Z-KEN's Waste Dump

喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第22シリーズレビュー第12回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

 

f:id:zeluigi_k:20180918150148j:plain

S22 E12 『Tiger Trouble』『トラでトラブル』

脚本: ベッキー・オーバートン

内容: トーマスはシャンカールの助けを借りて密猟者からトラを守ろうとする。

テーマ: 野生生物の保護

 

【高評価点】

・動物保護の道徳。

・トーマスが主役と固定されている世界編にトーマス以外の機関車が活躍した事。

・シャンカールの掘り下げ。

・ヌール・ジャハーンの仕事内容は実際の事業に基づいている。

 

【低評価点】

・寄り道。

・何処からともなく現れる毛布的な何か。

・網だけ持って突撃する密猟者。

 

 

 

【このエピソードについて】

 私は昨年10月16日の初報で”インドでトラを狩人から守るエピソード”の存在を知って以来すごく楽しみにしていました。機関車が動物を守るなんてかっこいいじゃないですか。然しS22の放送が始まってからのインド回はどれもひどく退屈な物ばかりで失望した為、最終的に全く期待せずにこの回を視聴しました。果たして、その結果は…?

 

f:id:zeluigi_k:20180919001440j:plain

©Mattel

 間違いなく現時点での世界編の中プラス、オーバートン脚本で最も優れたエピソードと私は確信しています。結果的に目標が出来たものの仕事ほったらかしで寄り道したり、任意でサークルを描くように走るなど鉄道らしさはほぼ無いに等しいですが、今までにない独創的なシナリオかつ道徳的で楽しい作品でした。何よりキャラクター性と展開が面白く、体感10分くらいの濃い内容のおかげで上記の批判点も個人的にあまり気になりません。

 『Thomas in the Wild』『Thomas and the Monkey Palace』同様、国連のSDGs第15目標「陸の豊かさも守ろう」に基づいており、動物保護の内容ですが前の2作とは比べ物にならないほどしっかりテーマに沿ったブレない脚本で、とくに前者のような押しつけがましさも一切感じられませんでした。

トラといえばインド、ではありませんが、トラは現在絶滅危惧種に指定されており、インドでも昔の伝統の影響なのか度々トラの密猟で問題が発生することがあるようです。それについての説明がシャンカールの口から言及されてたのも良かったです。

舞台のジャングルに鉄道で野生動物を見学するツアーが開かれている事から恐らく同国のスンダーバンズのように国立公園(保護区)として指定されているのでしょうし、人里に下りてきたわけではないので当然狩っていい理由にはなりませんよね。

 

f:id:zeluigi_k:20180918203955j:plain

©Mattel

  今回の見所はトーマス以外の、現地の機関車も焦点に充てられ活躍している事だと思います。私は世界編において当たり障りのない人格にしてまでトーマスを半ば強制的に主役にするコンセプトと脚本が嫌いなので、こういった変化球は非常に嬉しいです。

 寧ろシャンカールが主人公と云っても過言ではないでしょう。S22レビュー第4回で私が注目した通り、シャンカールは面白いキャラクターでした。彼は生真面目に加えて態度は冷静沈着で暗い印象があり、ボディも地味で目立たないのですが、彼は物静かに誰よりも動物を愛する、親切で良い奴です。環境に適した入換用ディーゼル機関車ですから理に適った擬人化だと思います。

そして、そんな地味で目立たない彼が、その見た目を活かして活躍しているんです。密猟者視点から茂みに隠れている為、何処からともなく現れたオレンジ色の毛布的な物(※プロットの前半部に存在しないもの)は正直いらない気もしますが。

 

 私にとってシャンカールはレベッカやラジブ、シェインらと並ぶ素晴らしい新キャラクターだと思うのですが、アイヴァン(ロシア製TGM23)のCGモデルの流用なのが少し残念です。TGM23は旧ソ連の東欧諸国等に輸出されているためあり得なくないのですが、車軸配置が全く同じなWDS-4(インド製ディーゼルシャンター)をモデルにしたかったのではないかと私は睨んでいます。

