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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第19シリーズレビュー第25回

※この記事にはネタバレが含まれています。感想は2016年〜2018年に抱いたものです。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S19 E25 『Goodbye The Fat Controller』『トップハム・ハットきょうにサヨナラ』

脚本: アンドリュー・ブレナー

原案: ロビン・ゲイ

内容: トップハム・ハット卿が島を離れると考えたパーシーは、ティッドマス機関庫の仲間とストライキをする。

 

【高評価点】

・機関車たちがトップハム・ハット卿に対して想っていることが描かれた。

・クラシック期とCG期のトップハム・ハット卿のうた両方が劇中に使われていて豪華。

 

【低評価点】

・教訓は同じシリーズに同じキャラで一度行われた。

・トップハム・ハット卿に質問しないことが前提になっている。

 

 

 

【このエピソードについて】 

 第19シリーズ最終回のレビューです。全26話ですが、『ディーゼルクリスマス・キャロル』を一つのエピソードとした場合、番組表的にもこれが25話目のエピソードとなるようです。さて、これは見事なエンディングを飾ることができたのでしょうか。

 

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©Mattel

 今期は本当にフィラーというか、同じ教訓が2回ずつ用意されてるのが多すぎます。せっかくコンセプトも音楽もアニメーションもいいのに。まあ気にするのは大人だけでしょうけども。道徳はこれまでのシリーズでも多く扱われた、『さよならトビー?』と同じく勘違いと噂で混乱と遅れを招く、「簡単に結論を出してはいけない」です。

この物語では、トーマスとパーシーだけでなくティッドマス機関庫の蒸気機関車全員、およびスタフォードが全く同じことを学んでいます

 ただ、正直なところ、私は『さよならトビー?』よりも、キャラクターの活用としてはこちらの方が好きです。前者はトビーがスクラップになると信じ込む機関車がランダムに感じましたし、混乱と遅れを招いた描写があるのはトビーだけです。こちらは混乱と遅れを生じさせてばかりいるせいでトップハム・ハット卿が出ていくといった勘違いは機関庫の全員に当てはまります。中でもパーシー、エミリー、ディーゼルは特に良かったです。

とはいえ、このエピソードにはある致命的な欠陥があります。

 

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©Mattel

 それは、誰もトップハム・ハット卿に「本当に出ていくのか」直接質問しないことを前提に描かれており、仮にそれが通ると、物語全体が崩れてしまうということです。さらには機関庫で随一のおっちょこちょいなパーシーしかこの状況を見ていないので説得力にも欠けます。彼をよく見下すゴードンとジェームスが簡単に信じるのは何故でしょう。

『さよならトビー?』では、レッジがトビーを持ち上げたことで噂の信憑性に説得力を持たせました。今回の場合、オフィスの改装だけではなく、出張などで一時的にソドー島を離れると言及した方が、後のストライキも理に適っていたのではと思ってしまいます。

 また、黒電話が説得力の一つとしてフィーチャーされたのはとても奇妙に感じます。『トーマスのはじめて物語』と関連づけたいのかもしれませんが、第1シリーズからだと赤電話だし、それほど気に入っている描写もこれまでありません。あくまで機関車視点ではそう見えたんですかね。

 

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©Mattel

 そんな欠陥があっても、先述の通り私はこのエピソードを嫌いになれない点があります。それは機関車達がトップハム・ハット卿を想う大家族のように感じられるところです。トーマスが自ずと提案したストライキによって結果的には混乱と遅れを招くことになりますが、トップハム・ハット卿が父親のように見えることも相まって穏やかさと温かみがあり、この部分と中盤の台詞がない場面は第19シリーズの最終回に相応しいとさえ思います。

怒ってた理由に改めて触れるのも知性を感じられるし、トップハム・ハット卿を説得するために努力していた姿も良かったです。

 音楽も最高です。冒頭と最後に流れるのはクラシックシリーズのトップハム・ハット卿のテーマ及びその歌のアレンジですし、中盤で機関車達が最善を尽くす場面で流れているのは、CG初期の第14シリーズの為にロバート・ハーツホーンが作詞作曲した「Sir Topham Hatt」(未翻訳)のインストゥルメンタルver.です。新旧のトップハム・ハット卿の歌が一つのエピソードに使われている様にはまさに70周年(TVシリーズは31年)の歴史があることを実感させます。

 ちなみに「さすが元ヤンチャ小僧」という、ストライキを発案したトーマスに対するジェームスの台詞は、日本語吹き替え版オリジナルのアドリブです。ここでも『トーマスのはじめて物語』と関連づけさせているのは素敵ですね。現在進行形でヤンチャしてる気もしますけど。

 

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©Mattel

 余談ですが、今回は原案者がタイトルカードで表示された最初で最後のエピソードです。これはあれですか、自分がマガジンストーリーで書いたエピソードが、第3シリーズでブリット・オールクロフトとデヴィッド・ミットンによってTV用に採用されたのに、アンドリュー・ブレナーの名前が一切クレジットされなかった苦い思い出に起因しているんですかね?

