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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第23シリーズレビュー第13回

この記事には2020年公開予定の映画『チャオ! とんでうたってディスカバリー!!』に関する重大なネタバレが含まれています。閲覧は日本での公開後を強く推奨します。

 

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S23 E23 『Mines of Mystery』

脚本: ベッキー・オーバートン

内容: 古代遺物の発見をしたジャックを見てトーマスも何かを発見したいと意気込む。

 

【高評価点】

・会話は自然で、重機キャラクターたちが活き活きとしている。

・出番の少ない中、エスター、ロレンツォ、ベッペの魅力的な性格が描かれている。

 

【低評価点】

・トーマスの失敗を長々と弄る場面。

 

 

 

【このエピソードについて】

 カナダのTreehouseでの放送、そして英版DVDでは『All Tracks Leed to Rome』終了後にタイトルカードが出る間もなくこの話が開始するので、少しややこしいかもしれませんが、2つのTVスペシャルを併せて『Digs & Discoveries』です。一本ではありません。今回はその後半、『Mines of Mystery』のレビュー。 

 

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©Mattel

 いよいよ『Digs & Discoveries』の名目の下で本題に入る感じです。もちろん前回の話と繋がっており、冒頭のナレーションで恐らく2~3日後の物語であることが窺えます。物語も佳境、空想を含めてアクションシーンも多くて楽しいです。様々な困難を乗り越えた先の展開は多くの未就学児に勇気と希望を与えることだろうと思います。

 

 このエピソードでは、今期で1,2位意を争うくらいの魅力を1つ持っています。それは、トーマス以外のソドー島の仲間も世界旅行をすることです。必ずしも大きな役割があるわけではありませんが、ホイールローダージャックを始め、『SLOTLT』からCGシリーズでお馴染みとなったアルフィーオリバーマックスモンティ、そして新しい仲間のブレンダも加えてイタリアに渡航します。

トーマスただ一台では世界各地の仲間の魅力を最大限に引きだせないだろうと思っていた私にとっては朗報でした。これを機に今後のシリーズでもトーマスと一緒にソドー島の仲間を1~2台以上派遣させたら面白いだろうなと思います。

 

 さて、私の意見では、物語はまあ…平凡。斬新だと思ったギミックはキャラクターに関することで、シナリオはずいぶん使い古されていて、深みも大して感じませんでした。もしこれを長編作品として取り扱うなら評価はもっと下にあるだろうと思います。

 取り扱っているテーマは何でしょう。「劣等感」とか「諦めない心」とか、そういうのが重点と感じられました。好奇心と信じて疑わない事は時に自分を愚かにさせるが、トーマスが消えた機関車の伝説を初めて聞いた時、可哀想という視点を持っていた事は大きなポイントです。みんなから称賛される目的と、消えた機関車を救う目的、そして後述のロレンツォとベッペの目的との一致が今回の本筋でしょうか。

 

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©Mattel

 ジャックと建設現場の仲間たちは過去のCGシリーズに比べてかなり活き活きと動きます。それは身振りに見立てた"車体揺れ"による作用だけではありません。焦点が充てられたことや、会話が自然だったこともきっと関係があるでしょう。特にステファノで船酔いしたアルフィーは可愛くて面白かったです。ちなみに今期では建設現場の仲間たちがスピンオフ作品並に活躍や学習を繰り広げるなど多く掘り下げられています。

 しかし、序盤でジャックたちも含めてトーマスの失敗を長々と弄る必要があったかどうかは真剣に問います。この場面では誰一人味方が居ません。

通常、傲慢に振る舞って笑い話で留まる失敗を仲間にいじられる場合は痛快な笑いを誘いますが、前回のトーマスの動機が真剣だっただけに、彼への感情移入が働く為に面白さを感じず、純粋に不快でした。ジーナが調子乗り始めたトーマスを懲らしめようとしたのは明らかですが、展開の為にあのジャックまでもが弄るし傍観者のオリバーも面白がってるしで、ここだけは只管に悲しいです。

中盤のマックスとモンティは普段通り良かったですが、特別な動きは誰一人見せませんでした。まあ、無駄に新キャラが出るよりいいです。その後全員掘り下げるのが大変なので。 

 

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©Mattel

 とにかく、上記のようにイジられ良いところを見せようとすれば醜態をさらしてしまい、発掘をしてジーナに褒められている重機達に対してトーマスは劣等感を抱いてしまいます。なんか『TGD』に似てますね。トーマスと消えた機関車との「目的」は勿論のこと、ジーナが自分に対して思っていることを再確認する物語にもなっています

最後のジーナの発言からは彼女が現金な性格のようにも見えるかもしれませんが、冒頭で本人が言うようにジーナは元からトーマスをかなり気に入っている様子なのは明白で、トーマスによる発見で株がより高騰しただけに過ぎません。

 

 野暮なツッコミだけど、この画像の車体の歪み具合が非常に気になって仕方ない。

こいつらこんな体でどうやって蒸気送ってんの。

 

