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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第22シリーズレビュー第24回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S22 E18 『Banjo and the Bushfire』『やまかじにきをつけろ!』

脚本: ティム・ベイン

内容: 熱帯雨林の仕事に熱心に取り組むトーマスだが逆に迷惑をかけてしまう。

テーマ: 動物の保護と尊重

 

【高評価点】

SDGs第15目標「陸の豊かさも守ろう」に基づいた自然保護に関する道徳。

・キュランダ高原鉄道の美しい背景描写。

 

【賛否両論点】

・ユーモアなのだろうけれど、サブタイトルは場違いに感じる。

 

【低評価点】

・説明も無く発生する火災など、詰め込みすぎなのかペース配分が行き届いていない。

・物語で伝えていることはお節介に見える。

 

 

 

【このエピソードについて】

 これは…もうわかりません。

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©Mattel

 物語は悪くありません。キュランダ熱帯雨林の説明と共に、トーマスが野生動物への態度と接し方について学習することと、動物よりも大きな機関車が彼らの為に役に立てると証明した事を上手く纏めています

 こちらは新登場になりますが『Thomas' Animal Ark』同様、大きな役割を与えられた人間が登場します。森林警備員のジル。彼女の明るく陽気な性格は、自然保護の説明をより楽しくさせてくれます。

 ただ、ジルの活動内容と、後述のタミカの考え方は人類が見習うべきだとしても、機関車の話としては露骨に偽善的で、これを伝えられて心に響くほどの中身が物語にありません。自然の保護に関しては自然災害と環境に適さない動物や、生物が生きるために必要な食に関する捕獲などの目に見えないものではなく、我々が対処できる人間関連の虐待、例えば後半は悪気の無い人間のキャンパーでも居たら少し説得力があったかもしれません*1。事実を伝えるだけでなく、お話にも力を入れてください。

 

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©Mattel

 サブタイトルの元ネタは、リチャード・ガルブレイス著の絵本『Banjo Blue and the Bushfire』であると思われます。これはコアラの消防士バンジョー・ブルーが彼の友達と一緒に山火事に立ち向かう物語の絵本で、今回のエピソードの物語後半のプロットと要点は一致していますね。最も、このバンジョーは山火事から救われる側ですけど。

 以上の事から、ティム・ベインなりのユーモアだと思うのですが、サブタイトルは少し誤解を招くと私は思います。上記のようにバンジョーは楽器でもクマの冒険家でもなく特定のコアラの名前で、その登場時間は非常に短い上、コアラについての説明は殆どありません。

 山火事に関しても、理由も描かれず発生します。現実的に考えれば、油分の多いユーカリの影響でオーストラリアの森林地帯では毎年火災が起きています。今回の話もそうだったのでしょうか。また、今回の物語の場合、例えば『Ranger Thomas』等の方が理に適っているのではないかと思いました。ベインには申し訳ないけど。

 

 

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©Mattel

 今回初登場したタミカは、小さな蒸気機関車と客車が一体化している、要は蒸気駆動の気動車です。デイジー蒸気機関版と云ったら伝わりやすいでしょうかね。

 モデルになった機関車は、南オーストラリア鉄道SMCクラス1号機「コーヒー・ポット」。大変歴史のある車両で、蒸気機関車部分はイギリスのリーズ工場で、客車部分は同じくバーミンガムの工場で各々1905年に組み立てられました。つまり出身は英国なんです。私はこの蒸気動車が『Thomas & Friends』に仲間入りする時をずっと待っていたので、彼女が初めてその姿を現した時は大変興奮しました。

 彼女は熱帯雨林に生息する動物や自然を尊重しています。なので動物に危害を加える物にはきちんと丁寧に教えます。性格についてはそれだけ。他に使われていない設定がある筈と思いきやMeet the Charactersの紹介もただそれだけ。中身に関しては女性版シャンカール…いいえ、それよりももっと面白くありません。

 

 さて、私はいくつかタミカについて少し疑問を抱いています。

何故タミカは標準軌として描写されているのでしょうか。そりゃあシェインやラジブだって本来は広軌だし、アシマなんか本当は狭軌の機関車なので何を今更という感じですが、彼らは『TGR』のイングランドの会場で公平に競う為に出てきたキャラクターですので大目に観ましょう。でも、タミカはS22においてオーストラリア現地の機関車の為の登場ですので、軌間の調整が出来た筈です。敷かれている線路は何のための三線軌条なのでしょうか。オーストラリアの鉄道っぽさを出す為? それとも今後狭軌(ケープゲージ)の機関車が出てくるの?

