※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S2 E49 『The Waiting Game』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: ダニエル・シェア=ストロム
内容: 重要な貨物に遅れが出た時、ニアとブルーノは辛抱強く待つことの大切さを学ぶ。
【このエピソードについて】
AEG第2シリーズ最後のブルーノの出番です。ニアとブルーノの主役回があることは、ダニエル本人からAEGのコミュニティで知らされていたので、楽しみにしていました。
そうですね、実際に観た感じでは、教訓を学ぶのは、急な計画や予定の変更が苦手という共通点があるニアとブルーノで間違いないのですが、焦点はブルーノにあるような感じがしました。というのも、大大大冒険クラブが集まっている中、ニアがフォーカスされる時間はブルーノよりも短いんですよね。
論理的に考え、仲間たちのフィーリング的な行動だけでは理解が追いつかないブルーノが身につくまでに時間がかかるのは分かります。ニアが理解するのが早いのも分かります。でも、直近まで彼女は計画が無いことに慌てているのに、次の場面ではパーシーの提案に賛成することなく、かと言ってなんの疑問も持たずにゲームに参加している描写はちょっぴり謎な瞬間でした。多分絵コンテ的な問題なのでしょうけれど。
それを除けば非常に道徳的で、段階が分かりやすく、優れたエピソードだと言えます。物語のアクションは少ないですが、ブルーノが焦っていることが窺える場面の「見ているものは何だ」ゲームも含めて無駄な瞬間が1ミリもありません。
テーマは、フランチャイズで何度も使われてきた「忍耐」についてですが、「不安感情への対処法」も焦点に当てています。ここでカナが教訓を伝えるというのが本当に巧かったですね。『Kana Recharges』で静かに車体を休ませるのが好きだという特徴が活きているほか、良からぬ心配や不安感情を抱くとすぐに体力が奪われていくことを、カナの電池で表現しているのが素晴らしいですね。
この教訓は本当にそうで、心配しやすい自閉症だけでなく、全ての心配しいな人々に当てはまる大事なことです。私にとって、これは福祉のお世話になって初めて心得るようになったことでした。支援員の方によく言われるんですよね。無駄に心配するほど体に負担がかかると。うつ病がピークだった時は常に体力が無いので気づかなかったんですが*1、回復した頃になると、心配した途端に急激に体力が奪われていくことを実感しました。さらには不安や心配事を抱えすぎて、救急車で運ばれるほど身体が痺れて動けなくなったこともあります。それは私がパニック障害になった瞬間でした。
何でもそうです。例えば、災害が起きた時、大した被害がなかった地域だとしても、もしまた来たらと不安になったりした時は、できるだけ楽しいことを考えましょう。不安感情に乗っとられると体力が奪われるので、いざ逃げることになった時に動けなくなるかもしれません。無駄に心配せず、いつ来ても落ち着いて行動できるように備えて部屋を片付けておくとか、今できることをして有意義に過ごすことを大切にしてください。
予定は変わるもの。今回のブルーノたちみたいに、予定が無くなって、ついついさまざまなこと考えがちな時こそ、面白い空想をしたり、本を読んだり、ゲームをしたり、楽しいことを考えながら待つ。それが難しい自閉症の人って、私含めて案外多い印象があります。だからこそ意味があるのです。
挿入歌「The Waiting Game」は、楽しいことを期待しながら辛抱強く待とうと、トーマスたちがブルーノのために歌う穏やかな曲です。歌は忘れやすいですが、歌詞にメッセージの全てが詰め込まれています。本編でアクションが少ない分、挿入歌のアニメーションに力が入っていますね。
ブルーノの整備士好き設定が本編にも活かされています。彼の趣味はダニエル自身もそのようですね。私も整備士が作業する様子を眺めるのが好きなので、喜びのあまり目を輝かせて梯子をパタパタさせる姿に共感するとともに、キュートすぎてキュンキュンしました。
それを見て待ってあげるニアも良いですね。道徳をよく学べています。
【チェックポイント】
上のスクリーンショットは彼らが運ぶルートを示した地図なのですが、カナとドライバーのアイコン(紫色のライン)の位置がピール・ゴッドレッドだとニアの台詞で説明されています。また、本来ピール・ゴッドレッド駅がある位置にマッコール農場が存在しています。何かがおかしいですね?
ゴードンはトップハム・ハット卿の伝達役なんですかね。随分と出番が減りました。
やっぱりディーゼルとブルーノのコンビが至高です。
全体的な面白さ:☆☆
遊び心:☆☆
キャラクター:GREAT
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆
独創性:☆☆☆
道徳:☆☆☆
【最終的な感想】
山も谷もなく全体的に平坦なので最初は退屈なエピソードだと思いましたが、2回、3回観ていくうちに道徳がすごく分かりやすくて、愛らしい物語であることに気付かされました。ニアとブルーノはもちろんですが、カナの扱い方が本当に巧みでした。
シンプルだけどテンポと道徳が良いので教材に使いたいまであります。
総合評価: 7/10
※この記事に添付したスクリーンショットの著作権は全てMattel, Inc.に帰属します。
*1:むしろ不安になる方が心地よいまでありました。