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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第23シリーズレビュー第11回

この記事には2020年公開予定の映画『チャオ! とんでうたってディスカバリー!!』に関する重大なネタバレが含まれています。閲覧は日本での公開後を強く推奨します。

 

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S23 E21 『Steam Team to the Rescue』

脚本: デヴィー・ムーア

内容: ディーゼル機関車の代わりに蒸気機関車が出動するが、立て続けに事件が発生する。

 

【高評価点】

ディーゼル機関車が敵対していない。

・背景の移り変わり。

 

【中立点】

・物語の内容は非常に薄いがミュージカル仕様で飽きない。

・登場キャラクターそれぞれキャラ活用されているが、スティームチームはその概念に押され気味。

 

【低評価点】

・トップハム・ハット卿は経営者としてあまりに無能に描かれている。

・エンディングは急だった。

 

 

 

【このエピソードについて】

 ご存知の通り、第23シリーズでは11分(本編7分)の短編20話に加えて、その2倍の尺を持つ22分の中編、いわゆるTVスペシャルが3話用意されています。短編と長編のちょうど中間のような物。今回のはそのうちの一つ『Steam Team to the Rescue!』です。

 

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©Mattel

 この話が、ニアとレベッカが加わって以降のスティームチームをより馴染ませるためのコンセプトであることは想像に難くありません。S22の基盤となった長編『地球まるごとアドベンチャー』は ニアがソドー島に来るまでの物語でしたから、今回こそ長編ではありませんが、新しいレギュラーの2台が加わった状態の『CAE』のようなチームとしての結束の物語を比較的長めの尺で用意したかったのだろうと思います。

 中編では前後のストーリーテリングとお浚いのコーナーが設けられていないので、公式に"テーマ"となっている物は判りません。劇中で一貫して感じ取ることが出来るメッセージは、仲間を援ける事です。そして物語内容はまあ…かなり普遍的です。深いテーマも深い教訓もありません。しかし、正直に言って、私はかなりこの物語を愉しみました。ソドー島お馴染みのキャラクターたちの相互作用を観察する22分の娯楽として。

今まで広告などで呼ばれてきた概念のような"スティームチーム"をキャラクターが言及するのは正直嫌いなのですが、キャラクターが集まってあらゆるチームとして働いたり歌ったりすることは観ていて楽しいです。 

ここ3年間の長編作品はどれもソドー島から離れて冒険するストーリーでしたので、ソドー島だけで展開するスペシャはとても久しぶりのように感じ、私に安心感を与えてくれました。(島の外の話も面白いけど!)。それだけでなく、この物語にはエンターテイメント的価値があります。そして、脚本家が特定のキャラクターをよく理解していた事も面白みの一つでした。

 

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©Mattel

 例えば、ゴードンは大型なだけに多忙による疲労で居眠りしやすい事です。私は原作第2巻と第27巻を連想しました。このほかパーシーのそそっかしさ、クランキーの怒りっぽさも活きていました。これらはどれも物語に一切影響を及ぼしませんが、悪い事ではありません。全員が活躍するので今期から観る未就学児(ターゲット層)にどのキャラがどんな性格を持っているかこの中編で一気に把握することができると思うからです。

でも、せっかくの新しいスティームチームが主軸のスペシャなのに、ニアとレベッカの良さが全く描写されなかったのは残念でした。というよりは、全体を通してティームチームというまるでアクションヒーローのような概念に押されているようです。これはエミリーにも同じことが言えます。まあ、この3台は今期の短編で大きく取り上げられているのでそれらを観ようということなのかも。

  また、レスキューチームは台詞こそ少ないものの、個々の役割を適切に担っていたのが良かったです。珍しくロッキーだけ出なかったが。

 

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©Mattel

 "ブレンダム三銃士"に遂に大きなスポットライトが充てられました。今回の準主役のような立場にあります。私はまだ第21シリーズのレビューは投稿していませんが、キャラクターの好き嫌いはさておいて、クランキーのパートナーとしてカーリーを導入し、ビッグ・ミッキーに人格を与えたからには何かしらの出番が欲しいと心から願っていたのでとても嬉しいです。

3機の中で最も倒れやすいであろうカーリーが被害者役だったのも良かったです。ガントリークレーンの欠点は固定されていない為にバランスを崩すとすぐ倒れます。そして、彼女を助けようと機関車たちと共に必死に協力するクランキーもアツい。 

特に今回はクランキーのキャラクター描写が丁寧です。彼の最大の特徴である、仕事が上手く行かないとすぐカリカリする気難しい性格はそのままに、順調に行われるのを願って機関車を応援したり、ソルティーが海に落ちた時に怒るのではなく真剣に捉えてショックを受けるなど、より一層人間味のバランスが取れていて気に入っています。

 

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©Mattel

 ハロルドは第21シリーズでは1回、第22シリーズでは全く登場しなかったので、少し久しぶりに感じます。今回はパトロールで仲間に報告したり、サーチライトで照らすなど多く役割を持っています。冒頭では、パトロールの際の無線報告でナレーションも兼ねるという斬新な描写が印象的でした。この場面では(説明する必要もないと思いますが)普段は混雑なく順調に仕事が行われていることを示しています。

思えば、今回はトーマスのナレーションが一度も入りませんでしたね。もうハロルドがストーリーテラーやってもいいんじゃないかな。 

 

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©Mattel

  この物語の最大の特徴は、長編ではないTVシリーズでは珍しく挿入歌が用意されている事です。励まし合いながら頑張って働く『Don't Stop』という楽曲で、通常版とリプライズ版があります。音楽は非常にキャッチーで、主旋律のトーマスと一緒にスティームチーム全員が歌います。

