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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第24シリーズレビュー第2回 (※劇場版のネタバレ注意)

 

この記事には2021年公開予定の映画『おいでよ!未来の発明ショー!』に関する重大なネタバレが含まれています

閲覧は日本での公開後を強く推奨します

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S24 E21 『A New Arrival』

脚本: ポール・ラーソン & ローラ・ボーモント

内容: テクノロジー・フェアに用意された発明品を前に、トーマスはこれから鉄道が役に立たなくなると考え、出来るだけ最善を尽くそうとする。

 

【高評価点】

・発明品の数々は50~70年代のようなレトロフューチャー感を醸し出している。

・ルースの存在がジェンダー平等に大きく貢献している。

 

【低評価点】

・収束が付いたようでついてない終わり方。

 

 

 

【このエピソードについて】

 第24シリーズの2作目の中編になります。番組表では21話となっていますが、時系列的にはS24の11話目に該当すると思います。エミリーに番号があるほか、S24の前半部はルースやサニーなどのキャラクターが登場しませんので、その辺りが妥当かと。

 以前にレビューした『Thomas and the Royal Engine』と同様に75周年記念作品の中編となりますが、『ブルーマウンテンの謎』『トーマスと失われた王冠』『勇者とソドー島の怪物』『謎の海賊船と失われた宝物』などの長編が放つノスタルジックな雰囲気のソドー島をもし期待しているのなら、本作は毛色が異なるため、やや注意が必要です。

これまでのストーリーテリングのスタイルを引き継ぎながら、過去75年の歴史に新たな時代を刻むような構成となっています。

 

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©Mattel

 私の意見では…物語は、かなり平凡です。物語前半は、新しい物に不安を感じたトーマスが、取って代わられないように「時間通りに忙しく働く」の典型例です。しかし、今回は蒸気機関車という括りだけでなく、鉄道より役に立ちそうな発明が出回り、鉄道全体が不要になるかもしれない事を心配します。今までは新しい機関車が来たら…みたいな話でしたので、少し新鮮味があります。また、トーマス以外の機関車が興奮しているのも斬新でした。

 にも拘らず平凡に感じる理由は、主に物語のテンポの悪さと、内容の薄さが原因かもしれません。まず、チームにそれぞれの仕事を与える時に長々とした台詞が2分程度続きます。これは後で各々で描けば特に不要です。

 以降は小さな問題と疑問を一つずつ解決していく感じで、展開は細々としています。トーマスの行動は、"鉄道の機関車が役に立つという事を証明する為"と一貫しており、纏まりがあります。しかし、前期の中編のような強いメッセージは特に無く、この回の印象は私の中で著しく薄いです。それ以外にサブプロットがサニーの周りで起こる件しかないのも理由の一つです。または次回がダイナミックすぎるからかもしれません。

ニアが脱線した理由は何だったのでしょう。例えば邪な誰かが邪魔をしたとかだったらもっと深みがあったかも

 

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©Mattel

 この回では様々な新キャラクターが登場しますが、その中でもとくに重要な人物について私の意見を述べようと思います。それは発明家のルースです。彼女もまた、ジェンダー平等の一環で開発されたキャラクターと思われます。ルースの存在自体が例えば発明家など自分がなりたいものになれる事が出来るという事を女の子の視聴者に教える役目があるほか、女の子も機関車が好きでいていいというメッセージが含まれていると感じます。諄くなく、自然に描写されているので私は自然とルースが好きになりました。

 ルースは幼い頃、鉄道エンジニアになる事を夢見ていて、その頃からずっと蒸気機関車を最高の発明品だと思っていることが、後半において彼女の口から語られています。そして私もそれに同意します。その一語一句に温かみさえ感じられます。

 

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©Mattel

 フリードリッヒ教授(名前と訛りからしてドイツ出身と思われます)が発明した"ブラストブースター7"暴走の件りは、最終的にトーマスが活躍しなければならないにしても、蒸気機関車が最高の発明と証明させる必要があったとしても、もう少し捻りが欲しかったと感じました。トーマスの最高速度で追いつけるのが少し不思議ですし、後者は説得力が足りません。

とは言っても、ここで2つの驚きがありました。1つは、S22『かしゃをとめるワザ』で得た経験がここで活きている事です。一度も言及はされていませんでしたが、それっぽい演出があったので思わず「おおっ」となってしまいました。もう1つは、状況が似ていても、S6『ジェットエンジンのトーマス』への言及や参照が一度も無かった事です。無論、全ての瞬間で過去作への参照が必要になるわけではありませんが、絶対来るだろうと思ってただけにびっくりしました。

