※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S1 E18 『Mystery Boxcars』『ミステリー プレゼント』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: フィル・モロイ
内容: 電力不足が続いて動揺するカナは、スカベンジャーハントで元気を取り戻す。
【このエピソードについて】
謎かけを頼りに特別な賞を探したり問題解決するエピソードといえば、何を思い浮かべますか。このようなコンセプトの作品は未就学児向け作品には一般的なもので、トーマスシリーズにも過去に何度かあります。カインドリー夫人の娘の結婚式に贈るサムシング・フォーを探すいかにも英国らしいお話の第5シリーズ『めでたしめでたし』、ソルティーの話から得たヒントを頼りに宝のありかを探す第10シリーズ『かいぞくのたからもの』、シドニーが思い出せない部品の用途を探る第22シリーズ『ぶひんのなぞをさぐれ』など。
長編では『魔法の線路』で魔法の粉の在処を探すときや、『ブルーマウンテンの謎』でルークが無実であることを証明するといった描写もありましたね。
今回のエピソードは上述の3つのエピソードに類似しています。貨車の中身の部品の謎を探るといえば第22シリーズの話が頭によぎるのですが、極端な話が、『めでたしめでたし』でパーシーがサムシング・フォーを探すのを、カナがスカベンジャーハントするのに置き換えるとこの物語のようになります。しかし、ここには大きな違いがあり、この謎を探るコンセプトの中でもかなり面白かったと私は思います。AEG贔屓かよと怒る前に説明させてください。
それはあるキャラクターの適切な出番が大きなポイントでした。
カナの主役回ではありますが、今回のMVPは間違いなくゴードンだと私は思います。5台のちびっこ機関車が各々活躍するのが大前提であるAEGシリーズのメインキャラクターの中でも、大人の扱いである為、ちびっこたちに仕事を与える、注意をする、教訓を与える役割を除けばほとんど脇役同然の彼。そんなゴードンがここで初めて大きな役割を得ました。
それは、電力不足のカナを元気づけるために、彼女に楽しんでもらう謎かけとご褒美を企画・用意することでした。良い大人の代表例というだけでなく、長年の経験と力を活かして小さな機関車を問題から助けるクラシック期での彼の性格を連想させてくれました。そしてそれは私や多くのファンが求めていたゴードンの姿です。CG後期は特に性格を戻しすぎて不機嫌な役割での登場が多かったもん。貨車を置いた各所でカナ達を陰でそっと見守っているのも含めてとても良かったです。
上述のように謎かけの送り主は視聴者目線ではわかっていますが、"サムシング・フォー"の文化を知っていれば何を意味するかわかる『めでたしめでたし』や、前提条件があからさますぎる『ぶひんのなぞをさぐれ』と異なり、ゴール地点で組み立てるまでカナに贈られたものがなんなのか謎めいているので物語に引き込まれることができ、面白かったです。ちびっこ機関車たちが貨車の模様とタグのヒントから答えを導き出すのもテンポが良く、次にどこに行くのか考えるのが物語の楽しみの一つとなっているのです。
『Kana Goes Slow』でカナがヴィカーズタウンまで客車を牽いているのが日常の光景だとすると、ヴィカーズタウンに辿り着く前、あるいはそこから往復して帰るまでにカナの電池が切れてしまうのは少し疑問なのですが…。毎回途中で休憩に充電しているのかな。
また、タイトルにあるようにAEGの有蓋貨車は英米問わずVanではなくBoxcarとされています。初回のレビューで言及しましたが、鉄道用語は今日全て皮肉にもUS版吹き替え*1に置き換えられています。従来のシリーズ以上にアメリカナイズが加速化しているだけでなく、いたずら貨車の表記がUS版でもTroublesome Trucksのままに対して総称として"Boxcar"と呼ばれるなど、このエピソードに関わらず言語設定が不安定で、どうにかならないものかなーとモヤモヤしています。
とはいえ、英国としての魅力がほぼアメリカナイズにされているにもかかわらず、思い出に残る物語を作ることができないというわけではないと、この回を観て思いました。
【チェックポイント】
カナに気遣うトーマス優しいね。
全体的な面白さ:☆☆☆
遊び心:PERFECT
キャラクター:☆☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆
独創性:☆
道徳:☆☆☆
【最終的な感想】
従来から類似したコンセプトが多いと批判しましたが、これはそれを利用してさらに面白くさせていたので良かったです。加えて子供達がモノづくりやモノの仕組みを理解するヒントを得られるきっかけになるかもしれません。
総合評価: 8/10