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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第19シリーズレビュー第23回

※この記事にはネタバレが含まれています。そして2016年頃の感想です。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S19 E18 『The Little Engine Who Raced Ahead』『やんちゃなフィリップ』

脚本: アンドリュー・ブレナー

内容: 新入りのフィリップはゴードンに自分が速く走れることを見せたくて必死になる。

 

【高評価点】

・子供っぽさが詰まったフィリップの魅力が伝わる紹介。

 

【低評価点】

・ペースがひどく、特にオチで何も収束していないどころか、フィリップの成長になんの貢献もない。

 

 

 

【このエピソードについて】

 フィリップというキャラクターが初めて世に出回った時のことを覚えていますか。それはDVD情報や日本で放送が始まるよりもずっと前に、日本の書籍で明らかになりました。

私個人は当時考えていた創作とキャラ被りをしてショックを受けていましたが、今ここまでフィリップが好きになるとは思っていませんでした。格好と性格を見た時はサムソンの二の舞になると思っていましたから。

 

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©︎Mattel

 第19シリーズで唯一の新しい機関車フィリップを紹介するのと同時に、S1『トーマスとゴードン』並びに『TAB』を思わせるあるいはそれに繋がるように描かれているのが特徴です。原語版のサブタイトルのセンスがいいですね。

規則のことも空気のこともソドー島の機関車のこともまだわからないほど若いフィリップがゴードンをBig Engine(大物さん)と呼び、自分がどれだけ速く走れるかを見せようと躍起になるお話です。見ての通り小さな入換え機関車なので列車を任せられているトーマスらほど速くは走れないのですが、経験を積んでいないフィリップはお構いなし。『TAB』の冒頭にすごく似ていますね。また、次回に繋げるために冒頭でジェームスを彼と直接顔を合わせず登場させたのはいい判断です。まあ機関庫はともかく。

物語は中盤までは方向性が明確です。自信に満ち、興奮しやすく、自分より大きな仲間に得意を見せたがるなど子供との共通点も多く含まれており、トップハム・ハット卿に叱られるまでは彼のそのやんちゃな性格が物語のテーマになります。しかし、後半は唐突な展開を迎え、何を伝えたいのか、どこに向かわせたいのかよくわからないことになっています。これは後述。

 

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©︎Mattel

 前半のプロットは上記の通りです。フィリップは新入りとしてだけでなく、機関車たちの"仕事と役割"さえも把握していないほど若い機関車として描かれています。なので、今か今かと駅に来ては時計と状況を確認し、駅へゴードンがやってくると、何も考えずに彼の目の前へ走っていってしまいます。状況は全く異なりますが、演出的には『パーシーにげだす』にもに通った点がありますね。

ここではフィリップは安全第一で規則を守らなくてはいけないことを学びます。

 

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©︎Mattel

 後半のプロットは、トップハム・ハット卿に叱られて学んだことを心がけるようにしながらも、自分がどれだけ速いかを見せるためにゴードンに競争を持ちかけます。日本語吹き替え版だとおかしな文法になりますが、「Go away(あっちいけ)」の「Go」を合図と勘違いして勝手に競争を始めてしまうという可愛らしい展開。

この後半は『トーマスのしっぱい』にも通じるところがあります。フィリップの場合最後まで気づかないけど。

 

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©︎Mattel

 エドワードとエミリーに追い越されて夕方になっているにもかかわらず、自分が速くてゴードンに勝ったと思い込むのも可愛かったです。彼のちょっとした思い込みに暖かく付き合うのも、エドワード、エミリー、ソルティー、ポーターのような態度は模範的な大人の代表と言えるかもしれません。しかし、この温かみのある場面は、一つの問題に直結しています。

 

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©︎Mattel

 このデビュー作以降、フィリップが多くのファンに憎まれているのはとても悲しいです。私は多くの子供との共通点と魅力的な性格を持つ、第2のトーマスになり得るほど将来が楽しみなフィリップが大好きです。まあ最後には出番が減りましたが…

だからこそ、上記の原因を作っているのは今回の何一つ纏まりがないオチなのではないかと思います。フィリップはゴードンに対して迷惑をかけ続けているにもかかわらず、優位に立ち続けています