あとはカメラワークが全体的にかっこよかったです。

 

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©Mattel

 トップハム・ハット卿は前期よりもいい上司として描かれていて、かなり好印象でした。トーマスの頑張りを認めながらのお叱り。そして改めて次につなげます。いいですねぇ。

 

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©Mattel

 はい、恐らく、多くの古参ファンが、ルースの発明した空飛ぶ車(ロード・プレーン)を簡単に容認できないだろうと思います。私がもう少し若ければ、私も同じように騒いだかもしれません。SF世界のような空飛ぶ車がトーマスの世界で動くと、制約が無い世界観のように見える可能性があります。しかし、あくまでフェア用の実験的な代物で、生産・実用化に至っていない事を視野に入れて考えてみてください

ブラスト・ブースター7や、次回で続々登場する発明品も含めてです。

 車を飛ばすという発想は、実際に20世紀中期の50年代で流行りました。現在でも実用化に至っていませんが、空飛ぶ車の開発は1926年から開始し、1949年にはモルト・テイラーがエアロカーの飛行実験に成功させています。この為、空飛ぶ車自体の発想は50~70年代を意識して創られているトーマスの世界によく適しています。また、そのデザインがレトロフューチャーの域を出ていない事にも、私としては好感が持てます。

 

 ちなみにルースのロード・プレーンはアルミニウムで出来ているようです(リンク)。

 

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©Mattel

 ここまでは好印象の話をしましたが、最期の場面は、私にとって失望をもたらしました。オーバートンでさえオチを作ったのに。そして後の事を考えると、ここで「To be continued」の文字列を出すのはとてもばかげています。次回の話で初っ端からその不安が解決しますし、同じDVDに収録されている例と、劇場で続けて公開されることを考えると率直に言って不要です。

 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 ルースのロード・プレーンのおかげで、上空から見たウルフステッド城の全体像を観る事が出来ました。寧ろ、私はロード・プレーンよりお城の方に目が行き、興味をそそられました。

 

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©Mattel

 ゴードンが安心しきった表情なのはニアのお蔭なのかなと思ったり思わなかったり。

 

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©Mattel

 空想シークエンスで描かれる物事は、「釣りをしてみたいなぁ」の、延長線上のようなものだと考えているので、空想内で機関車に適さない非現実的な描写が為されたとしても、そのキャラが「こうしたい」「こうでありたい」と捉えるのはそう難しい物ではありません。釣りをしたがるのと、潜水艦になりたがるのは具体的にどのような差があるでしょうか。

 

 もしも機関車が将来の発明でどうなるか、という空想では、ゴードンが自分の兄弟より速くありたい、ジェームスは空を飛んで目立ちたい、ニアとレベッカは周囲を愉しませたいという、それぞれのキャラ性と想いが伝わりやすく示唆されていて好きでした。

また、少なくとも4つの空想の中で実現可能に最も近い事を、レベッカが思い浮かべていたのも好きです。レベッカの純粋な謙虚さが表れています

 

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©Mattel

 博覧会「ワールド・オブ・トゥモロー」の為にウルフステッド城に設置された大観覧車のゴンドラは支線客車の車体がそのまま使われています。

これも伯爵の趣味でしょうか。なんだか夢がありますね。ただ、第18シリーズで客車が不足しているかのようなプロットがいくつか存在したので、無駄に使っていいのかなと、思ってしまいます。

 ちなみに、観覧車の骨組はスティーブンの動輪の流用だったりします。

 

 

全体的な面白さ:☆

鉄道らしさ:☆☆

キャラ活用:☆☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション: BRILLIANT

道徳教育面:☆☆

 

【最終的な感想】

 中盤までよかったのに、纏まっているんだか纏まっていないのかよくわからない締め方にすべてを持って行かれたので、私の総合評価は低い位置にあります。但し、ルースの発明品や空想はその総合評価に全く影響していないとだけ伝えておきましょう。

バズとバーニーや、サニー、ケンジの件は次の記事で触れようと思います。

繰り返しになりますが物語は平凡です。でも、ルースと発明品を含めてシリーズの始まりには良い感じの設定が用意されたなと思います。

 

総合評価: 3/10

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