Z-KEN's Waste Dump

喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第19シリーズレビュー第1回【再投稿】

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

S19 E01 『Who's Geoffrey?』『なぞのきかんしゃジェフリー』

脚本: リー・プレスマン

内容: 事故を起こしたトーマスは思いつきで架空の機関車を作ってでっち上げる。

 

【高評価点】

・道徳「自分の過ちを認める」とシナリオの進行。

・鉄道管理者と教訓を与える両方の役割を持つトップハム・ハット卿。

・トーマス、ジェームス、パーシー、スペンサー、ビクターなどのキャラ活用。

 

【低評価点】

・オチはいい加減すぎる。

 

 

【このエピソードについて】

 なぜ今更第19シリーズの初回を繰り返し行うのか? 本当は総合レビューで書こうとしたのですが、その総合レビューをいつ投稿できるかもわからない状態であることに加えて、一刻も早く書き直したいという気持ちが抑えられなくなりました。

いつかも書きましたが、これが英国で放送された2015年当時は、私が"基準"を定めてレビューを行うにはまだ若過ぎました。それより以前からも、物語の素晴らしいところに焦点を当てて伝えようと心がけていたのに、傲慢にも勝手に期待値を過度に上げ、その期待にそぐわないと、非合理的な文句と投げやりの評価、つまらない粗探しをして、不快な思いをさせたことを今も反省しています。

現在の私は考え方がまるっきり変わっています。過去のレビューを消したいレベルです*1。というわけで、第19シリーズレビュー第25回の総合評価でリンクを貼らなかったエピソードだけ、改めて投稿することを決めました。

 考えと視点を変えて改めて評価した、70周年記念作品の1つである第19シリーズ、その初回のレビューを再び始めましょう!

 

©︎Mattel

 現在、私はこのエピソードを大変気に入っています。キャラクターの鮮やかな個性がいきいきとしていて、コミカルで楽しく、全年齢に共通する道徳を持つ今回。これは本当に優れたシリーズの開幕でした。

 「自分の過ちを認める」という道徳は過去にも何度か行われましたが、これは子どものうちに身につけておかねばならない道徳です。しかしながら、トーマスのついた嘘は、大人になっても身に覚えがあると思った人もいるのではないでしょうか。私を含む多くの人々は、認めたくないかどうかに関わらず、過ちを犯したり、意図していない悪さをした時、つい反射的に責任を逃れようとする傾向にあると思います。今回はこの道徳が全年齢に共通するように仕立てた上で、うまいことシナリオが進行しているんですよね。

 トーマスが嘘をついたまま逃げ切るのではなく、嘘をついたことで問題が大きく膨れ上がっていきトーマスに後悔が残る展開をとても気に入っています。ポーターの蒸気やビッグ・ミッキー、メインランドから来る船を見て突発的に架空の機関車をでっち上げるのも良いし、彼のセリフや行動が全体的に共感できる描写なのも素晴らしいです。

また、この心理は初期シリーズはもちろん、ウィルバート・オードリーとクリストファー・オードリーの書いた絵本からも、トーマスの性格がそのように感じられたので、自然に受け入れられました。確かに彼は日頃から嘘つきというわけではありませんが、自分に不都合な時、不機嫌になって、どうにか難を逃れようとする時があるんですよね。

 

©︎Mattel

 噂の広がり方も、第9シリーズ『あたらしいなかまネビル』の意地悪な雰囲気と大きく異なり、ユーモラスなのもとてもよかったです。特に、鉄道愛好家の人々が、ジェフリーの写真を撮りたくて、トーマスに声をかけるといった描写が、実に鉄道らしくて大好きです。

 鉄道らしさといえば、思い返してみれば、番組は一度もリアリズムに焦点を当てたことはないので、何もかも事細かに現実的に描く必要はないと思います。しかし、トーマスのでっち上げが制御しきれなくなる最大のポイントとして鉄道を管理するトップハム・ハット卿を扱うことでうまいこと「鉄道らしさ」を落とし込められていると感じました。確かに帳簿を見れば一発でわかることかもしれませんが、何事も確認は大事ですからね。

その後の展開はかなりコミカルですが、トンネルの中へスペンサーが入り込む+ポイントがないので避けきれない=嘘がバレるという展開が非常に完成度が高いと感じましたし、個人的には良い塩梅だと考えています。

 

©︎Mattel

 もちろん、管理者だけでなく、トップハム・ハット卿が上司(教育者)としての立場もあるところも好きです。不本意であったとしても、自分の間違いは認めるべきで、それを隠蔽すべきではないという教訓を的確に伝えているのが大好きです。

 

©︎Mattel

 唯一気に入らないものがあるとすれば、それはやはりあの不可解なオチです。2020年にMario2099Beyond氏が行ったリー・プレスマンのインタビューによれば、ご本人が書いた脚本には無かった展開(かつ気に入らない部分)とのことです*2

私が尊敬する、あるアニメ監督のブログで知ったのですが、上の意向はもちろん、絵コンテで脚本が大きく変わることも多いみたいで、恐らくその段階で加わったものなのでしょう。

 この流れでトーマスが学んだばかりの教訓を実行に移したのは良いのですが、画面外でランダムに何かに衝突してゴムボールがどこからともなく跳ねて来る演出はかなりいい加減で投げやりのように感じました。実行時間が短か過ぎたのでしょうか。日を改めて間違いを認める展開かそのまま終わるのであれば完璧だったと思います

 

©︎Mattel

 そうそう、以前のレビューでも紹介しましたが、トーマスやトップハム・ハット卿以外のキャラクター活用も気に入っています。

 例えば、関係あるかどうかはともかく、パーシーが新しい機関車が来ると聞いて目を輝かせていた部分では原作38巻を連想させられましたし、ビクターが色を尋ねて「赤色」に反応するのも『ブルーマウンテンの謎』を思い出しました。

ジェームスが赤くて大きな機関車が来ることに驚異を感じていたのも好きですし、小さな機関車を見下している(言い換えれば自分に正直な)スペンサーが自然にトーマスの逃げ道を塞いだのも良かった。全体的にキャラクター描写は丁寧でした。

 

 

【チェックポイント】

©︎Mattel

 アニメーションや格段に向上した美術については総合レビューで語ろうと思いますが、第19シリーズで最も注目したいのは、明るく、現実的な光沢のある質感で鮮やかに彩られた機関車たちの3DCGモデルです。第13〜16シリーズを手がけたナイトロジェン・スタジオとはまた違った雰囲気と現実感を醸し出しているんですよね。

 背景も向上しているように見え、特に遠景にブレンダムの港を映して、そこに大慌てで向かっているように見せる演出が好きです。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆☆☆

リアリズム:☆☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 最初に観た時、私は特筆することがないとか考えていたみたいですが、その数年後、先入観を取っ払って見返したときにかなり巧妙な進行であることに気づいて、とても気に入りました。結局のところ、実に優れた道徳を持つ、良い開幕でした。ここに言葉を訂正いたします。

 

 さて、今考えていることを改めて書き起こしたことで、だいぶ気持ちがスッキリしました。第19シリーズの前半11回分だけでなく、第24シリーズやAEGなど書き直したい回があるので、それらも順を追ってさらっていこうと考えています。

 

総合評価: 9/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:文法はごっちゃだし、当時のアップデートによって文章によって文字の大きさがバグって見づらいし。

*2:私事ですが、7つ目の質問のアンサーを読んだ時、とても申し訳ない気持ちになりました。