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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第19シリーズレビュー第4回【再投稿】

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

S19 E04 『The Truth About Toby』『さよならトビー?』

脚本: デヴィー・ムーア

内容: トビーがスクラップ置き場で立ち往生した時、機関車たちはスクラップになるという噂を流す。

 

【高評価点】

・道徳「噂話が全て真実とは限らない」。

・トビーとヘンリエッタの掛け合い描写の改善。

・シナリオの進行。

 

【中立点】

・噂を最初に流したトーマスとソルティーを咎めるべきだと思うが、噂を流した全員まとめて反省させるのは悪くない。

 

【低評価点】

・ゴードンは最もトビーの噂に無関心なキャラクターなのではないか。

 

 

 

【このエピソードについて】

 前期でヘンリエッタが再び喋るために原作41巻のような顔を与えられた時、トビーの性格は再び地に落ちたと感じました。初期以来ヘンリエッタが喋ること自体は良い傾向でしたし、『トビーとしんごう』の物語も悪くなかったのですが、彼女の気性を強調するために、トビーがオドオドした様子で描かれるのは複雑な心境でした。今回は彼らの扱いがどのように改善したかも視野に入れながら、改めてレビューを書きます。

 

©︎Mattel

 初めてレビューした時、私はこのエピソードを過小評価してしまいました。トビーの横板がプロットの真ん中では忘れられていてギミックが作用しなかったのと、最初に思い描いた構想と一致しなかったというエゴな考えが主な理由です。

再度、頭を空っぽにして観た時、それが間違っていたことと、同じ道徳を持つ『トップハム・ハットきょうにサヨナラ』と比べ物にならないことに気づきました。

 

 まず、キャラクターです。トビーとヘンリエッタの老夫婦的な掛け合いは改善が見られます。ここではトビーはオドオドしておらず、若干頑固な性格が戻りました。トビーにはヘンリエッタを口うるさい妻のように感じています。それが自分に対して気にかけていて、聞くべきだとはわかっているけど、プライドがあって優先できずに失敗します。私はそんな掛け合いと進行を大変気に入っています。

消費量の速さ的に、石炭を使い果たすよりも水を使い果たす方が自然だと思いますが、トビーの積載量を考えるとどちらでも理にかなっているかもしれません。

 また、噂が広まった時に、ヘンリエッタだけトビーがスクラップになるはずがないと頑なに信じていたのは、とても興味深いですね。いつも一緒にいることで、他の誰にもない信頼関係があるように感じられますよね。

 

©︎Mattel

 噂を広めるキャラクターに関しては、スチーム・チームから、ソルティー、スタンリー、パクストン、スタフォード、コナーとケイトリンといった幅広い世代のキャラクターがたくさん扱われて彩りを豊かにしていますが、ここでの私の評価は以前と変わりません。

特にゴードンは悲しそうな顔で噂にのるのが最も奇妙に感じます。彼は普段、嫌悪感を抱いているトビーが実際にスクラップになったとしても、表面上では鼻を鳴らして何とも思わないのではないでしょうか。

そしてコナーとケイトリンは、噂を早く遠く広めることに貢献しているのかもしれませんが、ここまでトビーと何も接点がないどころか存在を認知しているかも怪しいレベルなので関係性を持ったことのあるキャラクターでまとめるべきだったと思います

 

©︎Mattel

 それ以外のキャラクターは良かったです。特にパクストンは上手く描かれていました。真実かどうかもわからないのに、ヘンリーとスタフォードの話を小耳に挟んだだけで「It's true! Everyone say so.」と断定づける様子は、実際の人々がする噂のようにも感じられましたし、パクストンの騙されやすい性格とよく合致しており、物語の反面教師としても役立っています。

 

©︎Mattel

 次に物語です。『トップハム・ハットきょうにサヨナラ』と大幅に異なるのは、機関車たちが最初から信じるわけではないところです。

トーマスとアニーとクララべル、それから支線を任されているエドワードが、通り道であるスクラップ置き場のそばを仕事で往復して、周りの評価が変わっていく様子を映すシナリオ進行が面白かったです。スリーストライクだと批判する声もありますが、ここでは意味のある物になっています。

 トビーがスクラップになるのではないかと最初に言い始めたのは、彼らの話を聞いてその光景すら見ていないソルティーでしたが、実際には誰も信じませんでした。トーマス御一行がその証拠となりうる光景を目の当たりにした時、噂が確固たるものとして拡散しました。