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©Mattel

 博物館建設の為に働く女の子ミニショベルのエスターは、画面内での活躍あまり無いけど、このお話で彼女の性格がどのようなものか描写してくれたのが少し嬉しいです。

他の地元の重機達は別の現場で忙しいのでたった一台で、か細いショベルを延々と動かすことに関しては特に文句も言わず、トーマスがジャックたちを提案するまで黙々と、そして細々と働いていました。気楽と云うか前向きというか。更にエスターの強みはその辛抱強さです。曰く、気長に待っていればそのうち凄い物が出てくるのだとか*1。なんというポジティブ・シンキング! 穏やかさと"忍耐は美徳"の精神を持つ魅力的なキャラクターです。

劇中での出番は非常に少ないけれど彼女の性格は、この物語の布石と捉える事も出来ます。上手く行けば主役回も創れるはず。

 

 モデルになった車両は正確には判りませんがイギリスを本拠に置く重機会社JCB(J.C.バンフォード・エクスカベーターズ Ltd.)の重機と思われます。Wikiaでは8025が挙がっていますが寧ろ8029型か、86C-1型が一番近いんじゃないかなーと。

 英米版の声優はイギリス、ケンブリッジ出身のフラミニア・チンクエ。意図的か否かは定かではありませんが、かすれ声が彼女の陽気な振る舞いにぴったりのように感じました。

 

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©Mattel

 愛すべき馬鹿…いえ、伝説の消えた機関車ロレンツォと、そんな彼を愛してやまない朗らかな客車ベッペ。今期随一の濃いキャラクターです。特にロレンツォの性格はここで語らなくても、前回のエピソードでステファノが語っているので掴みやすいと思います。そしてふたを開けてみれば、迷子になった理由がすぐに納得できます(笑)

 また、彼らは歌を歌う事が好きで、劇中では事あるごとにオペラを披露します。面白いことに、ロレンツォの地声は低く、ベッペは高い声で話しますが、歌声はその真逆なんですよね。それぞれテナーとバスで歌います。しかも、2台とも同じ声優さんなんです。担当声優はイギリス系イタリア人のヴィンセンツォ・ニコリ。

ベッペは彼を無批判に愛する以外、比較的常識人の立場にあり、特にロレンツォからはかなり気楽で陽気な印象を持ちます。悪く言えばマジ鬱陶しい。でも愛せざるを得ない、そんな魅力を持っていると私はエピソードをて思います。そしてベッペと云う相棒が一緒だからこそ尚の事。マジ卍。

彼らの性格については同シリーズの短編で多くの情報を知り得ることが出来ますので、詳しい事はそちらの記事に書くことにします。ロレンツォとベッペが助け出された今、周りにいる常識人から、これからいろんなことを学習したり、誰かに教えを説いたりすることでしょう。今から本当に将来が楽しみなデュオです。

 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 空想シークエンスは『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』と『インディー・ジョンズ』シリーズのパロディです。ここでも機関助士が活躍していますね(笑)

同じくS23の『First Day on Sodor!』も同様に、トーマスで大衆文化を扱うのはとても奇妙に見えます。まさかこの作品で「ブービートラップ」なんて言葉を聞くとは思わなかった。

 

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©Mattel

 あっと驚かせる役割のステファノのびっくり三段構えが面白かったです。消えた客車が出てきたと思ったらその後ろに消えた機関車が居て更に知り合いのタンク機関車トーマスくんが居るのだから、相当びっくりしたことでしょう。

これでステファノの物語のレパートリーが増えますね(笑) こうして新たに歴史的瞬間が訪れたのであった。

 

 

全体的な面白さ:☆☆

鉄道らしさ:☆☆☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆

道徳教育面:☆☆

 

【最終的な感想】(※注意: 強い言葉が含まれます※)

 前半よりもアクションが多く色んなキャラクターが出たのでより楽しめましたが道徳観は前半のエピソードの方が強かったなぁと感じます。ロレンツォとベッペの存在はとても大きいです。彼らは今後の将来の為にあり、これからの成長が楽しみです。

また、ジャックたちがイタリアに渡航したように、今後のシリーズで他の仲間もトーマスと同行するようになったら嬉しいです。もちろん役割を持って。

 

 英国では『SLOTLT』から『BWBA』までの長編作品が過去に全土の映画館で上映された事があります。この『Digs & Discoveries』はと云うと、映画向けではないからか、ドレイトン・マナー*2の特設会場でのみ、7月7日から1週間限定で上映が行われました。この時は中編2話がくっついて上映されたとのこと。また、詳細は不明ですがオランダとカナダでも映画館で上映されており、この2話の他に『Lorenzo's Solo』と『Too Loud, Thomas!』も一緒に流れたようです。

全体を通して観た感想としては、長編作品と並べたり映画館で上映するには見劣ると感じました第22シリーズの世界編とほとんど変わらない展開から私が作品から特別感を見いだせなかった事と前半が退屈な事が大きいかもしれません次の中編では歯ごたえのある内容だったらいいなぁ

 

総合評価: 6/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:エスター紹介映像より意訳しました。

*2:トーマスランドUKがあるテーマパーク