Z-KEN's Waste Dump

喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

第22シリーズ以降における大改革など纏め

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 第22シリーズの英国での放送まであと一週間を切りましたので、そろそろ昨年10月14日にパリで行われたMIPJuniorでのスクリーニング・イベントにて明らかになった事等を超遅れ馳せながら投稿させて戴きます。(笑)

第22シリーズからは作中の男女比(ジェンダー)の調整を中心的に、CGシリーズ移行以来過去最大のリブートを施すことをマテル・クリエイションズの『Thomas & Friends』制作チーム代表が大々的に発表しました。トーマス作品全体の権利を所有する米国の大手玩具会社マテルは国連との協力を得て、今後は質の高い教育、ジェンダーの平等、持続可能な都市とコミュニティ、責任ある消費と生産、そして陸地生活の、5つの特徴を目標にストーリーラインを設計していく模様です。

 

 第22シリーズ(以下S22)は今年9月3日に英国をはじめとする150か所以上の地域で放送開始予定で、全26話のうち半分が夏に公開された長編(映画)『Big World! Big Adventures!』(以下BWBA)の内容に基づき映画で冒険しきれなかった世界を冒険し、各国の様々な文化と教訓を学ぶエピソードで構成され残りはソドー島とティッドマス機関庫を拠点に新しくなったスティームチーム(後述参照)が活躍を繰り広げる予定とのこと。

 

 ここからは新たに追加される要素や変更点等を補足を添えて纏めました。

変更内容に対する私情を込めた自分の考えや感想等につきましてはTwitterで散々垂れ流しましたので今回は省きます。

 

 【新キャラクター】

 今回の発表でピックアップされた2台の女性蒸気機関車についての判明している説明とモデル機についてのさわりだけ紹介します。

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・ニア (Nia)

 長編14作『BWBA』から登場。トーマスがアフリカで出逢ったケニア出身のタンク機関車。冒険好きな楽しい性格の持ち主の女の子。助ける事の熱意は時に誰かを苛立たせてしまう事もあるが、彼女の友情はいつだって本物。車体番号は「18」。

友達になったトーマスにソドー島へ招待されノース・ウェスタン鉄道に入線。以後S22からスティームチームのメンバーの一員としてティッドマス機関庫に入庫する。

  

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レベッカ (Rebecca)

 S22から登場。トップハム・ハット卿に呼ばれて本土のイングランドからやってきた、黄色いボディが鮮やかな、女の子の大型流線型テンダー機関車。まだ若く、自分の大きさや速度を過小評価する傾向があるが、自分自身のために立ち上がることを恐れず、古い機関車の動向に怖気づくことは無い。車体番号は「22」。炭水車には「N.W.R」の文字が描かれている。

ソドー島に来島後、スティームチームの一員としてティッドマス機関庫に入庫する。

 

 

 これら2台の新しい女性機関車は番組のジェンダーバランスを整えるため第22シリーズの全エピソード*1に登場するようです。他にも中国回でホンメイという名の女性機関車や、オーストラリア回では飛行機の女性キャラが、インド回ではシリーズ初の女性鉄道局長(重役)キャラなどが出演。女児層視聴率の拡大を図り、最終的には作中の男女比が50:50に近くなるように多数の女性キャラクターを登場させる方針であると語られました。

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これまでこの作品は原作『汽車のえほん』を含めて過去に女性差別階級差別独裁主義人種差別や反環境保護主義などと批判されているので、その配慮であると思われます。例えば2013年末には英国労働党のメアリー=クレア(Mary Creagh)氏が「トーマスは否定的な固定観念を永続させている」と訴え、女性の鉄道員を奨励する為より多くの女性機関車キャラクターが必要と豪語した件が記憶に新しいですね。

(本来、女性機関士(乗組員)や女性労働を増やすという話だったはずですが)。

 

 また、ニアの導入は移民に関しての積極的なメッセージでもあるとのことです。

 ニアのデザインのコンサルタントは国連アフリカ部門のToluope Lewis-Tamoka氏が務めました。彼女は次のように述べています。「アフリカの機関車は重要です。我々は物語を変え、アフリカの女の子には男の子と同じような能力や技術、潜在能力があり、子供も大人も積極的にリーダーシップを担う事もできるように、異なる大陸や国々の多様性を示す必要があります」(引用元)

