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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第22シリーズレビュー第20回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S22 E25 『Cyclone Thomas』『サイクロン・トーマス』

脚本: ティム・ベイン

内容: トーマスはアイラのように患者を病院に届ける英雄になろうとする。

テーマ: 嫉妬、自身の強みを活かす

 

【高評価点】

・実在のサービス、実在の地名に基づいたリアリティのある世界。

・”熱帯低気圧の目”の背景描写と解説。

 

【低評価点】

・サイクロン関連を除くすべての事柄はソドー島でも行われた。

・サイクロンの描写は投げやりに感じる。

 

 

 

【このエピソードについて】

 今期のインド回と中国回が一通り終わった今、残すところあと3話の世界編はオーストラリア回となりました。同ベイン執筆回の『Outback Thomas』のシナリオが良く、フライング・ドクターのアイラをフォーカスした作品と聞いた時は楽しみだなぁと思っていたのですが、古くから作品を愉しむ私にはちょっと期待はずれな感じでした。

もっとも、今期のターゲット層の方々には新鮮な体験かもしれません。 

 

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©Mattel

 アイラやクレア医などのキャラクターを通して行われるフライング・ドクターという事業の説明やサイクロンなどオーストラリア内陸部ならではの要素が物語に組み込まれているのですが、短い尺の中にその二つの大きな要素を無理に取り込んでいるように感じ、終盤は駆け足気味で少し混乱しました。

彼女を心から尊敬するオーブリーとエイデンらの言動を動機に、トーマスも患者を運ぶヒーローになろうという想いを胸に身勝手に行動するという物語なのですが、後半は自然現象によって、S10『トーマスとジェットき』*1とよく似た内容になっていきます。

まず前半でトーマスは憧れを抱くまま患者搬送車のふりをする無責任な行動を起こします。これについてアイラから専門家に任せるよう言ってくれたところまでは良いのだけど、トーマスはむくれて仕事の邪魔になっていた事を理解したかどうかも怪しいし、私は最後に搬送車になりすます事がどれほど危険かを考えるだろうと予測しました。ところが結果的にS10『トーマスとジェットき』と全く同じことを学びます。何が問題かというと、同じキャラクターが同じ教訓を学ぶより、昔学んだ経験を新しい話に活かしてほしいのです。最も、ティム・ベインは今期から参加したばかりですので、S10の話を知らなくても致し方ないでしょうね。

それから、アイラの仕事の重要性もはっきり描写しないままでしたので、個人的には今回のエピソードのアイデアを一緒にせず、搬送は搬送で、サイクロンはサイクロンで1つずつの物語に分ければ上手く動作したのではないかと思います。

 

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©Mattel

 『トーマスとジェットき』と大きく異なるのは、トーマスが一方的に嫉妬する事と、中断となったアイラの仕事を引き受け、ダーウィン病院までのサイクロンで荒れる大地を勇猛果敢に走り抜ける事です。

 暴風雨の影響なく突っ走れる事が列車の強み。いいえ、残念ながらそれは不正解です。特にトーマス、オーブリー、エイデンのような縦長で比較的軽めの車両は横から来る強風で転倒しやすい事でしょう*2。鉄道で云えば過去には突風で列車が転覆したり、線路がゆがんだり、高架橋が破壊されるなんていう例もあります。

 怪我人の為に全力を尽くす精神力を育むための物語であることは賞賛に値すると思います。が、怪我人を乗せる際、暴風雨の時は如何なる車両でも外に出ないことがベストです。リスクが高すぎます。

 

また、この場面でオーブリーとエイデンそれぞれに考え方がはっきり違う事がわかりましたね。オーブリーは堅実で現実的エイデンは強い信念を持つ理想家で責任感があるように見受けられます。

頭の固い私はオーブリータイプかもしれませんね。

 

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©Mattel

 サイクロンの場面における緊迫感が好きです。加えて、ただ暴風雨として終わらず、熱帯低気圧の目”も物語上で扱われた上、教育的な説明付きで面白かった。遠景に輝く”目”は美しく描写されていて素敵です。

 しかし、先ほども言及したように詰め込みすぎて終盤が駆け足気味なので、倒木のくだりは若干投げやりっぽく感じました。

 

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©Mattel

 『Outback Thomas』にもちょこっと登場した、二重反転プロペラが特徴の小型飛行機アイラ。「ロイヤル・フライング・ドクター・サービス(RFDS)」の一員で離れた場所にいる患者を、女医のクレアさんと共にノーザンテリトリー州のダーウィン病院まで運ぶ仕事をしています。

RFDSとは1928年からオーストラリアで行われている実在する事業です。アイラのモデルとなった1981年製ビーチクラフト キングエア「モデルB200」シリーズも、VH-MVLという名称で実際にRFDSで使われました。*3 カラーリングも実機っぽくなっているんですよ。

S10に登場し鉄道に対して煽ったジェレミーと違って、親切かつ謙虚で自慢しないタイプですね。無邪気にズカズカ行動するトーマスに対してちょっぴりに申し訳なさそうな振る舞いを見せるなど人の善いお姉さん気質のように見受けられます。(もっとも、中盤のトーマスの身勝手な行動はとても危険なので良い子も悪い子も大人も真似しないでください)。また、非常事態を真剣にとらえているところもRFDSに相応しい人格の持ち主と言えるでしょう。

スタイリッシュでかっこいいなぁ…。私はもっと彼女が活躍する話を観たいです。勿論鉄道関連で。

 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 『ブルーマウンテンの謎』に出てきた蒸気ショベル車をあれから見かけないと思ったらこんなところに!(笑) というのは冗談ですが、このモデルももっと露出すればいいのになと思います。

そのうち、このCGモデルを流用したキャラクターが出てきそう。 

 

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©Mattel

  これまでのところ、オーストラリア回では観光地や村だけでなく実在の都市や地名が随所に言及されるのでより一層身近に感じられますね。例えばこの画像の駅はキャサリン駅(Katherine)といいます。駅舎そのものはソドー島の家屋の流用なのですが、ホームが地上駅となっているのがまさにそれっぽいですね。ちなみに現在では駅として機能していませんが実在する旧駅がモデルになっているようです。ホームの感じはなんとなく病院のあるダーウィン駅にも似ていますね。

他にも、今回のお話ではアデレード・リバー駅や、ダーウィン病院駅、メルヴィル島などの駅や地名が出てきますこれらも全部実在します

ただ唯一、パイン・ツリー駅*4を除いて。

 

 

全体的な面白さ:☆☆

鉄道らしさ:☆

キャラ活用:☆☆

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆

道徳教育面:☆

 

【最終的な感想】

 今回出てきたオーストラリアのキャラクターはみんな魅力的で、二種類のアイデアは道徳的ですが、ペース配分にぎこちなさが目立っていたので、やはり別々の話に分割する必要があるように感じました。『搬送に伴う責任の話』と、『自分の強みを活かすことに重点を置いたサイクロンの話』、各々に分けていればどちらもそれぞれ上手く行ったのではないかと私は思います。

せっかく良い話っぽい感じになりそうなのに諸々フワッとした状態で終わり、違和感が拭いきれません。残念なことにアイラの重要性を示す機会を逃しました。

 

総合評価: 3/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:私の好きな物語の一つです。

*2:トーマスの実機はマッコウクジラのオス1頭ほどの重さがありますが、客車が吹き飛ばされやすいと無意味です

*3:『Go!Go! 地球まるごとアドベンチャー』に出てくるエマソンと同型機です。

*4:架空の地名