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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

Thomas & Friends: All Engines Go 第2シリーズ第51話レビュー

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

AEG S2 E51 『Something Broken, Someone Blue』

監督: キャンベル・ブライアー

脚本: クレイグ・カーライル

内容: トーマスの軽率な行動でボクシーが修復不可能に陥り、彼は自分自身がした行動と向き合うことになる。

 

【このエピソードについて】

©︎Mattel

 ボクシーに人格を与えなかった時点で、遅かれ早かれこうなるだろうとは思っていましたが、まさか『まるで、しんぴんみたい』と同じシリーズ中にこの類いのエピソードが来るとは思いもしませんでした。組み立て直してから大した出番もなく、ですよ。

 AEG第1シリーズの休暇で出会ったこのボクシーという人格のないキャラクターは、人間界で言うペットではなく、おもちゃぬいぐるみかばんなどの、"感覚や生命を持たないけど持ち主が大事にしている物"に該当するんですね。ぬいぐるみに相棒とか友達とか家族とかつけることと同等です。

自らのスキルと力で一から作り直したのが相当嬉しすぎたのかもしれません。加えて、多少の部品が取れた程度ならサンディーとカーリーがいつでも直してくれるという甘えが冒頭で表現されていますね。この辺は原作だろうがオリジナル版だろうがAEGだろうが調子に乗りやすいトーマスならではという感じがしました。

ボクシーも骨組み自体は変わっていないんでしょうね。『まるで、しんぴんみたい』で部品を新しくして再び走れるようにはなったとはいえ、トーマスはそのままのボクシーを愛していましたし、整備士が修理したわけでもないですし、根本的な問題の解決にはなっていなかったんですね。

 

©︎Mattel

 うわべだけでは、単にぐちゃぐちゃに壊れた黄色い有蓋貨車をもう一度組み立て直せばいいだろうという話にはなるんですが、このエピソードの真の目的は、その愛していた物を失ったときや取り返しがつかなくなった時の対処法なんですね。幸い、誰か人格を持ったキャラクターの死ではなく、もっと身近な物(先ほど例を挙げた、おもちゃやカバン)でボクシーを表現しているので、対象年齢の子どもにも関連性があります

とはいえこれを形にするのはさぞ勇気がいることだっただろうと思います。

 最も、組み立て直すにしても、サンディーとカーリーのメンテナンスヤード(整備工場)では限界があることが『めざせ! 夢のチャンピオンカップ』のケンジのスカート修復時などで描写されているため、原作のクロヴァンズ・ゲート工場や、3DCG期の同整備工場などのようなことはできないんでしょうね。そもそも先述した通りトーマスはボクシー=昔のままの部品を使うことにこだわりを持っているわけで。

市販のものを、専門知識と工具を持っている家庭でなければ、その工場でないと修復不可能であることと一緒です。

 

©︎Mattel

 ボクシーが壊れた場面で、私は幼い頃に大好きだったおもちゃが、学生時代にお気に入りだったカバンが壊れたときのことを思い出しました。前者は落とした衝撃で壊れてしまい、捨てた方がマシなほどまで原型を留めない形にまでなりました。後者は学校の私物を一気に持ち帰ったため、負荷をかけすぎて壊れました。どちらも自分の責任能力に基づく事でした。大事なものは失って初めて気づくもの。物も人も。

だからこそトーマスの涙に誘われました。だからこそ自分自身の行動との向き合う彼の姿に共感しました。悲しんでいる親友のそばに寄り添うパーシーの優しさと機転も暖かいです。

 加えて、声優の影響力もあるかもしれません。米国版では、本作からトーマスの声優がデヴィッド・コールスミスから、テレンス役のカイ・ハリスに変更されています。これはデヴィッドの成長期とは無関係で、現場でカイの方がトーマス向きであることに制作陣が気づいたことによる変更だったそうです。さすが他の作品でも主人公クラスの役を担当していることもあってか、感情表現が本当にお上手で、カイくんの泣きや泣き笑いの演技は素晴らしかったです。これはボクシーとの思い出を語るときだけでなく、タイトルコールでも活きています。

 

©︎Mattel

 パーシーの機転についても触れましたとおり、最後のカーリーとサンディーの対応も良かったですね。もう走れないからスクラップにするのではなく、工具置き場として再利用の要素も組み込まれています。それも思い出を残すような形で。心にグッときました。カーリーがアームをぶつけてぐらついたとき、トーマスが支えになるのも、写真が飾られているのも、何よりトーマスを甘やかさず成長させるきっかけになるのも。

 このエンディングの迎え方は本当に良い意味で予想外でしたね。

 

 

【チェックポイント】

©︎Mattel

 計画好きなニアとしての扱いを気に入っています。全体的にキャラクターの扱い方はよかったですね。

©︎Mattel

 パーシーもナップフォード近郊からクランブルの谷まで部品をかき集めてくれたんだと思うと、優しさと勇敢さに泣きそうになります。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

遊び心:☆☆

キャラクター:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆☆

独創性:☆☆

道徳:GREAT

 

【最終的な感想】

 あまりにも当たり障りのないもので溢れたAEG第1シリーズを52話分視聴した時は、このように情緒に語りかけてくるエピソードが来るとは本当に予想していませんでした。それは『Blue Engine Blues』でも感じた事ですが、個人的にはそれよりも群を抜いてお気に入りのエピソードの一つになりました。

 ゴミを運搬する貨車として働く姿をもう少し見たかったのでもうボクシーが線路に戻ることがないと思うと残念です。注意されてもなお耳を傾けないトーマスをずっと眺めているのはしんどかったので、決して完璧ではありませんが、それでも優れたエピソードの一つです。

 

総合評価: 9/10

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