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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第19シリーズレビュー第22回

※この記事にはネタバレが含まれています。2016年から2018年にかけて抱いた感想になります。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S19 E17 『Best Engine Ever』『エミリーとケイトリン』

脚本: アンドリュー・ブレナー

内容: エミリーはケイトリンに憧れを持つが、すぐに自分の得意を知る。

 

【高評価点】

・道徳、ユーモア、緊迫感のバランスが良い。

・高速機関車同士の相互作用と開発。

 

【低評価点】

無し

 

 

 

【このエピソードについて】

 当時私はこのエピソードを見た時に、2013年の「性差別だ」という訴えへの回答の一例だと思ってました。でも、今はそうは思いません。何故か?

理由は簡単。第22シリーズ以降の一部世界編キャラクターのような見当違いな物が彼らなりの回答だったとして、この回はとても自然に感じられる素晴らしいエピソードだったからです。

 

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©︎Mattel

 お互いの理解を深め合ってそれぞれの有用性を知る、女の子同士の友情回です。女性キャラ2台で展開する回は、それまでS12『Rosie's Funfair Special』と、S13『エミリーとおはな』だけで(2015年の時点では)、珍しいかもしれません。

私は男性キャラクターが多い番組では女性キャラクターは量より質が大事だと思っています。この番組の女性キャラクターは2015年まで比率的に少ないのは確かですが、単に出番が無いだけで様々な個性の強い女性キャラが存在しています。これは、それを示す最良の方法でした。

私は物語をストレスフリーで落ち着いて楽しむことができました。

 

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©︎Mattel

 エミリーが誇れることを身を持って経験するまでが物語の主軸で、ケイトリンがその場で自分を押さなかった理由が伏線になっています。客車を置いて引き返してきたケイトリンに引っ張られながら、エミリーが決して追いつくことのできないコナーに匹敵する速度で競争したことで、エミリーはケイトリンの持つ能力の虜になり、自分にも誇れるものが欲しいと悩みます。

こういう悩みって単純なことなのになかなか気づけないですよね。ネガティブになってしまうのも共感できます。

 

 物語はいくつかの鉄道要素が含まれています。コナーとケイトリンのようなアメリカの流線形蒸気機関車は空気抵抗を抑えるためにスカートがあり、バッファーがついていません。押そうとすると劇中で自身が説明しているように凹んでしまいます。

また、エミリーのモデルになったGNR No.1クラス "スターリング・シングル"は、LNER統合前から看板特急列車である「フライング・スコッツマン」の初代牽引機でした。要はゴードン(A1/A3)のように、それらが出回る前に特急列車でブイブイ言わせていた、スピードに特化した機関車だったということです。

自分よりさらに上回る速度を身をもって体感した時に虜になったのは、制作陣がそこまで考えていなかったとしても、ある意味理に適っていると思いました。ウィフがスペンサーに憧れたり*1、スティーブンが自分より速い機関車たちの速度を利用して病みつきになった*2みたいに。

 

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©︎Mattel

 他にも気に入っている部分があります。というか全ての場面が好きです。

コナーとケイトリンの陽気な態度からアメリカ人らしさがあっていいなと思いました。他の機関車とは違うベクトルの豪快な陽気さです。具体的な例はコナーが「Hello, ladies!」とウィンクで挨拶したり、ケイトリンがエミリーに「重い」という言葉をフォローに回して褒めるなど。機関車の女性でも重量気にするんだ…とも思いましたけど(笑

とにかく彼らの一つ一つの台詞や動作は各々のキャラクターとして輝いて見えました。

 

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©︎Mattel

 そしてエミリーがウルフステッド城周辺の急な崖の上でケイトリンのスピードを緩めるために駆け降りる場面は、実際に盛り上がりと緊迫感を得られました。ここではアニメーション、演出、音楽の全てが素晴らしく、大好きです。

 

 

【チェックポイント】

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©︎Mattel

 流線形エミリーの空想が好きです。はい、顔が突き出してるのも奇妙ではありますが、このたった数秒でエミリーがどうなりたいかがすぐにわかる良い場面です。

 

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©︎Mattel

 個性を持つ女性キャラクターとしてマリオンが出てきたのも好きです。確かに操車場にいるべきではないかもしれませんが、既存のサブキャラクターにより多くの役割が与えられるのは良いことです。彼女の助言は悩みを抱えるエミリーには逆効果でしたが元気付けられます。

 

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©︎Mattel

 最後に、機関庫で仲間たちがエミリーを元気づけようとする場面も好きでした。誰も彼女の悩みを理解さえできてないけど、全員の思いやりは温かみを感じられます。相変わらず自分優位に考えるジェームスを皮肉で上手いこと丸め込むゴードンも面白かったです。

ジェームスがアールズバーグに行くというのは謎ですが、『SLOTLT』より前の時系列と考えると、資材置き場へ荷物を運ぶのかもしれませんね。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆☆☆

リアリズム:☆☆☆

キャラ活用:PERFECT

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 文句のつけようがありません。助け合う、認め合う、自分に誇りを持つなどの道徳は過去にも行われましたが、全て重要なことですし、エミリーとケイトリンの友情の深め方は心がこもっていて素晴らしかったです。私の中でお気に入りのエミリーのエピソードの一つです。

ケイトリンもすごくいいキャラをしていて、S17のエピソードも改めて見返して気に入ることができました。

 

総合評価: 10/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:S16『ウィフのねがい』

*2:S17『アフタヌーンティーきゅうこう』