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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

Thomas & Friends: All Engines Go 第1シリーズ第11話レビュー

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

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AEG S1 E11 『A Wide Delivery』『いえをはこぶほうほう』

監督: キャンベル・ブライアー

脚本: ニキ・リットン

内容: 2台1組で配達することになり、トーマスは一緒に運びたかったパーシーではなくディーゼルと組むことに慌てる。

 

【このエピソードについて】

 さて、第1シリーズ前半で最も楽しみにしていたエピソードがやってきました。マイク・マクドゥーガルが自身のHPで、テストアニメーションと第30話『Calliope Crack-Up』と一緒にこの回の絵コンテを、AEG放送に先駆けて投稿してしまったプロ意識の低さは残念でしたが、それ以上に、第1話からライバルであり友である部分を全面的に見せてきたトーマスとディーゼルが協力をするというプロットにはとても興味を惹かれました。

 

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©︎Mattel

 最初に興味深いのは、今回のプロットが『ディーゼル10の逆襲』の序盤でトーマスがベルと仲良くしていることに嫉妬するパーシーのプロットから見事に立場が逆転していることです。先ほどまで一緒にアイスパイ(物当て推理ゲーム)で遊んでいたパーシーが唐突にニアと楽しそうにしだし、代わりに一緒に組むことになったディーゼルの助言を無視してトーマスが親友のパーシーに追いつこうと必死になります。ここでは、トーマスがディーゼルに対して人種差別的な偏見を持つことはありません。確かに彼はディーゼルの発言を無視します。でも、それはただ親友と一緒に楽しみながらチームを組みたいだけなのです。嫉妬的なねちっこい執着もないです。

 

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©︎Mattel

 先ほども述べたように、ディーゼルがトーマスと積極的に協力しようとするコンセプトだけでも非常に興味深いです。

最も、AEGのディーゼルは、従来のディーゼルの性格とは大幅に異なり、仲間にわざとぶつけて意地悪をしたり、平気で嘘をついたり、蒸気機関車を貶めようとする意図などは全て無くなっています。AEGのディーゼルは、意地悪をするにしてもナンバーワンを目指すゲームで勝ちたい時だけで、基本的には負けず嫌いで自分の都合で誤魔化したりゲームを邪魔することはあるものの、役に立つために最善を考えられる現実的な性格です。(※一応後者はCG期のディーゼルの側面とも一致しているんですよね)。

とはいえ、これを従来のディーゼルに置き換えても面白い展開になると私は思います。頑なにディーゼルを初期のような敵役にしたい人は「うげ〜」となるかもしれませんが、CG期のディーゼルは素直になれないだけで、トーマスを気にする、あるいは信用しているかのような描写が存在したので、AEGだからこそではなく例えオリジナルでも私にとって興味深いです。

 でもこれはAEGの回ですので話を戻します。

そんなフレネミー的な立場のディーゼルと、わんぱくすぎて話を聞かないトーマスの相互作用はかなり面白かったです。序盤こそディーゼルが視界に入らないものの、お互いに認知してチームワークを実感しながら楽しむ様子はほっこりします。それにしても、キャラがブレてる訳ではないと思うのですが、キャラクター紹介にあるようにディーゼルがナンバーワンの座を奪おうとしてみんなに迷惑をかけるみたいなの第1話以降ずっと見てないのが少し気になります。迷惑かけてるの大体トーマスっていうね。

また、トーマスがパーシーに執着する一方で、ディーゼルはお互いを良くしようとしているので、泥にハマったコテージを救うためにお互いに押し合ったり引っ張りあったりうまく連携が取れていない場面では、どこからともなく湧いてきたような感じがします。執着する以外にも、それまでのお互いのチームワークの悪さを露呈していたら、その場面から解決する場面では、より強いものになったのではないかと思います。

 

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©︎Mattel

 物語では「ゲームは親友だけでなくすべての友達と楽しむことができる」「親友は一人以上いてもいい」というメッセージを伝えています。これは子供達だけでなく、現代社会で友好関係に悩む全年齢に共通する道徳です。汎用性の高い"チームワーク"に関する部分はサブプロットとなっているのがまた面白いところですね。これらが私のレビューで評価が高い理由の一つです。

挿入歌「A Partner on the Rails」もキャッチーに道徳を伝える役割があり、メロディも歌詞もかなり良いです。良い友達はどこからともなくやってくるものです。この物語のように。

 

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©︎Mattel

 少し下品な描写があるので注意です。トーマスが猛スピードで山々を渡るのと、スカンクの放屁でディーゼルが気持ち悪くなって吐きそうになるだけの古典的なギャグシーンではありますが、後のことを考えるともっといい方法があったのではと思います。これを笑える人はとても楽しめるでしょう。私には、うーん。

ところでなんで英国の離島が舞台なのにスカンクがいるんでしょうね。まあ他にも交差点の踏切だったり、砂漠があったり、車掌車が全てカブースだったり、ギャグの導入のためとはいえアニメ制作陣的には自国のものばかりでソドー島を描写しているわけですが、そうする前に事前に調べることも適わなかったのでしょうか。

 

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©︎Mattel

 最後の場面ではパーシーが今更気が付いて、『ディーゼル10の逆襲』の時と同じようなぶり返しをしていますが、まあ、すぐに和解するので別のコンテンツとして大目に見ることができます。アイスパイで始まってアイスパイで終わる、ほっこりするお話でした。

 

 

【チェックポイント】

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©︎Mattel

 劇中の描写はともかく、コテージをそのまんま貨車で運ぶこと自体を非現実的で馬鹿げていると思うファンもいるようですが、アメリカ等では、取り壊しの手間や資金を省くため、可能な限り一軒家や歴史的建造物を別の土地に移動させる手段でおよそ300年前から馬や牛、19世紀には蒸気機関車の貨物列車を使うのは古典的な方法として実現されています(リンク)(リンク2)。現代では油圧ジャッキと幅広の車、艀での移動が一般的なので、鉄道は非効率的ですが、必ずしも非現実的な方法ではなかったことに驚いています。

 

 第24シリーズに出てきた真新しい仲間ケンジも、このエピソードで登場しています。同じく日本出身のカナとコテージを運ぶパートナーとしての役割で、ほぼ脇役ですが、今のところAEGの短編では唯一の出番です。カナがケンジとしっかり連携が取れているのを見るに、長編『めざせ! 夢のチャンピオンカップ』より後の時系列なのかな。

 

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©︎Mattel

 ここまであまりニアに焦点が当てられませんでしたが、ようやく彼女の性格が生きました。彼女の楽しみ方と価値観にはパーシーと同じように安心感を覚えられます。パーシーとニアのペアもまた興味深いと感じさせられるものでした。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

遊び心:☆☆☆

キャラクター:☆☆

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆☆

独創性:☆☆☆

道徳:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 キャラクターアークも、遊び心のあるテンポも、歌も、全年齢に共通する道徳も良くて、心から賞賛しています。予想通りここまでで最も好きなエピソードの一つとなりました。

AEGから使われるようになった"Locamigo"*1や"Bestie"*2などの他の番組で使い古された単語を取り入れるのはいささか時代遅れに見えるのですが、物語は全年齢が楽しめると思いますし、無関係なアクションで道徳が薄れることも無い、良作でした。

 

総合評価: 9/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てMattel, Inc.に帰属します。

*1:機関車を意味するLocomotiveとスペイン語で友達を意味するAmigoを掛けた造語。

*2:Best Friendの略。