※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
S22 E16 『Hunt the Truck』『かしゃをさがせゲーム』
脚本: マイケル・ホワイト
内容: 貨車を隠す遊びを邪魔されたビルとベンはエドワードに仕返しをしようとする。
テーマ: ゲームはみんなで楽しもう
【高評価点】
・ビルとベンや、エドワードの人格をフル活用。
・テーマ内容。
・貨車(他人の荷物)の重要性と後先の事について考えるメッセージ性。
・正しい空想シークエンスの遣い方。
【低評価点】
無し
【このエピソードについて】
久しぶりのビルとベン主観回ということで凄く楽しみにしていました。そしてふたを開けてみればあっと驚き。ぜひともエドワードファンに観て頂きたい作品です!
ビルとベンが主観ですが、実質エドワード回みたいなものです。物凄く久しぶりにエドワードがビルとベンと会話を交わします。彼の支線での出来事なので、これは私がCG期で観たかった物の一つです。これまで原作や初期作品にて双子がエドワードには敵わないという設定の示唆があったけれど、それが何故なのかが、ようやくこの話で解明されたような気がします。
ジェンダー比の調整によって、最重要キャラクターの一台であるエドワードがレギュラーから外れた後も、私は彼の知的で優しい性格から、物語に必要なときに現れては若い機関車にアドバイスを送る役回りになるだろうと信じていました。そして、実際このように度々エピソードに出て脚光を浴び続けているのは嬉しい限りです。温かみのある優しさとビルとベンを大人しく出来る程しっかり者であるのは勿論、原作のような、ちょっぴり生意気でユーモアのある側面もバランス良く出てましたね。
ナップフォード駅で貨車を探す場面はどことなくS2『ふたごのビルとベン』の雰囲気を彷彿とさせられ、双子が貨車を隠す悪戯そのものは、その反転のようにも見えます。ここでボコの再登場を期待された方も多いかと思いますが、私は準主役がボコではなくエドワードで良かったと心から思います。無個性ではないことを証明するには絶好の、この機だからこそ、特に。それに大人しくて父親のような雰囲気を醸し出すボコでは、この味は出せなかったと私は考えます。
悪戯好きのビルとベンは相変わらずながら、彼らが真剣に悪戯を後悔したのは恐らく初めての事です。それもエドワードの問題解決方法が本当に秀逸なのですよね。恐がらせるのではなく、自分の方が一枚うわてという事を見せつけることによって、平和的に降参させるという。実に彼らしいと言えます。加えてクリスマスだからというのもしっくりくるでしょう。良くも悪くも純粋なビルとベンには効果てき面だったようです(笑)
テーマ内容も素晴らしいですね。ゲームや他者を利用した冗談は相手側も理解している必要があり、一人か二人しか参加していないのであればゲームも冗談も楽しくなりません。なので、冒頭のエドワードのような対応に対し「受けてない」と捉えて批判する人は、相手側がうんざりしているか、本質を知っている事に気付いていないだけです。
評価と関係ありませんが、私はラスマス・ハーディカーと、マット・ウィルキンソンによる、ビルとベンの新しい声を大変気に入っています。両者とも高い声の持ち主なので、まるで本当の子供みたいな演技力と、個性の出る演じ分けに惚れ惚れしています。
今回のエピソードでは、貨車を「他人の荷物」等に置き換えることが出来ます。人が持つ荷物がもし別の人にとって重要な物だったら? 荷物を隠すことで、その人(達)にとってどんな二次被害が起こりうるだろうか? こんなふうに「後先を考えてみよう」というメッセージが込められているようにも感じます。もしそうならば、これは大人も学ぶ必要があると私は思います。
空想シークエンスはまた別のやり方で、かつ今期で最も正しい使われ方をしています。演出に正しいも間違いも無いかもしれないけれど、進行を妨げる無意味で一時的なユーモアや脱線の為ではなくシナリオの進行に貢献しており、かなり上手く行きました。
