※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S1 E43 『A Rusty Rescue』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: ニキ・リットン
内容: ディーゼルが愛用していた缶をゴミだと思って捨ててしまったトーマスは、他人の物に触れない方がいいことを学ぶ。
【このエピソードについて】
さて今回は『A Rusty Rescue』のレビューをします。
Rusty Railspikes! What the… "RUSTY"!? ARE YOU IN THERE!?
ええ、ラスティーは出ます。空っぽのオイル缶の名前ですが。
狭軌ディーゼル機関車のラスティーを連想された方は多いと思います。私はキャラクターではなく錆関連の何かだと思っていたので、予想は当たりでした。
ここで空き缶にラスティーと名付けたということは、スカーロイ鉄道のキャラクターが今後出てくる可能性が減ったということでしょうか。
それはさておき、今回の物語は「人のものを勝手に捨ててはならない」教訓です。冒頭からしばらくはトーマスの車輪から発するあまり聞いていたくないようなキーキー音を聞かなければいけないことを除けば、土台はしっかりしています。
ディーゼルの部屋からオイル缶を借りようとしたことがきっかけで、彼には内緒で、善意で部屋に散らかったガラクタ類を破棄してしまいます。それが余計なお世話であり、間違ったことだと学ぶまでの話です。この物語のトーマスはとんでもなく無神経で擁護のしようがないのですが、「ディーゼル機関車のことはよくわからないけど」の理由づけや、動機がまた悪意がないところが妙にリアルで…(笑)
ディーゼルが否定的な反応を示したときにはまずいと悟り、"ラスティー"を取り戻すと約束しますが、バルストロードに乗ってまで缶を見つけるも、トーマスには錆びた缶の区別なんてつくはずもなく。
カーリーとサンディーが一度引き気味に確認を取るところが好きです。悪意のないトーマスには通じませんでしたが…。
小学一年生の頃、筆箱の中に入れていた私のお気に入りの紙(貰い物)を、同級生から「ゴミはゴミ箱へ」と勝手に棄てられたことを思い出しました。紙はその後戻ってくることはありませんでした。高校三年生の時は、恋人にトーマスの玩具をいくつか破棄されたこともありました。恋人とはその後別れました。
自分には良さがわからなくて不要だと思っても、相手のプライバシーに土足で踏み込んで勝手に手を出さないでください。残されてあるということは、単にほったらかしにしているだけでなく、その人にとっては大切な宝物である可能性も考えられるからです。溜め込みすぎるのも良いことではありませんが、勝手に棄てられた側は、当然、悲しい気持ちになります。
ディーゼルにとっての宝物が、他人から見れば汚くて何の価値もないガラクタの缶っていうのが表現方法としても、鉄道キャラクターの価値観としても良かったです。
挿入歌「My Rusty Can」が好きで、現在も耳に残り続けています。どんなに汚くて他人には価値がわからなくても、自分にとっては宝物なんだという歌です。曲調はフォーク・ラグで、子供の声でありながらも雰囲気は大人っぽい渋さと、ディーゼルの少し自虐的なニュアンスが癖になります。Bum Bum Bum Bum♪
正直『パーシーのラッキーベル』よりも、終わりが気持ち良かったです。ディーゼルはパーシーよりも割り切ることができるようで、しばらく経って無理だとわかったら、「"ラスティー"が恋しい」と思いを吐露しながらも、トーマスが頑張って探してくれたことを認めています。私もこれくらい諦めがつけたらいいなあ。
最終的にサンディーが有能だったことも含めて終わりが気持ちいいです。彼女は「人のものを勝手に捨ててはいけない」ことをトーマスに忠告した一台でした。この部分の性格は、ショートアニメ『かたづけサンディー』でも描かれている通り、ものを大事にするサンディーならではの価値観とも言えます。
【チェックポイント】
他の物語でも言及がありますが、AEGのディーゼルは、蒸気機関車のことを「Steamie」と呼ばず、「Chimney Head」(煙突頭)と呼ぶようになりました。個人的に「Steamie」呼び嫌いだったので少し安心しています。
私の部屋も大体こんな感じです(笑)
今更だけど、ショモイ・ジェームズ・ミッチェル演じるディーゼルの「あ"あ"あ"ぁ(Argh...)」という残念そうにしがれたため息が堪らなく好きです。
全体的な面白さ:☆☆☆
遊び心:☆☆
キャラクター:PERFECT
BGMの良さ:☆☆☆
アニメーション:☆☆
独創性:☆☆
道徳:GREAT
【最終的な感想】
未就学児向け番組ではかなりありきたりな教訓ですし、機関車が学ぶ必要がない教訓の一つに放り込まれるかもしれません。しかし、工夫次第では従来のシリーズで適応できるのではないかと思いますし、心に残ったのでこの点数になります。挿入歌も素晴らしかったです。
ニキ・リットンの脚本は、子供が考えていることと、物語の前提を結びつけるのがとても上手で印象に残ります。
総合評価: 9/10