 

 再びキャラクターの話に戻りますが、物語の主軸であるトビーとレッジの相互作用も大変面白かったですね。レッジは仕事をしながらも、トビーを手伝おうとしているだけなのですが、古風な車体のトビーと並んで、自身がスクラップを掴むクレーンであるという周りから見た評価(変な噂が広まる要因となること)も考えずにトビーを掴み上げるという価値観と倫理観の絶妙な違いがまたレッジらしくもあり、理にもかなっているし、斬新な展開でした。

 

©︎Mattel

 エンディングも気に入っています。噂を最初に流したトーマスとソルティーを咎めるべきだとは思いますがある宣言をするために噂を広めた全員を集めた上で全員に対して叱責するのはトップハム・ハット卿の優しさと責任を感じられて良いです。

 最後のトビーのと会話で見せたトーマスの反応も良いし、散々な出来事から横板を修理することを思い出すところで幕が閉じる様子は、非現実から現実に戻る瞬間のようで、おしゃれな演出でした。

 

 また、他のレビュアーが指摘されているように、最後のトップハム・ハット卿の「トビーは絶対にスクラップにしない」という台詞(改まった宣言)は、英ザ・ガーディアン紙などのメディアが『でてこいヘンリー』を用いてシリーズを非難した「トップハム・ハット卿はスターリン並の独裁者である」とか、「ファシスト国家のようだ」といった偏向報道に対するアンサーのようにも見えますよね

これは、トップハム・ハット卿の必要性を示唆し、意図的かどうかに関係なく改めて同じ道徳で描いた『トップハム・ハットきょうにサヨナラ』を、同じシリーズで実行したことからも、その可能性が浮き出たように思えます。

 

 そもそも、原作者のウィルバート・オードリー牧師は「(局長は)機関車を罰す。しかし廃車にはしない」と発言しています。これはブライアン・シブリー著の『Thomas the Tank Engine Man』や、そのBBCラジオ特集*1で確認できます。

確かに、原作絵本ですら語られていない設定資料集『Island of Sodor: Its People, History and Railways』によれば、初代トップハム・ハット卿は自ら造ったコーヒーポット機関車たちを何年か後に廃車にしていますが、それっきりです。スクラフィーやバルストロードなどの貨車や艀船は他の会社が所有しているため管轄外。そう考えると、TVシリーズ初期で線路傍に放置されている機関車のスクラップは、本土から寄せられた部品取りのようなものと仮定できます。

そんなコーヒーポット機関車を除けば、トップハム・ハット卿は劇中で自分の機関車たちを廃車にしたことはないし、罰したり叱責するのには理由があるし、恐怖政治とは正反対なんですよ。

 ていうか、シリーズの機関車キャラクターというものは、機関車の皮を被った子どもじゃなくて、機関車としての擬人化だし、トップハム・ハット卿はあくまで鉄道員で、彼らの上司なのよ!!

 

 

【チェックポイント】

©︎Mattel

 UK版では、ベン・スモールがヒット社との契約解除で離れたことで、トビーの声優もここからロブ・ラックストローに変更されました。個人的にはベン・スモールのトビーも好きですが、最も老兵っぽい『魔法の線路』のコルム・フィオーレに近い雰囲気で気に入っています。

 日本語吹替版は、当然最終回まで坪井智浩のままですが、今回、トビーがエドワードやトーマスを呼びかけるためシャウトする場面ではとても単調に聞こえました。US版を先に観たせいか、物足りなさがあります。

 

©️Mattel

 ジェームスもゴードンと同じく反応が正しいかどうかは怪しいところですが、ジェームスとトビーはこれまで深く関わっているので、何か思うところがあったのではないかなと思いますし、彼の表情はかなり興味深かったです。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆☆

リアリズム:☆☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 最初のレビューでは6点でしたが、物語、シナリオ進行、そしてゴードンを除いたキャラクターの掛け合いが良く、点数を大幅に上げました。特にトビーとヘンリエッタの掛け合いは老夫婦のような雰囲気と本物の信頼関係があるように感じられ、トビーの性格も上手く描かれていて、アニメーションも素晴らしく、良い物でした。

また、機関車たちは「噂を鵜呑みにしてはいけない」ことを学ぶ一方、トビーはヘンリエッタの忠告を聞くべきだったことを学ぶという、二重の視点で描かれたことが大好きです。

 

総合評価: 9/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:18:40あたり