冒頭のエドワードとニアが会話しているところが好きです。彼女はエドワードに助けられただけなのですが、仲良さそうで本当に安心しました。変更があった今期だからこそ、この対話には意味があります。
創るのはそう容易ではありませんが、いつかこの知識人同士が活躍するエピソードが観られたら良いなと思います。
【チェックポイント】
全体を通してエドワードの表情に括目してください! 実はビルとベンが貨車を隠した直後、エドワードはそれを理解しているのか、それともまた悪戯をしに来たと思ったのか、ほんの一瞬ニヤリと笑みを浮かべています。
また、彼が一人でいる時は、ビルとベンの悪戯に対して負の感情を見せず暖かく対応するところも彼らしいと言えましょう。
全体的な面白さ:☆☆☆
鉄道らしさ:☆☆☆
キャラ活用:PERFECT
BGMの良さ:☆☆☆
アニメーション:☆☆☆
道徳教育面:☆☆☆
【最終的な感想】
今期最もお気に入りの話です。あたふたするビルとベンの正直さがめちゃめちゃ可愛いと感じたと同時に、主役として書くことが難しいであろうエドワードと云う存在の価値を見出せた一作品と云っても過言ではないでしょう。彼にこれだけ魅力的なキャラクター性があるという事を、一般の方や公式が忘れなければ一番良いです。新仕様を障害ではなく価値のある資産にする、秀逸な脚本家のマイケル・ホワイトに万歳、そして願いを叶えた事への感謝をば。
きちんとした幼児向け作品の脚本家とはいえ古参ファンが立ち上げることは良いか悪いか、私には判断しかねますが、彼の作風は子供向け作品としても本当に素晴らしいので、ぜひこのチームに居続けて、今後も現代の「子供の為」でありながら作品特有の古典的な魅力も併せ持つ生産を続けてほしいです。
ちなみに、ホワイトのトーマスでの仕事はこの回が初めてだったようです。そしてS21でお蔵入りになったロージー回やヒューゴ回を含む話はこのシリーズには収録していないとのことです。
今期はエドワードの出番にかなり力を入れていたので、来期からはヘンリーの出番にも力を入れてほしいですね。ヴィカーズタウン周り気になるもの。
総合評価: 10/10
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さて、途中で放り投げる私にしては珍しく、一シリーズのレビューが完結しました。世界編のあまりの退屈さに途中で飽きてきたけれど、その後に絶対に凄さを教えなければならないエピソードが増えたから偏見を持ったまま終わらせたくないという意識が強まったからかもしれません。
私なりにS22全体の良し悪しの感想まとめを述べておきたいと思いますが、それは日本語吹替え版の放送が半数以上終わってからにしようかなと思います。放送直前まで引っ張ってしまったのもあるし、負の情報に捉われず観てほしい作品もありますので。でも、その頃には本国でS23の放送が始まってて私のやる気も無くなってそうだけど…。
総合評価リスト ※リンク先ネタバレ注意※
- いちばんのきかんしゃ 7/10
- ずっといつまでも 7/10
- おくれてないけどこんらん 10/10
- トラスティー・トランキー 6/10
- レベッカはとくべつ 9/10
- トーマス、ボリウッドにいく -3/10
- トーマスとパンダ -8/10
- トーマスとサルのきゅうでん 4/10
- カラフルなきかんしゃたち 9/10
- オーストラリアのトーマス 9/10
- ダックのがっこう 8/10
- トラでトラブル 8/10
- みえないきかんしゃマーリン 5/10
- あやまってよジェームス -7/10
- ちゅうごくのすいしゃ 2/10
- かしゃをとめるワザ 8/10
- トーマスとドラゴン 9/10
- サムソンとはなび 10/10
- トーマスとはこぶね 10/10
- サイクロン・トーマス 3/10
- カンガルー・クリスマス 9/10
- ロージーはあかい 10/10
- ぶひんのなぞをさぐれ! 2/10
- やまかじにきをつけろ! 3/10
- ニアとすうじ 8/10
- かしゃをさがせゲーム 10/10
合計点: 166(158)/260