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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第23シリーズレビュー第20回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S23 E18 『Too Loud, Thomas!』『オペラってむずかしい』

脚本: ベッキー・オーバートン

内容: トーマスはオペラの真似をして声が出せなくなる。

テーマ: 不得意があっても問題ない

 

【高評価点】

・ロレンツォとベッペの新しい側面。

・物語のペーシング。

 

【中立点】

カートゥーン的な視覚表現とはいえ、機関車は本来身振りをするものではないが、身振りが物語で初めて活きた。

 

【低評価点】

・汽笛を除けば特に鉄道は関係ない。

 

 

 

【このエピソードについて】

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©Mattel

 『Lorenzo's Solo』と並んで私が非常に楽しんだオーバートン脚本の世界編です。でも、たぶん人によって評価が大きく変わるエピソードだろうなと思います。その理由は後で説明します。

今回ではイタリア発祥の文化の一つであるオペラ(歌劇)を取り扱っており、オペラ歌唱をよく知らず、ロレンツォとベッペの豪快かつ華麗な歌声をトーマスが見よう見まねで挑戦し、無理に大声を出した結果、喉を痛めて声が出せなくなってしまいます。キャラクターと現実ではあり得ないコメディを重視しており、その解決方法も含めて鉄道に一切関係ないシナリオ構成となっていますが、非常に愉快な物語で思う存分笑いました。

ジーナやロレンツォとベッペは勿論の事、ベッラ夫人を除くイタリア勢が全員登場し、ステファノ、エスター、ミアも僅かに出番があり賑やかだったのも楽しめた理由の一つです。このキャストの数は短編だと収まりいいよね。

収まりがいいと言えば、ペース配分もかなり良かったです。オーバートンが脚本のインド回(『トラでトラブル』を除く)は良くなかったが、今回は7分の短い時間枠で纏まりよく描かれていて改善が施されたように感じます。

 

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©Mattel

 前半ではロレンツォとベッペがトーマスに歌劇に必要な発声法をレクチャーしてくれます。ウォーミングアップに音階を徐々に上げていく練習、聴衆が幸せや悲しみなどの感情を揺さぶられるような豊かな表現、歌声には大きく分けて高音と低音がある事。まあこれはオペラのみならず歌声の基礎になります。

この基礎がしっかりできた上でオペラを挑戦するものだという事になりますが、トーマスには理解できず(理解しようとせず?)間違った発声法で周囲をひどく驚かせながら、喉を傷めてしまいました。

普段映画じゃ歌上手いくせにと思わないでもないけど…w 

 

ちなみに練習途中で空想したピエロ姿のトーマスは、1892年5月21日に初演されたオペラ『道化師』(原題: I Pagliacci)のパロディと思われます。

 

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©Mattel

 声が出せなくなった後、彼はステファノに伝言を残さなくてはいけない使命を任されます。その解決方法が、汽笛と、アイコンタクトと、身振りの3つを使った物でした。

 

 ご存じの通り、原作絵本及び模型S5前半部まで*1は現実に起こった事件や解決を取り扱ったリアル志向の強い構成でした。そして、現実的か否かに拘わらず、機関車が停車状態で自ら身振り(車体揺らし)をするという演出は、クレーン車のケビンを除いて、第21シリーズの前半及び『TGR』まで無かったので、抵抗がある人は少なくない事でしょう。(私の周りでは特に…)。

 私もその一人なのですが、静止しているよりは、喋るときに動きがある方が視覚的にも彼らが何を感じているか、目の動きと同じく表現として伝わりやすいので、最近ではカートゥーンとしても必要なのかなと思い始めています。

そして今回では機関車特有の動作でないにしても、初めて機関車の身振りに役割を担った回でもあります。普段動いてる分自然ですが、無駄に動くより意味があったのは良くも悪くも大きなことだと思います。

 

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©Mattel

 最終的にトーマスが学んだことは、シャウトすると喉がやられる…ではなく、オペラは単に大声を出せばいいわけではない…だけでもなく、「誰でも不得意はあるもの。だから得意を活かそう」と云う事。これはS20『ヒューゴとひこうせん』(強みを活かす事に集中する)と同じ教訓です。

未就学児向け番組では努力で解決する話が多いけども、たまにはこういうのがあっても大丈夫だと思います。特にオペラは声優やお笑いなどある種の趣味嗜好に近い職ですので、出来る人に任せればいいし、感情の有無にかかわらず大声を出すだけだと勘違いしてるトーマスみたいに、ただやってみたいだけとか、ロレンツォのような愛と極める気力が無い限り上達は望めないでしょう。

 

 この時に喉を枯らした状態のトーマスの声が面白かったです。

 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 今回でもロレンツォとベッペの側面の一部が明らかになりました。

自分が間違っているか疑問を呈するトーマスに対して、ベッペは相手が機嫌を損ねないよう気を遣って言葉選びをしましたが、ロレンツォは一切包まず正直に答えます。でも、オペラに興味を魅かれたトーマスのために最善を尽くすなど、 放っておかない優しさが彼らにはありました。恩と同時に汚された煩わしさもあるんだろうけど。

些細なことかもしれませんが、彼らがどのようなキャラクター個性を持っているか把握しやすいので、こういうのは大事です。

 

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©Mattel

 巨体に対して観察力凄いなーと。よくそこから駅舎の時計見えたなオイ。

 

 

全体的な面白さ:AMAZING

鉄道らしさ:NOTHING

キャラ活用:☆☆

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳教育面:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 ロレンツォとベッペの趣味、基いイタリアの文化を取り扱った面白いエピソードでした。S19『ソドーとうのゆきおとこ』然り、S23『Gordon Gets the Giggles』然り、ベッキー・オーバートンにコメディを書かせたら右に出る者はいないのではと思ってしまうほど面白かったのが正直な意見。ジャム・フィルド・トロントのアニメーションも良い仕事をしました。しかし、鉄道要素が殆ど関係無いに等しい事は少々残念でした。

 

総合評価: 8/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:以降は非現実的な話が殆どで、今に始まった事ではありません。