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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第24シリーズレビュー第3回 (※劇場版のネタバレ注意)

この記事には2021年公開予定の映画『おいでよ!未来の発明ショー!』に関する重大なネタバレが含まれています

閲覧は日本での公開後を強く推奨します

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S24 E22 『World of Tomorrow』

脚本: ポール・ラーソン & ローラ・ボーモント

内容: 機関車達が新しい発明品に取って代わられることを心配する中、フェアではルースのホバーカーの設計図が盗まれる。

 

【高評価点】

ミルクセーキマシン以外の全ての発明品が物語で活きるほか、それを束ねるのがトーマス一台の力ということで、前回より説得力がある。

・ゴードンの活躍の瞬間。

・架線無しでは加速出来ない事を説明するケンジ。

 

【低評価点】

・機関車をはるかに超える大きさと質量のメタルマンが高速で引き寄せられても凹まないタンク車。(nitpick)

・トーマスとサニーと同じ線路から走ってきているにもかかわらず、別の線路から走ってくるケンジ。(nitpick)

 

 

 

【このエピソードについて】

 仮に「The Royal Engine」が正統派と言うのならば、「Marvellous Machinery」はそのアンチテーゼと言えるでしょう。第5シリーズ並みかそれ以上に、"それが『きかんしゃトーマス』シリーズの大前提"という要素全体の固定観念をひっくり返した意欲作となっています。

良いか悪いかは別として、『ゼルダの伝説 ブレスオブザイワイルド』で云うところの、"アタリマエを見直した作品"と言っても過言ではないでしょう。今回はその後編『World of Tomorrow』です。

 

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©Mattel

 引き続き、取って代わられる恐怖心が主軸となっています。今回は恐怖の対象が発明品ではなく、S20『みらいのきかんしゃ』のように新しい仲間ということで、表向きは在り来たりな内容ではありますが、物語は、前回でこっそり来島したサニーの葛藤と、バズとバーニーの計画実行を中心に展開します。寧ろ注目してほしいのはそこです。

 

 テクノロジー・フェアが万国博覧会を意図した催しということで、超強力な小型電磁石、色んなフレーバーが楽しめるミルクセーキマシン、リモコンか後部座席で操縦できる巨大ロボットのメタルマン、ルースのホバーカーといった発明品が新たに登場するので、前回に比べてより一層SF世界っぽくて、トーマスシリーズにとって非常に奇妙ですが、私としては、はっちゃけている分、吹っ切れて楽しむことが出来ました。

また、引き続きメタルマンのデザインは20世紀中期頃のアイディアを基に設計されているようで、21世紀の空想を膨らませていた当時の人々を描くように見え、これも自然と受け入れられました。そう思うと、メタルマンについては特に問題ないと思います。

ホバーカーも1958年から実際にフォード社のエンジニアがホバークラフトの空気クッションを使って実現しようとしていました。59年には技術的に成功しましたがプロジェクトは破棄に追いやられました。なので、それほど非現実的な物ではありません。もっとも、ルースのホバーカーはホバリングと云うよりも航空機のように飛んでいますが…

 

 主に喜劇で追加されたミルクセーキマシンを除いて、全ての発明品が発表以外の目的で物語で使われていたのはかなり印象的でした。活躍したと言っても、まだ改善の余地があると認めざるを得ないような描写もあり、それらが生産されるのがまだ遠い未来かもしれないと視聴者に認識させたことも好感触です。そしてそれらを有効活用するために束ねたのはトーマス=蒸気機関車ということで、前回に比べて説得力がありました

ただ紹介するだけでなく発表までと発表後で物語に関係があったのも良かった点です。

 

 ただし、エセ科学ではないかどうかだけは、どうしても気になってしまいますね。「フィクションです」と云えばそれまでですが、キャラクターが実際の機関車や自動車に基づいた設定だったり、設定された地図にイギリスの歴史が詰まっていたりと、元が"現実感"のある作風ですので、シリーズでは浮いてしまいます。

その辺はメカに微塵も詳しくないので私からは何とも言えません。

 

