※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
S23 E13 『Wish You were Here』『パーシーにあいたい』
脚本: カミーユ・ユーキャン & ローズ・ジョンソン
内容: 郵便配達に行くホンメイを見たトーマスは、親友のパーシーが恋しくなる。
テーマ: 友達が恋しくなったら
【高評価点】
・テーマ内容のメッセージ性。
・トーマスが世界へ旅立っている間のソドー島の描写。
・旅立ちで起こりうる日常的な問題に中国の行事も上手く織り込まれている。
【低評価点】
無し
【このエピソードについて】
今期のインド編の片方とオーストラリア編は主にアクの強い現地の機関車キャラクターに焦点が置かれましたが、中国編の主観キャラはトーマスでした。しかし、このエピソードに関しては許すことが出来ます!
ダン・リ氏のインスタグラムで初めてこのサブタイトルが判明した時、私はヨンバオかホンメイがトーマスを恋しくなるのだろうと想像していましたが、その真相はトーマスが中国に行っている間、パーシーが恋しくなるというものだったのです。トーマスはよくソドー島の自慢をしているものですから、親友が恋しくなっている彼を見て安心しました。
空想(夢)は素晴らしいです。中国にやってきたパーシーを中国の仲間に紹介して、自然保護区、OPに出てくる万里の長城、棚田の水車、そして桜並木の線路を2台並んで走るというエモい光景。これが夢として描かれるという事は、実現不可能な事なのかもしれませんが、楽しそうに中国を走る2台が描写されただけでも満足でした。
さて、物語はかなり素敵だったと思います。ヨンバオ、アンアンとインロンそれぞれにも役割が存在する中、今回は、前期で個性が薄く感じられたホンメイが特にフィーチャーされています。小生意気な面は日常の会話で活き活きとしていて、競争に紐づけて親交を深めようとするところも物語に活きています。それから、前期ではヨンバオとホンメイの対話が一度も用意されていなかった為に2台はお互いどう云う認識なのか気になっていたので、会話が見られたのも良かったです。彼女はヨンバオにも生意気です。決して悪さはしませんけどね。どこかの「1」番さんと違って(笑)
どことなく説明臭くなる世界編では珍しく、伝統行事だけに焦点を当てていない事もこの物語の魅力の一つでした。中国特有文化の一つとして、この回では船首に龍の顔が付いたドラゴンボートの伝統的な競漕行事が出てきます。旅で起こりうるであろう、友達が恋しくなるという物語に、壁を乗り越えるための目的としてドラゴンボートの行事が上手く織り交ぜられていました。また、トーマスが『TOTB』のパーシーから学んでいるところも興味深いです。中盤は偶然の産物ではありますが面白かったです。
友達が恋しくなるというのは、人々が遠くの場所へ滞在したり、他の国に移住する時に関係があるものです。友達や家族などが恋しくなったときどうするか、その一つの解決方法がパーシーとホンメイがいつも配達している絵ハガキ(ポストカード)ということでした*1。昨今では携帯電話で簡単に済んでしまいますが、だからこそ写真付きのお手紙って貰うと嬉しいんですよね。
世界編のお話で、同じ時系でトーマスが居ない間のソドー島の様子を見せたこともかなり良かったです。今までは空想や回想だけでしたからね。作業員が絵ハガキを受け取り、読み聞かせてパーシーが喜ぶ反応まで描かれています。心温まる最高の瞬間です。
機関車じゃお手紙を書くことが出来ないですって? そのための機関士と助士ですよ(笑)
【チェックポイント】
このエピソードではいくつか過去作の出来事の参照がトーマスの口から示唆されています。まず、冒頭で、パーシーの郵便配達が「Pride of the line(路線の誇り)」と、人々から呼ばれていると説明します。これは第3シリーズ『おくれたゆうびんしゃ』のトップハム・ハット卿の台詞で、彼が読んだ手紙に書かれていた内容です。
続いてホンメイが運んできたドラゴンボートを見て、パーシーのとある出来事を思い出します。みなさんご存知、S3『トーマスとパーシーとりゅう』の事ですね。覚えてたんかい。S22『トーマスとドラゴン』では一切触れられなかったので流石に制作陣もブレナーじゃなきゃ知らないかと思っていたらどうやら意図的だったようです。
