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 アクが強いであろうラウルの主役回を求めていた私にとって最高の瞬間でした。他国(ホームグラウンド)を舞台にしてキャラクターが恩恵を受けるお話を得られてとても嬉しいです。再利用された事故描写然り似たような展開然り、長編との連続性を意図したものでなければ点数を落としていたかもしれません。私からは文句なしの満点です。

 

総合評価: 10/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:ムーア執筆回

*2:全員ブラジル人ではありませんが