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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

Thomas & Friends: All Engines Go 第3シリーズ第18話レビュー

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

AEG S3 E18 『Bruno's Blustery Day』

監督: キャンベル・ブライアー

脚本: ダニエル・シェアストロム

内容: 大大大冒険クラブの仲間たちは、風の強すぎる日に団結し合う方法を学ぶ。

 

【このエピソードについて】

 ついに今期のブルーノのエピソードが来ました! このエピソードは、放送されるよりもずっと前に、脚本家のダニエル・シェア=ストロムが、All Engines Go wikiaの掲示板にて(もちろん内容は伏せていますが)執筆を担当したことを書き込みで報告しており、そのコメントを見た時からずっと楽しみにしていました。

 私はダニエル氏を信用し、とても尊敬しています。彼の脚本は私の中ではほぼ完璧で、彼がブルーノ制作の功労者の1人であるためです。彼もまた自閉症の当事者であり、他の脚本家(同じく自閉症のモニーク・モロウなど)や、慈善団体等と共に、ここまでブルーノを完璧に人間くさく、かつ愛嬌のある自閉症キャラクターとして丁寧に描いています。これらの配慮と理に適ったキャラクター設定から、初登場以来、私はブルーノをウィフと同じくらい本気で愛しています。

そして、その出来によってはレビューの投稿が遅くなるかもしれません。好きな作品ほど語彙に困るものでして…。

 

©︎Mattel

 はい、そうですね。このエピソードを一言で言い表すと最高です。もう、大好き。ゆえにレビューの投稿が、かなり遅くなりました。

 

 サブタイトルの「bluestery」は、「風が"激しく"吹く」や、荒れ狂う様子を意味します。今回のエピソードでは風の強い日で展開されますのでもちろん前者の意味になりますが、ブルーノの心の中のストレスという名の嵐も入れたダブルミーニングになっています。

というのも、風の強い日の中で助け合うだけの話ではなくて、エピソードの後半部分でブルーノがこの風の強さに対して強いストレスを覚えていることが判明します。(後から理由が判明するストーリー性も好きなところですがひとまず置いといて…)。よく聞くと、「I'm fine」というブルーノの台詞が震えているんですよ。子役声優も良い仕事をしています。

 当事者から言わせてもらうと、今回のブルーノみたいに、自閉症持ちの人ほどストレスを覚えながら他の行動に移すことや助けを求めることというのは全くもって簡単なことではないんですよね。特にこれらは非常に苦労する事柄の一例です。それでもやらなきゃいけないのはわかっていても、実は簡単に動けません。私自身、何度も経験した苦労です。

だからこそ、その特徴自体が丁寧に描かれていたことでディーゼルを助け出す際のブルーノの葛藤に意味を強く持たせているのが素晴らしいんです。『クリスマスマウンテン』のレビューでも言ったように、未就学児向け番組で自閉症のキャラクターを的確かつポジティブに描くことで、番組を見る同じ問題を抱えた当事者の子どもたちにとっては「この子は自分と同じ」と感じさせ、さらに活躍することでヒーローとして目に映ります。「自分もブルーノみたいになりたい」と思わせることができるかもしれませんし、当事者ではない子は(その後の親の教育次第ではありますが)「こういう子もいるんだ」「手助けするにはこうしよう」と理解することにつながる可能性があります。

 

©︎Mattel

 私が特に気にっているのは、まず、脚本家ダニエル氏の実体験に基づいた話というところです。まあこういうのは積極的にファンと交流する脚本家からでないと知ることができない事実なわけですが、話に(鉄道的な意味ではなく)現実味が生じたり、助けを求める苦闘の表現にとても親近感を覚えます。是非ともダニエル氏のバックストーリーも読んでください。

 助けを求めるといえば、自分にとっては大丈夫じゃないのに反射的に「大丈夫」と遠慮してしまう様子が、日本人の(主に自閉症)だけでなく、カナダ、強いては万国共通だったことには驚きました。偶然にも、こっちのけんと氏が今年発表した、生きにくい人たちと自分自身のために心のSOSを主張する重要性を示唆した楽曲「はいよろこんで」が、国内のみならず国外でも高い評価を得ている理由に納得したような気がします。(この曲、もとい、こっちのけんと氏の楽曲マジで愛してます)。

奇しくも、このエピソードも「SOSを出す重要性」を説いているんです。誰でも助けが必要だし助けを求めていい。見た目ではわかりにくい発達障害うつ病を抱えている人が最も気付きにくく、何なら一度疑いたくなるような、良い教訓です。

 

©︎Mattel

 元々の脚本では、相棒のディーゼルだけがブルーノのストレスにすぐ気づいて、ブルーノだけがディーゼルのブレーキ故障を知っているという筋書きだった模様で、完成品ではディーゼルだけでなく全員が気付き、ディーゼルのブレーキ故障は突然発生しました。このように、絵コンテで脚本が大幅に変更することもあるので、もしかしたら、AEGの完成品でありがちな穴埋めの演出だらけだったり、問題ないはずの物事を問題があるように見せて引き伸ばすシナリオ自体は、脚本家のせいではない可能性が出てきましたね。