ちなみに原案のロビン・ゲイは、2013年6月からヒット・エンターテインメントを退社する2015年3月までシリーズのグローバルブランドディレクターおよびブランド、フランチャイズマーケティングコンサルタントを務めた人です。

 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 通常はありえないことですが、トップハム・ハット卿の業務の最中にジェームスがより早くに駅を移動して仕事をしている場面が好きです。この部分を台詞なしナレーションなしで表現することで、模型期のストーリーテリングより遥かに優れて見やすいと思います。

時計の針が少しでも動いていたらより良かったかもしれません。

 

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©︎Mattel

 何人かのファンがエドワードの性格に問題があると批判したことを覚えています。他の仲間と同じように信じるべきではないと。確かに、一旦落ち着かせる役割はトーマスではなくエドワードにしたほうが適任でしょうね。

しかし、私はこうも思います。エドワードは仲間に度々揶揄されたり、元いた鉄道で不要とされるくらいには古い機関車なので、彼の存続はトップハム・ハット卿によって救われていることになります。もしそんな中で全く知らない別の局長に変わったら、例えエドワードでも不安を感じるのではないでしょうか。

キャラクターの扱い方にストレスを覚える人は、キャラクター個々の視点で物事を考えてみるのも面白いと思いますよ。あくまでもエドワードがなんでもできる完全人格ではないことが大前提です。

 

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©Mattel

 第19シリーズが『SLOTLT』の前の時系列とされているので、オフィスの改装の後に、船乗りジョンがダイナマイトで爆破したと思うと気の毒ですね。

ギャグのためのオチは少し不要にも感じます。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆☆☆

リアリズム:☆☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:BRILLIANT

アニメーション:☆☆

道徳:☆☆

 

【最終的な感想】

  キャラ活用と音楽が良く、穏やかで良いエンディングを迎えることはできましたが、つくづく『さよならトビー?』と学んだキャラと教訓が被らなければ、そして欠陥が拭うことができれば、よりコンセプトの強いものになっただろうにと思います。全体を通して見ると最終回の穴埋めのためのエピソードとして見劣りしてしまいます。

 

総合評価: 6/10

 

 

【シリーズ全体のちょっとした感想】

 2015年にレビューした時、私は第17, 18シリーズよりも平凡で淡白としているか、キャラクターの扱いとしてよくなかったエピソードが目立っており、CGの見栄えとテンポは明らかに良くなっているにもかかわらず、感じたものは良くないと批判的な目で見ていました。

これは恐らく、70周年記念のために意図的に全てのエピソードにトーマスを登場させるようにと上からの指示のもと、トーマスの出番が関係ないところまで出過ぎだったことにも起因しているのではないかと思います。一部のファンは第13-16シリーズのようだとも言っていましたが、さすがにそうとまで思いません。

2018年に改めて見返してみて、より面白いエピソードがあることにも気づけました。下記の総合評価リストでリンクを貼っていないものは後に投稿する総合レビューに詳しく書こうと思っています。第17, 18シリーズより一段落ちているとは今でも思いますが、普遍的だっただけで悪いとまでは思いません。反復的なエピソードは見られるものの、少なくとも3~5つは最高のものがあり、過去作から継続性のあるものや、過去の脇役キャラクター*1に付与された新しい要素もありました。唯一の新キャラクターであるフィリップも扱いこそ良くなくても、シリーズに楽しくて新しい風を運んでいます。

 第8シリーズ(もっといえば第7シリーズの後半)から音楽に携わったロバート・ハーツホーンの楽曲がここまでなのはとても寂しいです。クリス・レンショウに不満はありませんが、ハーツホーン親子の安定感と世界観の構築を私はオドネルとキャンベルと同等に愛しています。

 パーシーの性格はCG期で最高だった反面、ヘンリーはどこか迷走気味で無駄な成長を育みました。トーマスの出番が多すぎた件については、主人公の彼だけではなく、70周年を築き上げた脇役を含む全てのキャラクターを可能な限り取り上げるべきだったと私は思います。

 

 

第19シリーズ総合評価リスト ※リンク先ネタバレ注意※

1. なぞのきかんしゃジェフリー 9/10

2. クランキーのクリスマス 5/10

3. ほっとするばしょ 9/10

4. さよならトビー? 9/10

5. わすれものをとどけよう 9/10

6. ヘンリーのしんぱい 9/10

7. トードとクジラ 10/10

8. たいせつなひつじ 8/10

9. ソドーとうのゆきおとこ 6/10

10. ソルティーはうみをいく 8/10

11. ディーゼルのクリスマス・キャロル 6/10

12. デンとダートはいいコンビ 9/10

13. ヒロをすくえ! 6/10

14. のろのろスティーブン 10/10

15. しゃりんはいくつ 8/10

16. あかとあおのたいけつ 8/10

17. エミリーとケイトリン 10/10

18. やんちゃなフィリップ 2/10

19. やっぱりやんちゃなフィリップ 4/10

20. トーマスとあかちゃん 10/10

21. ロッキーきゅうしゅつさくせん 1/10

22. やまのむこうがわ -3/10

23. もどってきてティモシー 4/10

24. パーシーをきゅうしゅつせよ 8/10

25. トップハム・ハットきょうにサヨナラ? 6/10

 

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:ロッキー、ボックスフォード公爵夫妻など