※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
S24 E08 『James the Super Engine』『スーパーきかんしゃジェームス』
脚本: デヴィッド・ストーテン
内容: ジェームスはスーパーヒーローになりきって救助活動を行う。
テーマ: 人助け
【高評価点】
・近年ひどく傲慢になりやすいジェームスをヒーローとして活躍させたほか、魅力の新しい開発。
【低評価点】
無し
【このエピソードについて】
この回は、米国のNetflixが5月のローンチを発表した頃、今年3月に『Thomas and the Inventor's Workshop』と共に、リリース前のプレビューとして公開されました*1。それで初めて視聴した際から私の意見は現在まで変わっていません。
ジェームスが単体で真っ当に活躍を果たしたのはいつ以来でしょうか。もうずいぶん長い事観ていない気がします。特にS8~16の話になれば、理想的なジェームス像かどうかだったり、活躍の度合いにもよりますが、少なくともS17からは一度もその様子を観せていません。
プロットは簡単に言えば、特別な能力を持つ空想上のスーパーヒーローになりきって、その場で困っている子供たちや機関車を助けるというもので、子供番組にありがちなネタです。トーマスでもそのネタを持ち込むという事は、子供の頃にヒーローごっこをやった事がある人がそれほど多いという事なのかもしれません。ヒーローでなくとも、色んな技術を持つ天才科学者でもいいです。とにかく、ジェームスが"スーパーヒアリング"などと言う度、私は自分の幼少期を思い出さずにはいられませんでした。(笑)
ヒーローと云えば、近年のジェームスは、それになりたがる様子を見せる事が多くなった気がします。『JBS』では提案を真に受けてヒーローになるため、トーマスを捜しに行きました。『TOTB』でも似たようなことが起きました*2し、今期の『Emily to the Rescue』においても、ヒーローになる事を動機にロッキーを運びに行く言及がありましたね。
いつもは目立ちたがりなジェームスですが、覆面をしてなりきった際には、俗にいう「掟」を破らず、最後まで自分の正体を明かしたり、自分の手柄を主張する事もしないなど、彼なりの役目の意図とヒーロー像が垣間見えた気がします。この為、いつもと違うジェームスがとてもかっこよく見えました。本人は遊んでただけでしょうけどw
50~70年代のソドー島(イギリス)でヒーローコミックが流行る事は少し奇妙にも感じました。トーマス作品において、本編ではこれが初になりますが、玩具の"ミニミニトーマスシリーズ"が販売開始当初の2015年にそれを行ったので、ある意味5年越しのネタということになりますね。翌年にはDCコミックスとコラボしてアメコミ風のストーリーも公開されました。(リンク)
それにしてもブリジットとスティーブンもこういうのに夢中になるんですね。(小並)
低評価点に入れるまでも無いと思ったので書いていませんが、物語には少々不可思議な点が目立ちます。第一にパーシーです。何故あれだけの石炭の貨車を「2倍の量でも牽ける」と強がってまで牽こうとしたのかが描写されていません。元々、適材適所で仕事を任されているので、多少無理があります。他の仲間に煽られたり、手伝う為と描写していたら自然だったかもしれません。
第二に、石炭の煤が薄まる頃にはジェームスの車体がほぼ見える状態でしたので、それに気が付かないのも不自然に見えます。パーシーとレベッカの鈍感さゆえのキャラクター選択でしょうか。
これらの些細な欠点にも拘らず、例え脚本で意図していなかったとしても、散らばった貨車に体当たりしようが、煤にまみれようが、勇猛果敢にレベッカを救ったジェームスはかっこよかったです。あの綺麗好きなジェームスがですよ。惚れ直しましたね。
仮にヒーローごっこがジェームスの自己満足半分だったとしても、S5で学んだ人助けのテーマの積極的な応用は理に適っています。最終的に"本物のトラブル"の為に取り組んだのは良かったです。逐一BGMを口ずさむのは愛嬌がありますね。
まあでもブレーキ車吹っ飛ばすのは、車掌が乗っていた場合とても危険ですが。
【チェックポイント】
今回の空想シークエンスは、ジェームスが"レール・ロケット"と称したスーパーヒーローになった自分を空想するもの。画面の枠が蒸気や煙等ではなく、コミックのコマ枠になっている演出が好きです。
全体的な面白さ:☆☆
鉄道らしさ:☆☆
キャラ活用:☆☆
BGMの良さ:☆☆☆
アニメーション:☆☆
道徳教育面:☆☆☆
【最終的な感想】
久しぶりにかっこいいジェームスが見られて嬉しかっただけでなく、話のテンポが良く、ヒーローごっこが『きかんしゃトーマス』という作品らしさの範囲内で上手く実行していたのでとても楽しめました。
10点に至らない理由は、子供番組に有りがちで、中盤辺りでその後の展開を簡単に予測することが可能である事です。良く言えば期待を裏切らないということです。しかし、CG中期から自惚れやの部分が目立ちすぎていたジェームスとしての新しい魅力を確認できましたし、私の中では良作と考えています。もう何度も言うように、「傲慢で目立つの大好き」だけが彼の特徴ではありませんからね。
今回の脚本は、『KOTR』(2013年)から『BWBA』(2018年)までの長編で、アーク・プロダクション及びジャム・フィルド・トロント側の監督を務めたデヴィッド・ストーテンでした。今期全体と、前期の『Steam Team to the Rescue』のみ、アンドリュー・ブレナーに代わってヘッドライターを務めたほか、この回を含み3話ほど脚本にも携わっています。彼の脚本がこの3話でどうかと問われると何も答えられませんが、どの回も、問題解決が自然で面白いです。とにかく、良作揃いの長編の監督がヘッドを務めた事実を嬉しく思います。
総合評価: 8/10