 最初に観た時は、元の脚本の方がエモいじゃないかと思って、本編の評価を下げようとしましたが、考えてみれば、番組の主人公たちが自閉症の友達のストレスを当たり前のように気づいたり当たり前のように手を差し伸べるといった描写は当事者にとっての配慮になっているんじゃないかと思い始めました。仮に制作者の意図がそうではなくても、そう捉えるに十分な理由と利点を持っています。映画『大冒険! ルックアウトマウンテンとひみつのトンネル』でも同じことを考えました。

 

©︎Mattel

 物語後半の、仲間の手助けで自らのコンフォートゾーンから抜け出してからのブルーノの活躍は、本当に見事でした。たとえ暴走した仲間を急ブレーキで救出しようとする話を前回のエピソードどころか番組上で何度やっていたとしても、もう何度目かもわからないクランブルの谷のボルダーに追いかけられたとしても、上述の葛藤が物語のメッセージに目的を加え、他の穴埋めだらけのエピソードと違ってこれがまたうまく機能していました。初めて観た時は気にならなかったし、エピソードに対する興味が失せることもありませんでした。

 それどころか、強い風と、坂を駆け降りる自身の速さと、クランブルの谷を通るストレスを抑えるためにブルーノは歌を口ずさむんですよね。それがAEG S2『ブレーキしゃのブルーノ』の挿入歌「You Can't Stop Me」なんですディーゼルもコーラスに加わり、『ブレーキしゃのブルーノ』との関連性とディーゼルとの友情を強く感じさせますいやオタクこういうのに弱いよね(笑)

一見冗長に見える演出でも、自分自身に歌うこともストレスを抑えるためのいい方法なんですよね。私もよくそうして気持ちを落ち着かせてます。

 

©︎Mattel

 ダニエル氏が最初に報告した時から、てっきりディーゼルとブルーノの主役回だと思っていたので、私が考えていた以上に大大大冒険クラブの(カーリーとサンディーを除く)話で驚きましたが、仲間たちの心遣い、ブルーノの苦労に対する葛藤と活躍、ディーゼルとの友情を含めた物語のメッセージ性と全体が、私の心に見事にクリーンヒットしました。ブルーノの成長もよかったですし、これ以上に何を言えばいいかわからないくらい完璧な作品に心が満足しています。ダニエル氏が執筆の後に涙した理由もよくわかります。

 いつものように言葉の文を理解するのに苦戦したり、最後にブルーノが「3日ほど休ませて」というのも、行動を移すことに膨大なエネルギーを浪費することを我が身で経験しているので最初から最後まで共感の連続でした。

 

 

【チェックポイント】

©︎Mattel

 冒頭に風に吹かれて吹っ飛んでるトビーは何なんだw

 

©︎Mattel

 ブルーノの車庫が初めて登場しました。外観自体はAEG S1『ひみつのスパイ ナンバー・ワン』から出ていたのですが、これがまさかのブルーノの車庫。

内装には、ブルーノの大好きな地図が貼られていて、その奥には整備士さんとの写真や、ゴードンとディーゼルと一緒にうつった写真が飾られています。天井には夜中も明るく照らしてくれそうなミラーボール。

それから、壁にたくさん張り付いているハニカム状の物は、ダニエル氏によると、外の騒音を和らげるための吸音材の役割を果たしているそうです。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

遊び心:☆☆☆

キャラクター:GREAT

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆

独創性:☆☆☆

道徳:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 当事者の私にとって非常に共感するお話で、自閉症の人には難しいであろう課題の一つ、友達を助けるために仲間の気遣いで作ってくれたコンフォートゾーンから抜け出すというドラマチックな展開を非常に気に入っています。穴埋め演出だらけの陳腐な作風が羅列する今期中で最も記憶に残り、最もメッセージ性に富み、最も私が愛している作品となりました。ブルーノのヒーロー像を、ファンとして誇りに思います。

 

総合評価: 10/10

 

【AEG第3シリーズ総合評価】

1 What's the Buzz? 6/10

2 Bells are Ringing 5/10

3 Abraca-Diesel 5/10

4 Overcommitted 5/10

5 Sandy's Fine Mess 6/10

6 Nia's Green Surprise 8/10

7 Duck Duck Whoosh! 6/10

8 Choo Choo Check In 4/10

9 Percy's Little Problem 2/10

10 Fill-in Friend 7/10

11 Cake It Easy 2/10

12 The Can-Do Crew 7/10

13 Pizza Picnic Problem 5/10

14 Travels With Terence 3/10

15 Crab Crossing 5/10

16 Driving Winston 8/10

17 The Slowest Race in the World 3/10

18 Bruno's Blustery Day 10/10

 

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てMattel, Inc.に帰属します。