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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス All Engines Go 第1シリーズ第1話レビュー

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

AEG第1シリーズあらすじ一覧はこちら。

zeluigi.hatenablog.com

 

 

【はじめに】※長いので飛ばしてもいいです。

 結局のところ、元々の番組『きかんしゃトーマス』から私の好きな部分の98%が失われているのに、私はAEGをひとまず「別の一つのコンテンツ」として楽しんでいます。恐らく私は、好きな作品の"今ある供給"を前に我慢すると疲れるタイプのマニアなのでしょう。

 

 楽しんでいるとはいえ、私もマテルとネルバナのやり方に文句が無いわけではありません。特にプレスリリースの一言と、一監督の姿勢。

が、それはそれとして、同時に、主に海外ユーザーでそこそこ影響力のある人を筆頭に多くの古参ファンが自分が対象でない番組に対して自己中心的な視点から発言をし、一部は過激派と化して、番組を楽しんでいる人に向かってリプライで押し付けがましいヘイトスピーチをするような、ファンとしてあるまじき現状には、流石に我慢ならないところがあります。(※無論、番組の対象者以外は意見を述べてはならないという意味ではありません)。

繰り返し言います。作品に対して「好き」とも「嫌い」とも発言するのは自然です。しかし、だからと言って自分と違う意見の相手を攻撃していいことにはなりません。懐かしんで楽しめる思い出があることは素晴らしいことだけど、例え軌道に沿った作品でなくても、今思い出を作ろうとする人を邪魔してはいけません。BWBA期や、シャロン・ミラー執筆期が好きだった当時の子供にもです。

反対に、新しい物を古参ファンに強引に押し付けるのもよくありませんどちらも全体のコンテンツのファンをファンが減らす事に直結する最低なやり方ということに気づいてください。私の意見を振り回すのもご遠慮願います。

常々ファンによる作品との向き合い方・楽しみ方は人それぞれでいいのにと思います。それが攻撃的か解釈を押し付けでなければ、好きだと感じて誰かの迷惑になるわけでもないし。

逆に、今まさに思い出を作ろうとしている人(特に子供)は、周囲の評判に関係なく、自分の気持ちに素直に好きな作品を楽しんでほしいと思います。どのコンテンツでも。

 

 自分の話に戻ります。

というわけで、私は我慢出来ずにリアルタイムで第1シリーズ分の52話と長編1作品を余す所なく観ました。それが自分にとって最善の方法だったからです。ここまで来たら最後まで見届けるかも。

元の番組ほど私が熱心ではないこと、そしていつも時間に追われていることを踏まえて、前々回のAEGの記事で宣言した通り、魅力的に感じた回と注目ポイントだけ特筆する形で個別レビュー記事を設けます。(まず前半枠は1話、5~8話、11話、13話、17~20話、23~25話のみの予定)。S20とS21のレビューに力を入れたいし。でもどうしても語りたいことあるし。AEGのS1後半も1月に控えてるし。

それ以外のエピソードに関しては、「AEG第1シリーズレビューまとめ」に簡潔に感想を書いたので、日本で放送されて時間が経ってから投稿しようと思っています*1。まあ私の記事は期待しなくていいです。

とりあえず今回は手始めにリブート版一番最初の公式エピソードから始まります。※カテゴリーは第25シリーズではなく、All Engines Goに統一しています。

 

レビューの閲覧は日本公開後を推奨します。

 

 

 

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AEG S1 E1 『A Thomas Promise』『トーマスのやくそく』

監督: ジェイソン・グロー

脚本: リック・サヴァル

内容: トーマスはゴードンの代わりに廃品物の貨車を運ぶことを約束するが、一緒に運ぶディーゼルとの競争に夢中になる。

 

【このエピソードについて】

 さあ、とうとうリブート版の感想を述べる時が来ました。放送に至るまで殆ど宣伝がなかったので早く映像を観たいとウズウズしていました。

既に放送前から危惧していたブランドのアイデンティティがほぼ破綻しているのが気になるものの、監督のキャンベル・ブライアーも、プロデューサーのリック・サヴァルも口を揃えて言及しているように、そもそも、この番組の方針は新しい若い層にトーマスを知ってもらい、模型もCGも原作絵本も手に取ってもらいやすくするための一つの手段(「別のコンテンツ」)として確立されているので、この個別記事でのレビューはひとまずアイデンティティに関する部分は抜きで、遊び心物語の独創性を加えた新しい評価基準で感想を述べようと思います。この評価基準は「まとめ」と同じです。

