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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

Thomas & Friends: All Engines Go 第2シリーズ第48話レビュー

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

AEG S2 E48 『The Super Axle』

監督: キャンベル・ブライアー

脚本: ピーター・ハーシュ

内容: ソドー島にやってきた年寄りのトビー。彼はまだまだ元気だが、若い機関車たちに囲まれて次第に自信を失っていく。

 

【このエピソードについて】

 『All Engines Go』シリーズが始まって記念すべき100話目に達しました。最初に発表された104話中。すなわちAEG第2シリーズの最終回まであと少し。そんな中で、ようやく、ようやくですよ。AEGのトビーが登場するエピソードは!! ずっと待ち焦がれていたんですよね。元々トビーが推しということもあるんですけど、AEGでどういう扱いを受けるのか楽しみ3:不安7の状態で待たされましたから。これがカナダで放送する前に発売された日本の書籍では大人キャラクターであることが確定していますが、実際はどういう立ち位置なのでしょうか。早速観て行きましょう。

 

©︎Mattel

 大きく変更されやすいAEGにしては比較的まともな出番どころか、個人的には結構満足しているのですが、いかがでしょうか。

 まず、若くて近代的な機関車の行動にトビーが追いつけなくなるエピソードというのは、従来のシリーズにありふれています。オリジナル第15シリーズ『あたらしいなかまベル』は特に扱いが酷く、第5シリーズ以降トビーは臆病な性格で描かれ続けてきて、「もう古いから」という理由で挑戦を拒む大人しい機関車として描かれました。それを改善した上でお馴染み趣味でなくても友達になれるという道徳にしたのが第20シリーズ『トビーとフィリップ』でした。こちらはトビーの性格は原作に近くなっていて、彼が拒むことに理由がつけられていて良かったですね。

 AEGのトビーの良かったところは、前者のような過度にオドオドした性格ではなくなったことですね。原作にある賢さやちょっぴり頑固な部分は、今の時点では見受けられませんが、昔気質で落ち着いた様子は変わらず、最初から積極的で、何事にも挑戦しようと試みるのも良いですね。自信を失うのは、ディーゼルほど力持ちでなければ、カナほど速くもなく、トーマスほどアクロバティックなことはできないと気づいてから。まあ最後のは漫画的な表現ということで置いといて、従来の展開と大して変わらないけど、悪いというわけでもないっていう感じ。

 

©︎Mattel

 物語はハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話『裸の王様』の要素を取り入れています。自信を無くしたトビーに、トーマスとサンディーがプレゼントしたのが、スーパー車軸(The super axle)。これは新品のように見せた、ただの中古の車輪と車軸。これを履いた(そうやって履くんだ…)トビーは、力がみなぎったと思い込み、来た時よりも自信満々になります。

 意外とすぐに車軸がスーパーではないことを知るのですが、トビーが本当は古すぎず優れた機関車であることを身をもって知るという非常に分かりやすい物語になっています。…あれ、前回の話とかなり類似していませんか??

 

©︎Mattel

 そうなんですよね。ただ『Thomas for a Day』と大きく異なるのは、フリをするのではなく、身につけた車軸を一時的に過信したことで自分の能力の最大値を知るところです。最後にはトーマスやカナなどの協力も得ながら、トビーが自身の力で活躍する場面もありある意味『Thomas for a Day』でやってほしかった成功例とも言えるんですよね。ディーゼルのブレーキに関する伏線を張る様子を含めると、オリジナル第23シリーズ『ラジブのだいじなおうかん』や『トビーのなかみはゆうかん』にも非常に似ています。

 上述の通り従来とAEG問わず類似しているエピソードが数多く存在し、お世辞にも独創性があるとは言えないのですが、ひとまずはトビーの物語として適切に描かれたことが嬉しいです。要は地雷がないってこと。

 

©︎Mattel

 AEGの路面機関車のトビーについてまとめましょう。性格についてはすでに述べた通りです。彼の台詞からは、普段は自分に言い聞かせながら謙虚に働いていることが窺えます。

 驚いたことに、ダーシーの時と同じように、トーマスたちと初対面であるかのような描写があるんです。それでもまだ公式が第26シリーズと呼びたがることに理解できないんですが。真面目な話、制作陣も意図的にそうしていた上で、揶揄なしに別の次元なんですよ、2D版の『きかんしゃトーマス』って。

