※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S2 E50 『All Wheels on Track』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: ダイアナ・ライト
内容: 島のあちこちで水道管が破裂し、機関車たちが急発進するが、この問題を解決するにはテレンスとスキフの力も必要だった。
【このエピソードについて】
テレンスとスキフというユニークな組み合わせで活躍するのは、見る分には目新しいですよね。AEGのテレンスはまだ1回のみの出番でマッコールさんの農場から離れることはなかったですし、スキフもレールボートになったとはいえ台車を使ったのは『せんろをはしるスキフ』のみでした。破裂した水道管をテキパキ修理していく様子は、漫画的な表現も上手く機能していました。
でも、個人的にはこれをAEGではなく、オリジナルシリーズで観たかったなと思いました。もちろん漫画的な要素をではなく、彼ら2台の活躍をです。
その理由は、『All Engines Go』シリーズの一貫性の無さに大きく起因します。冒頭では、機関車である事を羨むテレンスとスキフに対して、トーマスがこう発言します。
「You two are amazing just the way you are. I can't swim, or roll through fields. (きみたち2台はそのままで素晴らしいよ。ぼくは泳げないし、野原を駆けることもできない)」(*直訳)
…一体何を言ってるんですか? あなたたち散々このシリーズで線路から外れて野原を駆け回ってたじゃないですか。特例泥まみれになったら動けない感じで、『Kana Goes Slow』では花畑から自力で脱出し、『サンディーは すながすき』では砂山を駆け下り、『パーシー はじめてのキャンプ』では線路の外でキャンプを始めます。また、サンディーは『ミステリー プレゼント』で風車の力で水面を泳いでいるし、このエピソード中には彼女は何度も線路の外に立っています。あれはモーターカーだと? 屁理屈だ。
脚本家はどうにかテレンスの強みを入れたかったのでしょうけれど、もう手遅れ。テレンスやダーシーのような作業車以外の自動車の強みが視覚的に活きないことは、既にシリーズ中で機関車たちが線路の上以外を動く場面が多数ある時点で目に見えていたことです。彼らが鉄道車両であるための一貫性と制限が真剣に必要な場面に直面しました。
とはいえ、オリジナルシリーズでも、テレンスが万能なことはお見通しで、どう足掻いてもイマサラタウンなんですけどね。線路がなくてもどこへだって行けて、初登場時にはアニーとクララベル、雪崩に埋もれたトーマス引っ張っていて、除雪もできるし、原作32巻では貨車を移動させていることも示唆されています。
というわけで私が本当に観たかったのは、スキフの活躍になりますね。スキフはオリジナルの方でも機関車のステータスに憧れを持っていました。台車を持っている彼だからこそ抱える憧れや悩みなんですよね。
2台が活躍する目新しさと勇ましいアニメーションを除けば、物語も平坦です。むしろアニメーションに任せていて、それ以外には真新しい要素はありません。蒸気機関車たち(電気機関車のカナも)が動けなくなって、代わりにディーゼルが走っていくも水溜りで立ち往生するくだりなんかも、オリジナル第19シリーズ『パーシーをきゅうしゅつせよ』で行っているし、誰もがそれぞれできることとできないことがあって、どんな形だろうと関係ないのだという道徳も、番組では使い古されています。絵面は面白いんですけど、以前の出番で自信に満ち溢れていたテレンスがずっと自分が機関車では無いことを気にしているのも引っかかるし、彼らは冒頭から活躍していますし、もう少し脚本的な工夫が欲しかったなとは思いました。
サンディーが口を挟んで「Being small is awesome by the way (ちなみに小さいことは素晴らしいよ)」と発言するところは好きです。そうだね、あなたその小さい車体でいっぱい活躍したもんね。
【チェックポイント】
102話目でも「Train-tastic!」は健在でしたね…。
心配ご無用! サンディーとスキフがどんな問題も全て解決!
乗っかってるのかわいい。
全体的な面白さ:☆
遊び心:☆☆☆
キャラクター:☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆
独創性:☆
道徳:☆☆
【最終的な感想】
すぐに後の展開がわかってしまうような脚本や、シリーズに一貫性がないためどう足掻いても平凡になるのは避けられなかったと思いますが、スキフとテレンスという組み合わせの斬新さは道徳を含めて一見の価値があると思います。
総合評価: 4/10