 

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©︎Mattel

 エピソードを見て、"遊び心を交えて働く"の意味をすぐに理解できました。冒頭では人間の子供の如く、ちびっこ機関車たちが遊んでいます。それだけではなく、配達の時間(第2話以降見られます)からは、いつも安全に気を配る従来のシリーズとは異なり、少し自由なやり方で楽しみを得ながら仕事をするという感じです。シャロン期でも似たようなことがありましたが、これがAEGの基礎的なスタンスなのでしょう。

そういうわけでちょっとやそっとのことでは、トップハム・ハット卿に叱られない、というか、このシリーズではトーマスたちちびっこを叱る役割は、種族(?)として対等な立場である先輩ポジションのゴードンが担っています。リベラル過激派の指摘が通ったのか?

ちなみにトップハム・ハット卿はこのエピソードには登場しません。彼は他のキャラに比べて脇役ですが、模型初期の頃と同じくらいハートフルに描写されています。

 ゴードンはレギュラーの中で唯一「大人」として交流するキャラクターです*2。従来のように自惚れることはなく、積極的にちびっ子達を助けたり*3、自分よりカナのほうが速いことも認めているし*4廃品物の重要ささえ把握しているほどです。もし本編ならだいぶ成長したことになるのに。ちょっと綺麗すぎるけど、原作の彼の良い部分も踏襲しているように見えます。また、くだらない行事には感心しない一面もあります*5

 この第1話では、トーマスが、彼の過ちで連結できなくなったゴードンを助けるところから始まります。ここで元番組の第1シリーズ1話が過ったのは私だけではないはず。でも、今回はトーマスとゴードンの相互作用から成る物語ではありません。

 

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©︎Mattel

 そこで物語を左右するのがこのシリーズでレギュラーキャラクターに昇格したディーゼルです。正確には、冒頭でどちらが一番か争っていたトーマスとディーゼルが決着をつけようと奮闘し、鍔迫り合いの結果、トーマスは教訓を学びます。

今回の道徳は、約束をきちんと守りぬくには競争をやめる必要があることです。「この場で今優先するべきことは何か」を視聴者の子供達のお手本になるように描かれています。ただ、意図的か否かは不明ですが第12シリーズ『Don't Go Back』の焼き直しにも見えます。趣旨は異なりますが、それは貨車を集めるはずがいつの間にかトーマスがディーゼルとの後進競争に夢中になって事故を起こす話でした。少なくとも物語はそれより優れています。

話全体は纏まりがあり、コメディ要素もあります。前半の競争はズル賢いディーゼルの性格のおかげで楽しいです。

それ以外はあまり言うことは無いかも。単純な物語と単純な道徳で特にひねりはない。シリーズ開始の土台としては比較的まともです。キャラクターはこのシリーズでは大体こんな感じかとわかる感じ。

しかし、終盤に差し掛かると、トーマスをトップに立たせるためか理由もなくディーゼルの貨車から廃棄物が落ちていく場面が作為的に感じられて少々残念でした。

 

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©︎Mattel

 当初の計画ではカートゥーンネットワークUSとの契約により、2つのエピソードを1セットで放送し、前半のエピソードにオリジナルソングを挿入することになっていたそうです。脚本家が作詞して曲に命を吹き込むために作曲家を雇うといった流れ*6。(大変そう)。そういうわけで、第1シリーズの奇数話には必ず挿入歌があります。

 第1話ではエピソードを通して止まっては始まる「I'm Gonna Chug」が入っています。キャッチーな曲で楽しくて子供受けしそうです。ただ、歌詞は繰り返しで後半になるにつれて飽きてしまいました。

 

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©︎Mattel

 AEGシリーズは世界観だけでなくキャラクターの性格や立場も従来のシリーズと異なっているようです。(全く新しい番組という事で従来で得た教訓は無かった事になっています)。

