※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
S23 E07 『The Other Big Engine』『えらそうなグスタボ』
脚本: デヴィー・ムーア
内容: ブラジルに行ったトーマスはゴードンのような青くて大きい電気機関車グスターボと出逢う。
テーマ: 第一印象で決め付け
【高評価点】
・ゴードンと似て非なる個性的な見た目と魅力的な性格のグスターボ。
・トーマスのキャラ活用。
・「Oh, a indignidade」や「Oito(八)」など、ところどころに点在するポルトガル語。
・直流式電化路線の特徴の一つが物語で活かされた。
・急行路線の美しい景色。
【低評価点】
・トーマスのゴードンに対する感情や固定観念。
【このエピソードについて】
私がこのお話の粗筋の、"ゴードンを彷彿とさせる大きくて青い機関車"と云った文字列を見た時、トーマスによく似た機関車ホンメイの次はゴードンかと同時に、今更大きくて青い機関車ってなんだよと、思っていました。既にそのような機関車は何台か他のシリーズに出てきているし、同シリーズにはロレンツォの出番も控えていたからです。ですが、そんな疑問は冒頭ですぐに解消されました。大きくて青い機関車のグスターボとは、電気機関車だったからです。やられた! と思いました。(何に?)
今回の教訓も、過去にソドー島で何度か行われた、決め付け。つまり、相手を自分にとって苦手な人物と勝手に結び付けて、似ているからと言って偏見を持つ行為です。相手側に悪意はないけど、小さいと言われて腹を立てたトーマスは、忠告された事と真逆の行動をとる、なんとなく、S12『すごいぞトーマス』に似ています…。
ともあれ、誰かを第一印象で判断してはいけないというメッセージや、和解の後でもう一度自己紹介から始めるのは素晴らしいですし、トーマスのそう言った弱点が活かされたのも良かったです。
グスターボについては追々説明しますが、あらすじの通り、トーマスはゴードンとの共通点を見出して彼に対しひどく偏見を持ちます。この回におけるゴードンへの感情は結構辛辣です。というかトーマスが神経質にさえ感じられて違和感。付き合いが長く煽り煽り返しで仲の良い一面も観られる中、トーマスにとってそんなに嫌な奴だったっけと、疑問に思うくらいです。『TAB』や『BABA』などで夢を語ればすぐさま笑われることに起因しているのかもしれませんが、遠く離れても敵意を向けられるゴードンには本当に同情します(苦笑)
ところで、前期の中国やオーストラリア同様、このお話ではポルトガル語(ブラジルの公用語)が多く使われており、主にグスターボとクレーンのカシアが喋ります。劇中に出てきた意味は以下の通りです
・olá (オラ)→こんにちは
・expressar passando (エクスプレッソ パッサンドー)→「急行列車のお通りだ」
・terra do futuro (テラ・ド・フトゥーロ)→未来の地
・ai! (アイー!)→「うわー」や「痛い!」などの感動詞
・indignidade (インディグニダーデ)→屈辱
・muito (ムイト)→とても
・importante (インポータンテ)→重要
・dois (ドイ)→2(主に男性が使う)
・quatro (クアトロ)→4
・oito (オイト)→8
まあ、挨拶と数字以外の単語を使う機会はあまり無いかもしれませんが、知っておくとちょっと面白いです。とくにゴードンがよく言う台詞。
さて、このお話で最も興味を魅かれたのは、電化車両専用の長距離線という鉄道らしい要素が物語に組み込まれていたことです。電気機関車、あるいは電車専用の路線なので、水や石炭の補給場所などありません。近代的な鉄道ならではの事故です。1960年代から今でこそ、それが当たり前ですが、ソドー島では蒸気機関車が主役で、急行用線路が本線の真ん中に存在しますし、トーマスにとってはさぞ新鮮だったことでしょう。自業自得なのに、腹いせに土地にケチつける様子が面白かったです。
もちろん、ソドー島にも電化路線はあるけれど、短い支線なのでこう言ったトラブルはソドー島では起こらないでしょうね。トーマスも実際には短距離貨物用だし。
ブラジルで働く急行用大型電気機関車のグスターボ。いかにもアメリカっぽい風貌であるとおり、ブラジルでもお馴染みのアメリカ産EF-4クラス「Little Joe」がモデルです。詳しくはエピソード一覧をご参照あれ。わかる人に伝わればいいです。
(チャ●ントンのウィ●ソンがトーマスの世界にやってきたらこんな感じなんだろうなぁと思いました。)
仕事の内容、大きさ、車体番号、車体色と、ゴードンに共通するものばかりですが、端から見てわかる通り性格は正反対です。実際に偉そうな態度は一度も見せていません。柔軟性があり話の分かる仲間思いの良い奴です。彼を演じたフランシスコ・ラベーの穏やかで温かみのある声のおかげで滑車が掛かっています。トーマスにすっかり懐いている様子を見ると、今後のシリーズにも出てきてもらいたいなぁと思います。他の仲間との掛け合いも観たいし。残念ながら今期の出番はこの話だけ。個性だけでなく性格も良いグスターボが私は大好きです。
当初苦手意識が無く、大型電気機関車と云うソドー島ではあまり馴染みのない見た目だからこそ、トーマスも「Oh, a indignidade(「Oh, the indignity」のポルトガル語版)」を聞くまでゴードンを思い出すのに苦労したのでしょうね。側面にデカデカと「4」と書いてありますが、トーマスにとって他の仲間の車体番号に関しては特に印象ないのかもしれません。
ちなみに、ゴードンより速そうな見た目ですが、グスターボの最高速度は時速109キロ。160キロのゴードンに比べるとずっと遅いのです。その代わり、ゴードンの倍以上の力を持っいてます。
【チェックポイント】
急行用線路の風景はすごく綺麗で素晴らしかったです。S22のCGの質と比べると格段に進化しています。(それでもまだ最盛期には程遠いが)。
グスターボの客車。なんと2階建てです。世界編って大抵ソドー島の車両とストラクチャーの流用ばかりなのですが、新規造形です。今後活かされるかどうかはわからないけど、たったこれだけの為だったとしても、良いなと私は思います。
もし日本編でE4系新幹線キャラクターの出番があれば流用できそうですね(笑) 新幹線が出るかどうかは現時点じゃあわかりませんが。
全体的な面白さ:☆☆
鉄道らしさ:☆☆☆
キャラ活用:☆☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:BRILLIANT
道徳教育面:☆☆☆
【最終的な感想】
トーマスが一人で独断と偏見で動く世界編の一つですが、物語は機関車同士の掛け合いである事に加え、鉄道らしい要素が組み込まれています。更に当たり障りのない性格になっていたトーマスも、性格が活きていたので、前期からかなり改善されていると思いました。私はこのエピソードが初めて見た時から好きです。
繰り返しになりますが、グスターボくんにまた出番を与えてあげてください。
総合評価: 9/10