 

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©Mattel

 もう一つは、肉付けが無いどころかバックグラウンドに埋もれている事です。こんなに特徴的で個性のある見た目にも拘らず、ましてや初登場なのに言動だけで一切の行動を起こしません。それどころか彼女がどんな機関車なのかもよくわからないまま。

 前々から大改革について思っていたのですが、もしやるんだったら、制作側は真剣にジェンダーバランスへの取り組みについて考え直す必要があると思います。

ただ単に女性キャラクターを男性と同じくらい増やせばいいという問題では無いはずです。

私は作品のジェンダー比についての文句を吐くような人々では無いので、彼らが実際に求めている事や心理は知りませんが、もっと多くのヒロイックな行動や活躍を期待しているのではないでしょうか? トーマスばかり脚光を浴びているので、ヌール・ジャハーンと違い、今回はせっかく活躍のチャンスが少しでもあったのに勿体ないです。
 

 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 キュランダ熱帯雨林には、実際に1891年から開業した、ケープゲージ*2高原鉄道が通っています。この場面も実在の路線に基づいていますが、本物はコンクリート状の物ではなく、曲線を描く木製の橋があります。

それにしても実に美しい景色ですね。アウトバックの茶色い大地には少し飽きていたので心が癒されます。 

 

 

全体的な面白さ:☆

鉄道らしさ:☆

キャラ活用:☆

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆

道徳教育面:☆☆

 

【ちょっとした愚痴】

 第22シリーズの最後に観る世界編がコレということを残念に思います。上層部の方々はより多くの動物に縋って『Thomas & Friends』を他の教育番組にもあるような出鱈目で中身の無い自然保護ドキュメンタリーにでもするおつもりですか? 少なくともこの番組が好きな子供たちは機関車達の絡みや中身のある冒険を観に来ていると思います。

 

【最終的な感想】

 さて、今回はどんなものでしたか。仮にリアリズムは奇跡的な物だとして、その代わりに魅力的なキャラクターや、その旅行番組よりも面白味のある冒険感はこれまでよりもありますか。

私には特に今回の話が、他の番組と大差ない、いえ、それ以下のドキュメンタリーに感じました。ただブランドを使っているだけです。この作品にしか出せない特色と物語を楽しいものに仕上げる工夫、それ以前に適切なペース配分が必要でした。

 

総合評価: 3/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

 

 

 さて、これでオーストラリア回が終わりました。事実と物語の紐づけや、案内役で終わらない新キャラクターの登場バランス*3など、今期の世界編の中では確実に良い方でした。でも特別凄かったという意味ではありません。幾つかは番組上初めて見る物でしたが一般的に観るとまだ普遍的です。

シェインが南オーストラリア鉄道所属(と云ってもS22豪州回の舞台は主にノーザンテリトリー州とクイーンズランド州でしたが)ということもあってか、4分の3は茶色い大地が広がるアウトバックばかりで視覚的にもパッとせず退屈なところもありました。

 幸い、新たにイタリア編を取り扱う予定の第23シリーズでも、インド、中国、オーストラリア編は引き続き用意されているようです*4来期以降にはオーストラリアの都市部や、ここまで活躍の無かった各地の女性機関車たちにも大きな役割が与えられることを願っています。それから、鉄道とあまり関係のない形の動物絡みを少し抑えてほしいです。

*1:Tiger Trouble』との被りを避けて考えました。

*2:英国基準のナローゲージよりもちょっと大きめの狭軌

*3:タミカを除く

*4:喜んで良いのかわかりませんが、全て声優のTwitterやインスタグラムで判明した情報です。