 例えば、AEGのトーマスは、3~6歳くらいの元気いっぱいな男児を彷彿とさせる、わんぱくなキャラクターで、遊びに熱中しすぎて自分がやるべき事や本質をしばしば見失う性格で描かれています。この部分は今回の他に、第2話、4話、11話、24話などの複数エピソードで見受けられ、それぞれ道徳に繋がっています。少々愚かに見えますが共感しやすい部分です。

 ディーゼル蒸気機関車に対する復讐心と悪意に満ち溢れた狡猾な従来のシリーズと異なり、ずる賢さの片鱗を残しつつも、競争好きで負けず嫌いなトーマスの親友の一台でフレネミー的な役割を持っています。声変わり寸前の子役を起用しているおかげかトーマスより1~2歳年上の印象を与えられます。

 カーリーは見ての通りです。サンディーや5台の子供機関車たちといつも一緒にいる友達ですが体が大きく落ち着いていて少し大人びて見えます。少しおっちょこちょいな一面がこのエピソードでのみ見られます。

補足しておくと、カーリーがオリジナルと異なるデザインであることや、カナとサンディーの導入などのメタ的な要素は何も説明されていません。これは「ターゲットとしている視聴者層や新規層に伝わりにくい」として意図的になされていないようです。長編作品『めざせ! 夢のチャンピオンカップ』でさえ、始めからトーマスとカナが友達の状態でスタートします。私としては興味があったのですが、そういう世界線のソドー島ということにしておきましょう。

 

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©︎Mattel

 新しいキャラクターのサンディーはこの時点で有能っぷりを発揮しています。好奇心旺盛で必要なものの理解が早く、すぐに興味を惹かれました。まず小さな女の子キャラクターが修理工なのもいいですね。その代わりかビクターとケビンは出ないけど。

 このエピソードに限ったことではないのですが、彼らが貨車を連結するときにネジ式連結器ではなく、自動連結器が扱われているのは何故でしょう。時代に合わせているんですかね。両用なのかな。

 

 

【チェックポイント】

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©︎Mattel

 2Dアニメーションでの表現はまとめの記事に書いておくつもりです。あえてここで言うとしたら、デジタル画のカートゥーンアニメーションとしての質はしっかり高いと感じます。常にぬるぬる動くし、飽きさせない工夫もあるし、奥行きを活用して立体的に動くときは3DCGのように見える時さえあります。時々目立ったレイヤーミスはあるけどね。

 これも第1シリーズ全体で言えることですが、機関士や作業員などが存在しない世界線の為、一般的な乗り物の擬人化のカートゥーン、例えばリック・サヴァルがヘッドライターを手掛けた『はたらくクルマのスティンキーとダーティー』などのように、機関車たちは自分の車輪や緩衝器を手のように動かして物を掴んだり、ポイントを切り替えたりします。この動作はマテルから「車輪を手のように使わないでほしい」と指摘が入り、後のシリーズでは修正が入っているそうです。マテルが少しまともで安心しています。カーリーとサンディーが手の役割で登場したわけですから。

まあポイントを逐一切り替える描写があるのは、ある意味ニトロ期より丁寧かも(?)。

 

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©︎Mattel

 今回の物語の最終到達点がウィフのリサイクル工場(Whiff's Recycling Plant)ということで、初っ端からウィフの名前が出たことに驚いています。CGシリーズではゴミの集積場でしたが、ソーラーパネルタブレットフォンが存在するAEGの現代的な世界観に合わせてか少しアップグレードしています。

 リック・サヴァルはこの時点でウィフを出したかったようですが、第1シリーズの段階では使用できる予算が非常に限られていたため、物語に必要最低限のキャラクターと情景しか用意出来なかったとのことで、今期は出演していません。(※この場合の必要最低限とは、AEGの基準を指します。本来5台のちびっ子で展開するシリーズなので*7、トビー、レベッカ、バーティーなどの元レギュラーキャラクターも不在)。

同じ理由で、AEGの準主要メンバーであるにも関わらずほとんど出番の無いエミリーも、背景の為に出番が与えられたエドワードとヘンリーも喋りません*8。これらのキャラクターはシリーズがもう少し進行すれば出てくるないし喋る日が来るかもしれません。それは第1シリーズの途中で制作を離れたリックにもわかりません。

 私個人としては彼の名前が初期から出ただけで嬉しいです。2Dで表現された最推しを観たい気もするけど、同時に性格で解釈違いがありそうで怖いなとも思います。まあ全部のキャラクターが元々の番組と性格や役割が異なっているので今更何をって感じですが(笑)