確かにトップハム・ハット卿に咎められて反省したのは良かったです。これ以降、彼は鉄道が混乱するような迷惑を一切かけていません。ここまでは意味がありますよね。

しかしゴードンに対しての態度と思い込みに暖かい仲間たちが付き合うだけで、誰からも咎められることなく、結果が文字通りゼロのまま物語は唐突に終結を迎えます。前半までの魅力的な部分がここで無意味になるだけでなく、視聴者側から見て、私のように可愛いと思えるならまだいいけれど、そうでない人はフィリップの印象が悪くなると思いますし、キャラクターを成長させる上では悪い事です。チャーリーや霧島組のように。(※私は彼らも大好きです)。

今どき、フィリップのような子供を叱ろうとすると第三者から「児童虐待」と言われるような時代なのでそれを考慮にいれているのかもしれませんが、最後にフィリップに助言を与える必要があります。そして前半とプロットと後半のプロットを入れ替えてもいいレベルでしょう。彼の状況に対して模型初期の雰囲気で終わらせるべきではないと思います。

 

 

【チェックポイント】

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©︎Mattel

 箱型ディーゼル機関車フィリップ。前述の通り、彼自身の若さのように子供の共通点を多く持っていて、ポジティブ思考で理解も早く、挑戦することを厭わない、コミカル調で面白い性格です。図鑑を見たときはサムソンと同類かと思っていましたが、実際には力と経験を過信しているサムソンとは違い、経験不足とゴードンやジェームスと実際に競ったことがない故に自分が速くて力持ちと思い込んでいるという、愛嬌のある方法で設定されていました。私はどちらかというと、第2のトーマスと言えるぐらいの主人公感と個性の強さを備えているように感じます。

そしてとにかく可愛いです。劇中では普通に考えたら迷惑な行為をしているのですが、彼の力を自分より年上の人にもっと見てもらいたいなどの行動原理は、実際に3歳くらいの子供と接し戯れたことがある人なら、この生意気な可愛さがわかるのではないでしょうか。可愛いと思えない人もいるのは承知の上ですが。

 モデルになった機関車は恐らくアメリカのペンシルヴァニア鉄道(PR)クラスA6”ボックスキャブ”電気式ディーゼル機関車が一番近い形と思われます。楕円形になっている背面はAEGIR(Alco ゼネラルエレクトリック・アンド・インガソール・ランド)社の試作機8835号が近いです。なぜこの期に及んでまたアメロコなのか(しかも声優は英国人)はわかりませんが、彼が思い込む能力を発揮できないのがわかりやすくて可愛らしい、非常に良いデザインをしていると思います。

 声優も原語版と日本語吹き替え版共にとても素晴らしいです。UK, US版はイングランド出身の俳優ラスマス・ハーディカー(Rasmus Hardiker)が、日本語版では小林大紀が、それぞれ未就学児を思わせる高い声でキャラクターに命を吹き込んでいます。どちらの声優も、彼らを知っているオタクに対してトーマスに出演していることを伝えると大抵驚きます(笑)

 

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©︎Mattel

 今か今かと待つ場面、可愛い。この時点では鉄道の規則はわからなくてもトップハム・ハット卿の目を見て、やるべきことにすぐ着手できるの偉い。

 

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©︎Mattel

 青くて自分より大きな機関車を見て一瞬不安になるも、車体番号を見て別の機関車と認識したのが好きです。この時点では既にエドワードと認識しあっていたんですかね。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆☆

リアリズム:☆☆

キャラ活用:☆☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳:BAD

 

【最終的な感想】

 星の数を見ていただければわかるように、決して退屈はしませんでした。キャラクターは面白いし、映像は見栄えが良いし、音楽も声優も素晴らしいです。しかし、物語を置き去りにするオチは本当にひどい。そういうわけで点数が大幅に下がっています。

ブレナー執筆回にありがちなのですが、オチを明確にしなくても子供たちは道徳をある程度理解できるかもしれません。しかし、終盤で何を学ばせようとしているのか意図は私にもわかりませんし、今回の場合は特にキャラクターに悪い印象を与えるだけです。関連させている『トーマスとゴードン』の強烈な痛快さと道徳の足元にも及んでいません。華々しいデビュー作なのに。

 

総合評価: 2/10

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