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 また、原作者ウィルバート・オードリー牧師の孫娘クレア・チャンバースはこうしたフランチャイズの変更を歓迎していると言います。「ジェンダーバランスのとれたスティームチームを、より多くの女の子に興味を持ち続けられるよう勧めていくのなら、それは良い事にしかならないだろう」と彼女は語った。(引用元)

 

 もちろん、BWBAやS22で新たに登場する新しいキャラクターは女性だけではありません。『BWBA』ではボーというグランド・キャニオンの鉱山で働く男性蒸気機関車と出逢います。短編ではインドのディーゼル機関車シャンカルなど、ディーゼル機関車、客車、貨車共にさまざまな男性キャラクターも従来通り新登場します。また、確証はないのですがこちらの動画(S22の第1回)では男のような顔立ちをした緑色のディーゼル機関車(?)が横切っていくシーンも確認できます。

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【新しくなったスティームチーム】

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  スティームチームとは第8シリーズから規定付けられた作品の象徴的存在、または代表となる7~8台の蒸気機関車のメインキャラクターで構成されたグループを指します。OP及びED曲の「きかんしゃトーマスのテーマ2」の歌詞に出てくるキャラクター(トーマス、エドワード、ヘンリー、ゴードン、ジェームス、パーシー、トビー、エミリーの8台)がそれです。

長らくその8台で定められていましたが、S22からは上記で紹介した女性のニアとレベッカが新たに加わります代わりに男性のエドワードとヘンリーは立場を譲ることになりますが、これによって番組上の男女比の不均衡を解決します。

シニアプロデューサーのイアン=マキューはニアとレベッカに主演の役を与えたかったと話します。「私たちは以前にも新しい女性キャラクターを加えたことがありますが、トーマスのような番組では導入時の紹介の後バックグラウンドに埋もれていく傾向があると思います。ここで本当にやりたかったことはこの2台の女性キャラクターを最前線に導くことでした」(引用元)

 

 なお、エドワードヘンリーにつきましては、代表としてのピックアップは無いものの、レギュラーという位置づけに変わりはなくこれまで通り物語に度々登場するとのことです。この際トビーについては何も触れられていませんが、プロモや新OPに姿を見せていない事から恐らく同様の役回りであると考えられます。(なお、新EDではスティームチームのままでいる事を示唆する歌詞があります)。

番組から消えるわけではありません。

単純に寝床(機関庫)が変わるだけですのでご安心を

 

【新しいオープニングテーマ】

 番組の題名が『Thomas & Friends』改め『Thomas & Friends: Big World! Big Adventures!』に変更したことにより、オープニングテーマも新しくなります。マキュー氏はテーマ曲を変えることで一部のファンが不満を募る可能性があると認めた上で明かしました。

楽曲は前作の挿入歌として発表された「Set Friendship in Motion」をBWBAのテーマ用に編曲した物になりました。子供たちの"ジェームス! パーシー! ニア! ゴードン! レベッカ! エミリー! トーマス ナンバーワン!"の掛け声の後に、南アフリカの歌手Bobby-Van-Jaarsveld氏の"Let's go, go, go!"というボーカルが入る特徴的な歌です。

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 なお、前作のオープニングテーマ「Engine Roll Call」は、エドワードとヘンリーをニアとレベッカに歌詞を変えたエンディングや、劇中にアレンジした曲を流す事が明らかになっています。

 

 

【TGRキャラクター再出演】

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  元々は『TGR』でのみ登場の一発やキャラクターであったアシマを始めとする12台の国際機関車達が再び登場します。『TGR』が本国で上映される前に「ソドー島に文化的多様性を取り入れる政治的願望を意図している」という批評家の主張や、キャラクターが増えすぎて怒る親御さんへ向け、マキュー氏は政治的利用ではない事と同時に映画の為だけに作った一発屋であることを明かしていました。

当時はこうした上記の意図は無かったようですが、今回からの作品のテーマに併せて、今後のシリーズにも登場するチャンスを与えられ、ソドー島には来島せず、各国を訪れたトーマスに異文化や教訓を与えるアドバイス的な役割で活躍します。