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©Mattel

 前回でちらっと登場したケンジも、60~70年代の時代設定によく適しています。メタルマンのデザインとケンジが並ぶと、日本で云う昭和っぽさが良い意味で際立ちます。彼のモデルになった0系新幹線は1964年に製造されました。実際には製造当時の時点では世界最速ではありませんでしたが、営業運転で時速200キロで走る車両は0系が初ですのであながち間違いではないでしょう。

2両での走行は奇妙に見えるかもしれませんが、テクノロジー・フェア=万国博覧会と仮定して、催し用に連れてこられた試験車両として考えてみるのはいかがでしょうか。公式設定ではありませんが。本物の0系新幹線2両で一単位として動作します。なので、試験走行では2~4両で走行する事例が存在します。0系というよりはむしろ試験車両の1000形新幹線*1も視野に入れているのではないかと思いましたが、私の考えすぎでしょうかね?

 

 ケンジについては深く掘り下げられませんでしたが、少しだけ性格が描写されたのが好きでした。ケンジは電力を供給する架線の下でしか動けず、普段は日本でしか冒険できないので、トーマスを尊敬しています。

トーマスとの対話は、まるでトーマスファンの子供の様でほっこりしました。そんな限定的な範囲でしか走れないケンジは意図せず本線を走ることになり、冒険どころかパニックになってしまいます。S5『うしろむきのトード』にちょっとだけ似ていますね。トーマスが助けに来た時のケンジの反応で、またほっこりしました。

 しかし、新幹線を意味する"Bullet Train"でなくとも、"Electric Train"と呼ばれなかったのだけは納得いきません。電車(Train)と機関車(Engine)は形式が違います。気動車のデイジーですら"Diesel Rail Car"と称されてるのに。

 

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©Mattel

 2通りの追跡劇はとても興奮しました。ブラストブースター7の登場が一回きりで無かった事と、ゴードンが活躍しているのは個人的にとてもうれしかったです。特にゴードンは、ハイジャックされたケンジを空港に行かせまいと、身体を張って逃亡を阻止しました。完全に制御できなかったものの、ゴードンのかっこいいところを見られて嬉しいです。レベッカも活躍してほしかったですね。

 

 ケンジが電力供給の出来ない本線を走った事についてですが、これに関しても何も問題ないと思います。まず、ウルフステッド城に新たに設けられた電化区間は周回できるように架線が建てられているようです。その周回コースで速度を上げた状態で、ポイントを切り替えて、お城の丘を下って加速することが出来ます。本線を走れたのは主にその影響と思われます。そこから先は徐々に減速している描写があるので、ゴードンとレベッカも追いつくことが出来たのでしょう。

まあ、トーマスがブラストブースター7に押されながら、傾き加減で別の線路に割り込んで分離するのは無理がありますがね。

 

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©Mattel

 今回も特に強いメッセージがあるわけでもありませんが、「二度目のチャンスが与えられるべき」というオードリー牧師を思わせる台詞があった事にグッと来ました。S18『スペンサーとふくだいじん』ほど強く感情的な物ではありませんが、シリーズにおいても子供たちにも重要なテーマであり、最後の最後に「これぞ『きかんしゃトーマス』だ」と思わされました。

 

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©Mattel

 この回でまず注目したいのはサニーです。"Sonny"という文字列を見ると日本人は「ニー」と呼びたくなるでしょうけれど、ネイティブでは「サニーの発音が正しいです*2。息子を意味する「son」だって「サン」と呼ぶでしょう? まあ、公式がもし「ソニー」呼びしたらそれに従いますが、このレビューでは一先ず発音に従ってサニーと呼ぶことにします。

 2020年6月現在では、公式からサニーの性格について何も出回っていません。Meet the Characterのサニーの動画でさえ、技術的な設定しか説明してくれませんでした。(トーマスらしい現実的な設定が設けられていてありがたいですが)。

なので、来島直後までの彼の態度については、私の偏見で語ることになります。自分も悪者になりきっていたのか、バズとバーニーを手助けしたいと思っていたのか、面倒事にしたくないからか、その真相はまだ知りませんが、彼の態度からはいろいろ考えさせられます。とにかく、振り回されて精神的に疲れているように見えます。繊細な心の持ち主なのかもしれません。

 サニーと詐欺師コンビとの関係は『SLOTLT』のスキフと船乗りジョンによく似ているとファンの間で言われています。はい、確かに所有者が悪役で、それに従う事から寝返り、所有者に心無い事を言われるところは共通しています。