そしてトンネルの暗闇から飛び出したドラゴンの頭を見て勇気を振り絞る場面では長編『勇者とソドー島の怪物/TOTB』でパーシーがゲイターから教わった「恐いと思っても、やり遂げるのが、本当に勇気があるという事」という台詞を言いました。トーマスも本当はかなり怖がりです。あの時はパーシーにアドバイスを与える側でしたが、いざ直面するとやっぱり怖くなってしまうのでしょうね。
全てトーマスとパーシーが主人公で、コンビで取り組んだエピソードです。これらのように、パーシーが学んだことをトーマスの世界旅行にも多からず影響を与えていたというのは面白いですね。
アンアンとインロンの顔面のサイズが小さくなりました。私が彼らに抱えていた不気味さが、これによって少し抑えられたので、この回だけの変更ではない事を願います。
全体的な面白さ:☆☆☆
鉄道らしさ:☆☆
キャラ活用:☆☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆
道徳教育面:☆☆☆
【最終的な感想】
中国のエピソードではホンメイかヨンバオの主役回を観たいとずっと思っていたのですが、とても理に適っていて、ホンメイも良い友達として、そして日常的に描かれていたので、これはこれで私にとって最高のエピソードでした。
夢の中だけじゃなくて実際にソドー島の機関車達も世界へ飛び出したらいいなと現在も思っていますが、パーシーは島にいる方がきっといいでしょうね。
総合評価: 10/10
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【シリーズ全体のちょっとした感想】
さて、ようやく私の第23シリーズレビューが完結しました。今期以降は長編の代わりに中編が用意されているので全23話といつもより少ないけれど、やはり書きたい事は山ほどあって時間がかかりました。(特に他の事も並行してやっているので)。
前期の総合評価と比べると、9~10点の割合が少ないですが、実際にはS22よりもずっと楽しみました。マイナス点が無いのが何よりの証拠です。S22では押しつけがましかった部分が強調されていたり、世界編が説明っぽい上に退屈で主観は全てトーマスにありましたが、S23ではそれがほぼ改善されていて、より面白い物語になっていました。特に現地の機関車が主役となったのは嬉しかったです。
ソドー編も全てが面白かったです。ただ少しシンプルでした。まさにスピンオフ作品の延長戦のような、ソドー建設会社の仲間たちが主役のエピソードが3つに加えて中編にてトーマスの世界旅行に同行するといった変化球があってより斬新に感じました。なんだかんだで後半になるにつれ「Girl's Power」のテーマも活きていました。
一方でレギュラーから外れたエドワードはこれまでのシリーズで一度も喋らないという初めての記録を出してしまいましたね*2。ヘンリーの露出度は前期よりあったような気はしますが依然としてメインの役割は与えられないまま。彼らを頻繁に利用しない理由は理解しているつもりですし、悪い事ではありませんが、まあいつかヘンリーに適当な出番が与えられたらいいなと思います。トビーの主役回はお見事でしたね。
次回の第24シリーズで望むことはそれくらいでしょうかね。あとは、斬新で面白い内容があれば今のところはいいです。デビッド・ストーテン率いる脚本チームがどのように展開するか楽しみです。
第23シリーズ総合評価リスト ※リンク先ネタバレ注意※
1. バルジーだいさくせん! 10/10
2. ラジブのだいじなおうかん 10/10
3. レベッカといたずらかしゃ 10/10
4. えらそうなグスタボ 9/10
5. トビーのなかみはゆうかん 10/10
6. トーマスとカーニバル 8/10
7. わらうゴードン 2/10
8. トーマス、なんどもまちがえる 5/10
9. まじめなディーゼル 7/10
10. まけずぎらいのラウル 10/10
11. シェインはよゆう 8/10
12. エミリーのだいぼうけん 7/10
13. パーシーにあいたい 10/10
14. キレイにしたいブレンダ 8/10
15. はじめましてダーシー 6/10
16. ロレンツォとオペラかしゅ 9/10
17. モンティのふか〜いもんだい 9/10
18. オペラってむずかしい 8/10
19. あやしくひかるディーゼル 4/10
20. しんぱいしすぎのパーシー 6/10
21. Steam Team to the Rescue*3 7/10
22. All Tracks Lead to Rome*4 8/10
23. Mines of Mystery*5 6/10
合計点: 178/230