ここでレベッカの歌声を初めて聴くことが出来ます。レイチェル・ミラー氏の歌声はとても綺麗でした。特にハモリの部分が良い。もちろん他のキャストの歌声も本当に素晴らしいです。ジェームス役のロブ・ラックストローとパーシー役のナイジェル・ピルキントンの高音には特に注視してください! そして女性3台が一緒に歌う事でより一層深みが生まれていると思います。そうそう、ニア役のイヴォンヌ・グランディも初めて歌いますね。

 通常版では、なんとヘンリーの歌唱パートがあります! エドワード*1とトビーも共に合唱しながら登場しますが声は収録されていません*2。今期のヘンリーも非常に出番が少ない中、歌唱に参加した事実は嬉しいです。忘れられていなかった。ゴードンと顔を合わせる場面もあるので安心感がより際立ちます。

 特に私はリプライズ版がお気に入りです。スティームチームの歌に合わせて夜明けまで後片付けをする工程の映像効果は迫力があってとても楽しいです。そしてそれぞれの活躍を繰り広げるレスキューチームと、楽しげなブレンダム三銃士。これらは私を幸せな気持ちにさせてくれました。

 

 ただし、この所為か間延びした展開だったからかはわかりませんが、性急にエンディングが訪れたのは少し残念でした。助けに行く直前の場面でくたくたに疲れていましたので、言葉での称賛より、せめてトップハム・ハット卿が機関庫でぐっすり休む彼らを見守る場面があったらよかったのになぁと思いました。

 

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©Mattel

 ※ティームチームが主軸というコンセプトであることを十分に理解したうえで話します

 本当に残念だったのはトップハム・ハット卿の経営者としての描写です。コメディキャラとしての扱いが多いわけではありませんし、可愛らしいパジャマを着てテディベアを抱えたまま機関庫を訪れる事に関しては結構ですが、中盤を「単に十分な機関車を持っていない」と云う台詞と動機で、たった7台の蒸気機関車を中心に切り盛りさせる事には相当な違和感を覚えました。今年は第1シリーズか何かでしょうか。第19シリーズで「機関車ならもういっぱいいる」といった不快なメタ発言があったばかりなのに。まあ、言ってる事は対極ですが意味合いはほぼ同等です。

登場キャラクターは(チームで区切ると)実際に少ないです。ブレンダム線を時々手伝いに来るドナルドとダグラスは如何でしょう。港で働くハーヴィーやクレイピッツと兼用のビルとベンは何故いないのでしょう。今回姿を現したスタンリーのように未所属の蒸気機関車も多いですし、CGシリーズにすら出ていない物もまだたくさんいます。

蒸気とディーゼル問わず少なくとも50台以上の標準軌の機関車が島に居て、十分に担える機関車は多く残っているはずですので再登場キャラが居なくても構いませんが「機関車が少ない」ではなく、例えば挿入歌の間でも、ただ背景に居るカメオ出演でも、何らかの仕事で忙しくしている描写が欲しかったです。どうか彼らの事と役割を忘れないでください。
 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 上からパーシーを応援するカーリーとクランキーが可愛かったです。

このときカーリーはパーシーに対して「Come on, big guy!」と励ましています。機関車を虫けらと呼んでいたクランキーと異なる、カーリーの良いところです。不注意でヒヤヒヤさせることもありますが誰とでも友達を作れる言葉選びが彼女の魅力の一つです。 

 

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©Mattel

 ソルティーの事故はまさに悲劇でした。オイルで滑ってコミカルにくるくる回転しながら落ちるので現実味とか重量感等を覚えないような軽い描写だったけれど、まあそれについて言いたい事は別の機会に話します。

ソルティーの機関室の扉がモデリング上開閉しないのかはわかりませんが、夜明けまで海の底に沈んでいたにも拘わらず機関士が逃げる様子が無かったので非常に心配です。

 

 ちなみに、ソルティーが救出された際に彼が歌ってた曲はアイルランド民謡の『酔いどれ水夫 (Drunken Sailer)』です。一度は耳にした人も多いかと思います。

Way, hey, and up she rises early in the morning!

 

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©Mattel

  スティームチームがまるでアクションヒーローのように活躍するお話である中、なんか知らんがよく対立するディーゼルチームが悪役ではなくパーシー達と同じく助けを求める被害者役だったのも良かったです。救われなかったけどね。

 

 

全体的な面白さ:☆☆

鉄道らしさ:☆☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:AMAZING

アニメーション:☆☆

道徳教育面:☆☆

 

【最終的な感想】

 長編作品をレビューすることが無い*3私にしてはネタバレ全開で話す事は珍しいかもしれません。でもまああくまで短編の仲間なので書かせていただきました。大したことは書いてないけど。

 『地球まるごとアドベンチャー』を皮切りに長編作品を制作しなくなった事は本当に残念ですが、今では中編も悪くないなと感じています。一時期は破産申請が出たりチームが少し変わったりでバタバタと急ピッチで制作が行われて余裕がなさそうでしたから、一呼吸置いているのかなとも考えられますし。

 長編を置き換えた物と考えると内容は薄いですが未就学児へのメッセージは悪くありません。賑やかで退屈することなく心から楽しみました。そして歌が好きです。DaDのレビューも後で行います。

 

総合評価: 8/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:S23でのエドワード本人の出番はこの回のみ。

*2:口は動いている。

*3:時期が時期なので