でも、スキフは最初から最後まで非常に真っ直ぐで、船乗りジョンが蹴ろうがお構いなしに友達という認識で居り、船乗りジョンは事件が起こるまで、人の善いスキフを騙していました。

 サニーは友達というよりは、詐欺師コンビの部下や奴隷のような関係に見え、劇中のように普段からバズに蔑まれている所為なのか、弱みを握られているのか知りませんが、彼らのためにあくまで移動手段として最善を尽くそうとしています。人々の役に立つ事に興味を持つまでは悪事に従っていました。恐らくサニーの態度から、悪事に加担している認識はあったかと思われます。サニーはトーマスやノランビー伯爵との対面で、性格と使命感に変化が訪れました

ここから、今期短編の『Sonny's Second Chance』に繋がります。サニーがこれからどう成長していくか、どのように認められるかが楽しみです。

 

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©Mattel

 もう一つ語りたいキャラクターは、詐欺師(crook)のバズバーニーです。2人組の悪役人間キャラクターは第22シリーズ、第23シリーズと連続して出てきたので、正直出過ぎな気がしますが、その以前の名前を持たないトラ密猟者と王冠泥棒と違って、個性的なキャラ付けがされており、コミカルに動き、物語に面白みを追加させたので、キャラクターとしても面白かったです。

 背が高いバズは、狡猾で頭が良く、それ以前の2人組悪役には無い魅力がありました。欲望の赴くまま計画をぶちまける粗暴な船乗りジョンとも異なります。寝返ったサニーをおとりにしたり、計画の邪魔にならないようバーニーを軽量客車と一緒に切り離すなどキレッキレの悪役っぷりに、一瞬で彼が好きになりました。

 一方、バーニーは典型的な馬鹿でした。バズが何故彼を連れてきたのか、それがわかるような悪役としての見せ場はもっと欲しかったです。ケンジの連結をほどけるほどの馬鹿力があるからでしょうか。喜劇としては滑稽で面白かったですけれど。
 海外ファンの間では、バズがウォルト・ディズニーをモデルにしているのではと一時期話題になりましたが、きっと気のせいですよね。『ファインディング・ニモ』に同名のカニのコンビが居るのだってきっと偶然ですよね

 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 今度はトーマスの機関士の活躍も必見です。

欲を言えば『おんぼろエドワード』のリメイクとして見たかったと思わなくもないですけどね(笑)

 

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©Mattel

 ご存知の通り、外部電源から電力を供給する集電装置付きの電車及び電気機関車は、架線が無いところでは走れません。減速の理由をケンジが「電流無しでは走れない」と説明してくれたのは嬉しかったです。

そう、電力が供給できないので、ほぼ重力だけで暴走していることになります。あとは減速していくだけです。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:BRILLIANT

アニメーション:☆

道徳教育面:☆☆

 

【最終的な感想】

 勧善懲悪が主題、"友情"がテーマではない、SFっぽさといったシリーズの当たり前を覆すような展開の連続には良い意味でも悪い意味でも驚きました。メタルマンの登場以降、何のアニメを見せられているのかわからなくなるまでありました。やりすぎです。でも、あくまでソドー島の日常感を忘れていないところには好感が持てます。

 普段から現実感について豪語する私の事なので、読者の方々には意外に思われるかもしれませんが、私はこのエピソードが本当に好きでした。笑いの瞬間が多いほか、ドラマ性もあり、ハラハラするような展開もあり、娯楽的にはシンプルに面白いです。

終始盛り上がるので、前期の中編よりも明らかに楽しむことが出来ました。但しメッセージ的な物は少し弱いかもしれません。先ほども言ったように、ぶっ飛んでる分、そういうものだと思って視聴したので心から楽しむことが出来ました。低評価点も基本的にnitpickだけで、批判したいところは特にありません。

 短編でルース、サニー、ケンジがどのような活躍をしたり、進捗するのか、今からとても楽しみです。特にケンジは、ヒューゴの二の舞にならない事を祈っています。

 

総合評価: 9/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:1963年に世界最高速度の記録を出しました。

*2:玩具支援サイトのTootally Thomasが誤って「Sunny」と表記したのもその所為と考えられます。