 

f:id:zeluigi_k:20180918150522j:plain

©Mattel

  そしてシャンカールとラジブの掛け合いもやっぱり面白いです。シャンカールは『Trusty Trunky』のようにラジブが調子に乗っているとき的を得た発言で黙らせる一方で、ラジブは地味なシャンカールを日陰者のように扱います。これはジェームスとトビーの関係にも似ていますね。なんとなく親しみやすいのはその印象でしょうか。

 また、インドの環境に慣れたからか、トーマスによるラジブの価値観もだいぶ変わってきましたね。今ではヌール・ジャハーンと同じように、国宝のラジブを高貴な機関車として見ていませんし、彼が自惚れるとジト目で睨むようになりました。だけども説得の際は友達同士の掛け合いを感じられるのがやっぱりトーマスらしいなと(?)

 ラジブもなんだかんだでいい子なんですよね。ただ純粋なんです。自惚れているときはシャンカールをはじめとする仲間から相手にされてないのが面白くて好きです。

 

f:id:zeluigi_k:20180918150536j:plain

©Mattel

 密猟者たちはかなりコメディックに動きます。それは決して悪い事ではありませんが、麻酔銃も持たずに二人で網を抱えて飛び出す無謀さはあまりリアリズムを感じさせません。それはカートゥーンの中だけに存在する、ただの馬鹿です

最終的に男女の警察に逮捕される場面はそれらの物語の欠落部を補い、より教育的に見せる良い方法だったと私は感じます。 

 彼らの声を担当したのは太い方がロブ・ラックストローで、細い方が現シニアプロデューサーのイアン・マキューです。マキューの演技力も見事なもので、素敵でした。

 

 

【チェックポイント】

f:id:zeluigi_k:20180918150226j:plain

©Mattel

 豪華急行旅客列車を牽引する設定のヌール・ジャハーンはジャングルの奥地で野生のトラを観察する為の豪華観光列車も牽引していることが明らかになりました。これはなんと実在する事業なんです。

前にも言ったようにヌール・ジャハーンはパレス・オン・ホイールズの牽引機のデザインに基づいています。パレス・オン・ホイールズは1982年にインドで初めて登場した豪華観光列車で、個室ツインベッドや冷房完備された客室で、ニューデリー駅を始発に様々な観光地を巡る6泊7日の旅を楽しむことが出来、旅の3日目には野生のトラがいるランタンボール国立公園を観光するスケジュールが組み込まれています

他にも2016年にはタイガー・エクスプレス・トレインという半豪華列車が導入し、トラの居るランタンボールの他、ウダイプルとチトールガールを訪問するツアーもあるようです。

 

f:id:zeluigi_k:20180919001605j:plain

©Mattel

 インド鉄道の局長チャルバラは結局のところヌール・ジャハーンやアシマと共に少量の出番しか与えられませんでしたので性格はよくわからないままですが、正統派の女性版ハット卿みたいな印象を受けました。コミカルな部分はありません。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳教育面:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 最後の最後にインド勢が勢揃いして豪華なうえ、とても面白かったです。最後に活躍を見せたシャンカールは非常に魅力的なキャラクターの一つで、私は彼の事がラジブ共々大好きです。

 

総合評価: 8/10

 

 

 さて、これはインド回全体の感想になりますが、個性的な新キャラクター揃いにも拘らず、活躍を果たしたのはシャンカールだけで、出番は殆どラジブが主流でした。

アシマは冒頭でのみ文化を教えるだけ、ヌール・ジャハーンはご当地機関車としての日常を触れられただけで、均等に出番が与えられた中国に比べて男性側に偏りがあります。アシマは『TGR』で大きな役割があった為主役級に回れないことは覚悟していましたが、性格が活かされないどころか設定上のニルギリ山岳鉄道で働く日常的な姿が見れなかった事が残念。

それだけでなく、一人の脚本家に絞った事で脚本の質及びインド要素とトーマスの人格にも偏りが生じているように見えました。4話だけじゃ圧倒的に足りないです。来期はきっと別の国々へ冒険に出発する事でしょうけれど、私はトーマスを脇役に置きつつ一緒に学ぶ、インドのキャラクターたちで展開する日常的なお話が今すぐ観たいです…

 

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。