※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S3 E19 『Night Lights』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: アンディ・ヤーキズ
内容: トーマスとニアのライト遊びが、暗闇のジェームスを救う。
【このエピソードについて】
AEGのジェームスといえば、第1シリーズの早い段階から喋る脇役キャラクターで、初期の方は例えるなら挨拶botとしてのみの出番で、エピソードを重ねるごとに徐々にセリフの数と出番が増えていきました。脇役キャラクターの中ではちょくちょく出番がある一方、大半は不憫な役割かヤジを飛ばすくらいで、大大大冒険クラブやゴードンといったメインキャストほど出番もなければ、ショートアニメ『ジェームスとドラゴン』を除けば、本編中に準主役として出たことはこれまで一度も無いんですよね。
今回のあらすじにジェームスの名がありますが、どうなるでしょうか。
さて、今期はメインキャスト主役回だらけなので信じられないかもしれませんが、思っていた以上にジェームス回でした。ブルーノを除き、大大大冒険クラブ以外のキャラクターに焦点が当てられたエピソードを観るのはいつもワクワクします。別に大大大冒険クラブが嫌いという話ではなくて、今期中あまりに多すぎて、それも成長がリセットされる反復的な物も相まって見飽きているだけです。
AEGのジェームスは一見掴みどころがないようで、実はこれまでも、従来同様にうぬぼれやで、気が短くて、すぐに腹を立てるキャラクターとして成り立っていて、そこにちびっ子たちの遊びに加担する茶目っ気が追加されています。今回はその要素が特に際立って描写され、かつ本来の性格とAEGでの性格がバランスよく両立していて、今回のジェームスは眺めているだけでも本当に面白いです。
物語はフルタイムでジェームスの主役回というわけでもなく、実際にはトーマスとニアが主役です。ありがたいことに(飽きさせない方法として)それぞれに視点が切り替わるので、ジェームスの方も主役と言えます。
そうですね、トーマスとニアの場面では、あえて口を酸っぱくして言えば、序盤は毒にも薬にもならない、いつものAEGっぽい、意味のない見栄え重視の遊び心で展開されます。特に、まだ真っ昼間だというのにデスクライトを点灯してがっかりする様は、子どもらしいというよりもバカの極みです。ただ、これに対してのジェームスの反応(愚か者を容認できない感じ)は、ジェームスの性格的にも、視聴者側からしても、行った意味があると思います。今回だけでなく、時々彼らの行動は我慢できない場合がありますんでね…(苦笑)
挿入歌「When the Night Comes on」は、トーマスとニアが夜のライト遊びを楽しむノリノリな曲ですが、これといった意味はないので、個人的には曲を忘れがちです。ジェームスに何かを学ばせるような曲だったら後の展開的にも良かったのに。
とはいえ、私が低評価する点があるといえばそこだけで、物語全体は面白い物でした。ジェームスが新しいランプをつけずに暗闇を彷徨うのは、オリジナル第14シリーズ『くらやみとジェームス』と全く一緒で、ヘッドランプが切れた状態で線路の上の石に乗り上げるのは、第18シリーズ『ゲイターとトード』と同じ展開ですが、少なくとも前者よりはずっと面白いです。説明いらずでジェームスもコミカルに動きますし、性格を重視した展開なのも良いところです。大人も失敗するし、その度に学びます。
一見すると夜道の明かりの重要性が物語のメッセージのように見えますが、今回のトーマスとニアの遊び心や、冒頭のゴードンのように心に余裕を持つことが、本作の重視されたメッセージなのだろうと私は考えています。イライラしている時ほど、いろんなことを見逃しますし、事故を起こすことにつながるリスクも増加します。
AEGのジェームスについて私が本当に好きなところは、このエピソードのエンディングに詰め込まれています。あれだけイライラしていたデスクライト遊びも、結果的にはトーマスとニアが見ていないところで心から楽しんでいるし、遊びと手伝いに疲れて眠った2台を機関庫へ送るのを忘れないことです。ここの場面だけでも十分な価値があると思います。トーマスたちと関わる大人キャラクターとしての登場の面では100点満点です。
【チェックポイント】
AEGの中でゴードンとジェームスが並ぶ場面はいくつかあったのですが、実はこの2台が会話するのは今回が初めてなんですよね。
AEG初期の頃は、ゴードンも愚か者を容認できず、ジェームスはちびっこたちと同じように遊んでいることが多かったのですが、『ぎゃくにするひ』を境に、ゴードンは子どもたちに対する態度を改めて成長したようですね。特に仕事のスキルを鍛えることにつながれば、遊び心も赦していますね。
全体的な面白さ:☆☆☆
遊び心:☆☆☆
キャラクター:☆☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆
独創性:☆
道徳:☆☆☆
【最終的な感想】
話のまとまり具合で言えばオリジナル第18シリーズ『ゲイターとトード』の方が好きで、もし仮に従来のシリーズで行えば「普通」の感想が真っ先に出てくるとは思いますが、AEGのジェームスの話としての意味と価値のある、良いエピソードでした。私はこの回のジェームスが本当に大好きですし、癒されます。可能ならもっと出てきてほしいですし、伊藤健人さんの声で聞くのもとっても待ち遠しいです。
第3シリーズにして大半の脚本家が大大大冒険クラブのメンバーのみに焦点を当て、半ばネタ切れに近いエピソードで羅列するくらいなら、今回、もとい従来の番組同様に、サブキャラクターに焦点を当てたエピソードを作るべきだと思います。AEG第2シリーズではきちんとそれができていたのに。せっかく"All Engines" Goなのだから。
総合評価: 9/10
【AEG第3シリーズ総合評価】
1 What's the Buzz? 6/10
2 Bells are Ringing 5/10
3 Abraca-Diesel 5/10
4 Overcommitted 5/10
5 Sandy's Fine Mess 6/10
6 Nia's Green Surprise 8/10
7 Duck Duck Whoosh! 6/10
8 Choo Choo Check In 4/10
9 Percy's Little Problem 2/10
10 Fill-in Friend 7/10
11 Cake It Easy 2/10
12 The Can-Do Crew 7/10
13 Pizza Picnic Problem 5/10
14 Travels With Terence 3/10
15 Crab Crossing 5/10
16 Driving Winston 8/10
17 The Slowest Race in the World 3/10
18 Bruno's Blustery Day 10/10
19 Night Lights 9/10