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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第22シリーズレビュー第17回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S22 E20 『Thomas and the Dragon』『トーマスとドラゴン』

脚本: デヴィー・ムーア

内容: 中国の正月にドラゴンを運ぶことになったトーマスは怖気づいてしまう。

テーマ: 恐怖

 

【高評価点】

・中国の旧正月(春節)フェスティバルを重点に置いた物語で、習慣や言語も全て物語に組み込まれている。

・ヨンバオのキャラ掘り下げ。

・トーマスの心情を表す恐怖演出。

 

【低評価点】

・トーマスの純粋すぎる性格。

 

 

 

【このエピソードについて】

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©Mattel

 世界編で最も良いと云えるエピソードの一つと確信しています。少なくとも中国回では一番でしょう。テーマは「恐怖」、詳細には「恐がる必要が無い時もあるので、周囲の人に確認してみよう」というものでした。なので物語はトーマスのドラゴンとライオンへの恐怖心に焦点を当てているため内容はやっぱり薄いのですが、進行は自然で、なにより出てくる文化が物語に全て組み込まれている事が素晴らしいと思いました。ナレーションも実際にトーマスが直接経験談を語っているようにも感じられて良かった。

季節を表す冒頭の桜並木民間人が運ぶランタンお祭りで必要なニワトリ*1、全て旧正月を示す演出で、無駄がありません。最後には「シン ニェン クァイ ラ」という言語*2をその意味と一緒に話し、幕を閉じる構成も好きです。

 

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©Mattel

 私はトーマスが各国を訪れて文化を知る世界編の企画が好きです。これによって若い視聴者だけでなく私も知らない事を好きな作品で学べるからです。

昔どこかで春節フェスティバルの様子を覗いたことがあります。その時に見たこれ(上画像)が何なのかわからず子供の頃怖がっていました。ライオン(獅子)を模した物だったんですね。謎が解けてスッキリしました(笑)

 

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©Mattel

 唯一の不満は内容の薄さではなくトーマスの人格です。共感性を与えるためわざと子供の様に描かれているのは重々理解していますがあまりにも純粋で違和感でした。恐がりと云えば皆さんはパーシーやヘンリーを思い浮かべるかもしれませんが、この物語のようにトーマスも実はかなり臆病です。しかし彼は最初に疑いを持って強がるんですよね*3。この件に関してはシナリオの進行は自然でも、やや単調だったように感じます。

また、序盤の「The dragon!」ラッシュは少し諄いです。

 

 ファンタジー・シークエンスは自然でしたし、良く描かれていたと思います。空想内に出てくる西洋風のドラゴンがいかにもヨーロッパからの来訪者らしいなと。

まあ彼は過去に3回も中華風ドラゴンを目の当たりにしているので、特に彼に恐怖を与えたS3『トーマスとパーシーとりゅう』*4のリファレンスが無かったことは個人的に残念でしたが、S1リファレンスのあったジェームス回同様そんな古い設定を若い視聴者が知る由も無いですし、英国(ソドー島)とは異なる大陸なので自分の知らないふしぎがあると思い込んだのだろうと解釈しています。 

 

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©Mattel

 トーマス以外の中国勢の扱い方は全員バランス良くて良かったです。アンアンとインロンの生意気さは相変わらずで、ホンメイも中盤で明らかに悪意のある言い方をしており、中国勢のキャラ使いは完璧です。

ヨンバオの掘り下げも良い点の一つです。親切な性格はそのままに、ビビってるトーマスを「Boo!」と脅かす平和的なからかい方は歳の離れた良いお兄さんみたいで、新しくできた友達を精いっぱい御持て成ししようとする姿勢も含めて、シェインとはまた違ったアプローチのずっと一緒に友達で居たくなる安心できる存在のヨンバオが好きです。

 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 モブ人間キャラクターを少しいじったといえども、東アジア人風の顔の再現度高くて素晴らしいですね。真ん中のお父さんやお爺さんなんて近所に居そうなくらいしっかり特徴を捉えられています。 

中華風のBGMにも注目です。

 

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©Mattel

  かわいい。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆☆

キャラ活用:☆☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳教育面:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 実は中国回の第2回目に持ち込まれる作品のようですが、まるで最終回のようにキャラも物語もグローバル実験も上手く纏まっていて素晴らしかったです。

 

総合評価: 9/10

 

 

 ここからは中国回のまとめ感想です。物語に纏わる文化はインドに比べてふんだんに活用されており、全体的にメインとなるキャラクターはバランスよく活用されていましたが、極めて全体が最高だったとは思いません。コンセプトの所為か焦点に充てられたのはほぼ全てトーマスのみで、中国勢の設定の良さを十分に引き立てられなかった事が残念です。世界編はトーマス以外の現地キャラクターを主役にして間接的にトーマスも教訓を学ばせる展開は創ってはいけないのでしょうか? それとも後で現地機関車オンリーのスピンオフ作品を用意しているのでしょうか?  各国共に用意しているのであれば私はそれを是が非でも観たいです。特にヨンバオの普段の仕事の様子に注目したエピソードを見たかった。

全体を通して振り返ると、イベント事ではない日常的なお話である『Number One Engine』は決して悪くありませんでしたし、一番冒険的だったように感じます。しかし、SDGsを上手く組み込められていない上プロットが丸裸の『Thomas in the Wild』と『The Water Wheel』は只管に残念です。その残念な2作品の特徴を見るに、恐らくムーアにとって急ピッチでの制作が厳しかったのだろうと思います。

 また、オーストラリア出身のティム・ベインが母国のエピソードを執筆したように、中国人の脚本家との共同作業で行えばもっと上手く動作したのではないかと思います。インドも同様に。

 

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:流石にその用途は描写および示唆されていません(笑)

*2:中国語で「Happy New Year」

*3:ここがトーマスの面白いところなのに、近年活用されなくて寂しいです。

*4:私の大好きなエピソードです。