既存キャラが「初めまして」みたいになるのは奇妙なことですが、それよりもまず、「初めまして」の描写が結局可能なら、カナやブルーノ導入時にも「小さな子どもが理解できないかもしれない」という言い訳はせず、行えば良かったのではないかと考えずにはいられませんね。作品の対象年齢は今も昔も変わらず0~3歳児向けで、これから幼稚園に行く準備をする、あるいは家庭によっては保育園に預けられる年齢なのだから、これから直面するためにも、「理解できない」で終わらせることではないと思うんですけどね…。

 

 とまあ愚痴はさておき。でも、さらに驚いたことが2つあります。

 1つは、トビーの出身地です。原作のトビーは、メインランド(本土/イングランド)のイースト・アングリアの路面鉄道が閉鎖してもう走れなくなったところを、以前休暇で彼に会っていたトップハム・ハット卿が買い取り、ソドー島に来たという経緯がありますよね。オリジナルTVシリーズでは、トビーの元いた鉄道が、後にソドー島内にあることが明かされて、その原作設定は活用されませんでした。

しかし、AEGではどうでしょう。ゴードン曰く、「メインランドのトビーの路線が閉鎖されて、俺たちと働くことになった」(*直訳)とのこと。これが従来のシリーズの途中だったら当然首を傾げること間違いなしなんですが、ことAEGで原作を踏襲しているのがちょっぴり嬉しかったです(笑)

 

 もう1つは、声優についてです、US版ではなんと、あのエドワード・グレン(Edward "Eddie" Glen)がトビーを演じているんです。

ピンと来なかった人のために説明しますと、2000年に公開した映画『トーマスと魔法の線路』の原語版でトーマスの声を充てたカナダ人俳優です。AEGのゴードンもUS版は同映画で同じキャラクターで出演したニール・クローンが担当しています。なにがすごいって、映画界では普通のことだとしても、きかんしゃトーマス』のフランチャイズ上で再び共演していることなんですよ。これはもうケヴィン・フランクをヘンリーに起用するしかなくないですか?!

 残念ながらエディーがトーマスを再び演じることは叶いませんでしたが、結構ハマり役で、ベン・スモールが演じたトビーに近い印象を受けます。

 UK版は英国人俳優であり、コメディアンであり、芸能プロモーターのトビー・ヘイドク (Toby Hadoke)。同名なのも面白いですが、こちらもハマり役で、穏やかで元気そうなおじいさんを良く演出しています。

 

©︎Mattel

 また、デザイン面も素晴らしいですね。3DCG期からほとんどデザインが変わっていないこともそうですが、何より大人のキャラクターで年配にもかかわらず、トーマスやパーシーと大きさが同じで、並んだ時に違和感が残らないんです。

人間よろしく年齢を重ねいていくほど車体が大きくなるわけではないことが知られて良かったですね。じゃあウィフとエドワードもそうしてくれよ。

 

 

【チェックポイント】

©︎Mattel

 原語版では、スーパー車軸を見たトビーが「What in the name of the Flying Scotsman is that?!」と驚きをあらわにします。

まさかフライング・スコッツマンの名前がAEGにも出るとは思いもしなくて驚愕したんですが、実際に驚きなどを強調するフレーズで、godやheavenなどが入る部分がフライング・スコッツマンになっているということは、この世界での彼は崇められる神に相当するのでしょうか? それとも同じ鉄道(グループ化後のLNER)出身と絡めて尊敬の念で付けられているのでしょうか。…後者は考えすぎかな?

 フライング・スコッツマンが車両として好きな自分にとっては、名前を安売りせず大事にされていることが窺えて嬉しいです。

 

©︎Mattel

 漫画的な表現をするために、横板がパカっと開くようです。かわいいね。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

遊び心:☆☆☆

キャラクター:GREAT

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆☆

独創性:☆

道徳:☆☆

 

【最終的な感想】

 トビーの出身といい、フライング・スコッツマンの名前といい、『For All the Marble』のトップハム・ハット卿の世代と同じく、原作を踏襲しているのが知られて嬉しいですね。現代風になってもまだノース・ウェスタン鉄道の一員になってすらいなかったのはさすがに逆行しすぎなのですが(笑)

 ともかくAEGのトビーのデビュー作としては上々だったのではないかと思います。かなりまともで、実は意外と速度が出せるなど活躍があって安心しました。残念ながら今回はヘンリエッタの存在が確認できず、言及による匂わせすらありませんでしたが、AEG第3シリーズ以降に姿が見えることを願っています。

 

総合評価: 8/10

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