第22シリーズではアシマの他、『TGR』でピックアップされた割に満足に出番を与えられなかったヨンバオ、ラジブ、シェインの準主役級の登場が確定しています。長編ではこのほかカルロスやヴィニーも脇役で再登場しました。

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【三人称ナレーターの廃止】

 『きかんしゃトーマス』といえば常に物語の世界を概観する三人称視点の語り手が付きものでした。物語るだけでなくキャラクターの心情や、鉄道規則や設定などを視聴者にわかりやすく伝える重要な役割を担います。ビートルズのリンゴ=スターをはじめ、まるで伝統のように交代を重ねて、今ではマーク=モラガンが演じています。日本では過去に森本レオが、2008年から現在にかけてジョン・カビラが担当していますね。

しかしS22から、その三人称視点のナレーターは廃止されます。その代わりに主人公のトーマスが第四の壁を破る、つまりトーマス(フィクション)の一人称視点から視聴者(現実)へ、各話の始めと終わりに直接語りかけながら物語を進めていく方針に変わります。

 なお、S17-21まで5年間ナレーションを務めたマーク=モラガンは、S22から新たに登場するキャラクターを演じたと、ご自身のTwitterにて語られました。

 

【各エピソードの尺や演出】

 1話ごとの尺はこれまで通り11分間ですが、物語自体は7分間の中で速いペースで行われ、残りの4分は歌やミュージックビデオ、特定の教訓についてトーマスが視聴者に直接話す物語のお浚いセグメントなどなど、様々なミニコーナーに分割されます。

ちょうどS12以前のような感じに戻るという事でしょうね。然し昔のゆったりしたテンポに比べれば断然良いと思います。

 

また、より速いペースでより楽しくなるだけでなく、機関車の煙突から立ち昇る煙からキャラクターの恐怖や空想などの感情を表現するファンタジー要素も組み込まれます。

これは先ほど載せたリンクの動画で、トーマスが正月のお祭りに運ぶドラゴンを想像して、煙突から出た煙が彼の空想上のドラゴンになる演出が確認できます。ファンタジーと云ってもこれは世界観の中で実際に起こる物ではありません。例えるなら『SLOTLT』の劇中歌「ちいさいけどやくにたつ!」のMVや、S21『フィリップは68ばん』の中盤の数字が各所に表れるシーンが記憶に新しいでしょう。

または作中で度々表現される"Then, an idea flew into Thomas' funnel"が映像として具現化されると考えてもいいかもしれません。

 

【トップハム・ハット卿について】

 機関車たちが効率よく鉄道を動かせるように指示を与える上司、トップハム・ハット卿。そんな『きかんしゃトーマス』の世界に欠かせない人物ですが、現代社会の世間からは男性からの抑圧や独裁的思想を助長するとして非難を受けています。

彼はまだ番組内に登場しますが、昔の様なぶっきらぼうな態度は見せずより一層"愛情深く"描かれるとのことです。

 

【商品展開など】

 マテル社のライセンスの取り組みは番組上のすべての変更点に対応します。

今年からニアを、来年からはレベッカの玩具を発売し、女児向けのパジャマなどの実用品グッズを販売する方針のようです。

 

 

以上をもちまして纏めは終わりです。

 英国では今月の3日に放送が開始されますが、既に先月の始めからイタリアで放送が始まっています。個人的にいくつか拝見し、ペースは確かに速くてより道徳的に描かれる以外、さほど前のシリーズと変わらず楽しめましたが、新登場する鉄道車両は歴史的なものを始め、1990-2000年代に製造されたモダンな物も増え、今回のテーマと同じように現代に合わせてきていると感じました。

これまでの作品の伝統やオリジナリティ性が少しずつ消え行く事は非常に悲しいですが、今回のリブートのように、未来を生きる子供たちの為に時代に沿って変えていくことも長寿アニメないしカートゥーンにも必要なのかもしれませんね。

 短編版BWBAは恐らく第23シリーズ以降もトーマスがブラジルやフランス、エジプトやペルー、ドイツに日本などを冒険する為(ネタを確保する為)に続くと思いますが、一方で古いファンへいくつかサプライズ演出も用意しているみたいですよ。

では

 

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:正確にはほぼ全て