 

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©︎Mattel

 アニメーションのみならず全体の制作がカナダで行われている為かどうかは定かではありませんが、英国基準だった従来の番組と異なり、ボイスキャストや台詞に関係する語句は米国基準となっているようです。

UK版で異なる声優を持っていても、一般的な語句が一部変化(米国ではBro、英国ではBrotherなど)するものの、鉄道用語、例えば貨車を表す語句は米国基準のまま”Car"とされています。固有名詞のいたずら貨車はTroublesome Trucksなのに。機関車を表す語句も、通常EngineのところをTrainだったりLocomotiveだったり安定しません。鉄道でさえ"Railroad"で統一されています。

 

 ボイスキャストに関しては、まず基準と思しきUS版はかなり安定しています。勿論第24シリーズまでの声優から全て一新されています。殆どの声優が楽しそうに演じているように聞こえます。驚いたことに、ゴードンの声優は2000年の長編『魔法の線路』の原語版で同じキャラを演じたニール・クローンです。21年越しに再びゴードンを演じる事になるわけで、ご本人も嬉しそうでした。この事実自体が凄いし、老いた声質は文字通り「教育的な大人」で描かれる彼に最適です。

 UK版のボイスキャストもそれぞれ合っていていい感じです。聞き取りやすいし。ゴードンを演じるウィル・ハリソン=ウォレスも穏やかなおじさんっぽくて違った良さがあります

子役も概ね良好です。US版もUK版もキャラクターの大きさや性格に合っているように感じます。特にディーゼル役のショモイ・ジェームズ・ミッチェルと、ヘンリー・ハリソンを気に入っています。両者が共通する掠れ声は俗に言う「ゴロゴロ」を意図しているわけではなくても、雰囲気にぴったりです。

ただ、シリーズを通してなぜかUK版だけキーが半音上がっているのが最も不満です。せっかく用意されたBGMは軽く聞こえるし、子役が歌唱パートで歌いにくそうなのがなんとも*9。1.04倍速は相変わらずなのに細やかに動く2Dアニメーションには速すぎるとも感じます。

 

 

全体的な面白さ:☆☆

遊び心:☆☆

キャラクター:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆

独創性:☆

道徳:☆☆

 

【最終的な感想】

 物語と道徳はまともでわかりやすいです。シリーズのオリジンとしても、(ニアは未登場でしたが)あくまでAEG内のキャラクター、世界観の構築、アクション、アニメーションなどを含めて土台がしっかり描かれています。2D期は2D期なので事前の情報通り鉄道的な要素には一切期待していません。物語は後半の展開をどれだけ許せるかによって好みが分かれると思います。私が考えている以上に子供たちにウケがいいかもしれません。私の意見では、シリーズの第1話としては印象が弱く、やや冗長で退屈に感じました。

とは言っても、後の作品には魅力的で真新しい話が隠れています

 

 さて、このエピソードは私のお気に入りではなかったのですが、私は脚本家のリック・サヴァルを一人の作家兼トーマスのファンとして尊敬しています。彼は、新しいファンは勿論、古参ファンとの交流にも積極的で、牧師の遺産を可能な範囲で傷つけたくないイアン・マキューに似た熱意を持っているようです。彼らがいなければシリーズは更に手に負えない状態になっていたかもしれません。

興味があれば、是非ファンによるリック・サヴァルとのインタビューを一読しておくことを推奨します

 

総合評価: 5/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てMattel, Inc.に帰属します。

*1:マテルはAEGの放送権でNHKと契約済みです。

*2:オープニングに出てくるクランキーも「大人」ポジだけど基本的に脇役。

*3:第2話、第8話、第18話など

*4:長編『めざせ! 夢のチャンピオンカップ

*5:第14話

*6:https://thomas-and-friends-all-engines-go.fandom.com/wiki/All_Engines_Go_Wiki:Exclusives/Rick_Suvalle_Interview

*7:ジェームス、エミリー等の人気キャラはリックが従来のファン向けにどうしてもと用意した産物。

*8:台詞が長文にしろ一行にしろ、声優に払うギャラは同じである為。

*9:元々音程取れない人なのかもしれないけど。