※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

AEG S3 E14 『Travels With Terence』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: アンバー・ハリス
内容: テレンスは無限軌道を修理した後、トーマスと一緒にソドー島を探検する。
【このエピソードについて】
ここからはAEG第3シリーズの後半戦に突入です。カナダの番組表に掲載されたプロットからは、オリジナル第10シリーズ『トーマスとスカーロイのえんそく』や、第15シリーズ『トーマスとバーティー』のような雰囲気を感じますが、実際のところはどうなんでしょうか。

さて、このエピソードは私の予想を遥かに超えました。確かに共通点が多く存在しますが、修理された方が冒険をしたがるという全くの別物でした。
まず、テレンスのキャラクター性がはっきりしたような気がします。周囲からの指摘に気づくまでは周りを気にしないし、すごく衝動的なんですよね。個人的にはオリジナルのテレンスに慣れ親しんでいるため、繰り返し呼びかけている通り、別の次元だといえど、あんまり既存キャラクターを大きくいじらないでほしい気持ちが勝ったり、毎回AEGのテレンスの行動には良くも悪くも圧倒されてしまうのですが、ぱっと見で性格が分かりやすく、扱いやすくなった事自体は良い傾向なのではないでしょうか。
従来のテレンスって性格を深掘りしようとすると、なんだか薄味で、能力を除けば、やがて主演の扱いに困るんですよね。オリジナル第21シリーズでわずかに強調したテコ入れが施された理由がそれだと私は考えています。
また、何人かの信頼できるAEGファンからは、テレンスに"ADHD(注意欠如多動症)"の特徴があるとの指摘が見られました。無論、2024年6月現在、公式からそのように発表されていないので、これはあくまでファンの推論に過ぎません。
確かに、劇中ではトーマスがサポートしている風に描かれているし、ブルーノの他にも特別な特性を持つ(いわば発達障害者)のキャラクターがいたら素晴らしいことだと心から思いますが、私はその推論に疑念を抱いています。
第1に、この場合、ブルーノと同じように慎重に扱われるべきです。劇中ではトーマスが常にいますが、テレンスがサンディーの芸術品や駅のプラットフォームを破壊したとしてもサポートができておらず、ノランビー・ビーチで活躍するまでは、行動のインパクトが大き過ぎて、心療内科を推奨したいほどただ迷惑なキャラとして印象が強く残ります。もし特徴づける場合は、現実に悩みを持つ当事者がいる以上、特に未就学児向け作品では、決して視聴者に「育ちが悪い」とか「仕事ができない」とマイナスなレッテルを貼らせないことが重要です。
第2に、AEGのテレンスは、前期『テレンスとほしくさのたかいとう』同様、確実に場の空気が読めないほどのエネルギーを衝動的に放出しますが、ADHDに共通した特徴としては、その1つのみです。岩にぶつかったことは不注意と認められますが、物に当たりちらすとか、必要なものをなくすとか、やり遂げられないとか、他の特徴は持っていないように見受けられ、過去の話では計画性を持っていました。
彼の行動原理は、働く環境に依存するものと考えられます。要は若すぎる上に、走り回って楽しむ・働く鉄道車両と、掘ったりどこからでも突き進んで楽しむ・働くトラクターとで見ている世界が違うといった描写だと思うんです。やりすぎてるからそう言われているのはわかっているんですけどね。

道徳はお馴染みの「適材適所」に加え、衝動的な性格に関するものと、ありきたりですが、見栄えとしては非常に斬新で、アニメーションは良く、オリジナルでは絶対にしないことを見られた楽しさがあります。まあそれを楽しいかひどいかを捉えるのは人によりけりなんですけどね。今回に関しては特に人を選ぶと思いますし。
というのも、道徳を先述しておいてなんですが、この話って何を重視しているのか今ひとつわからないほどごちゃごちゃしていて、すっきり終わるようでどこかすっきりはしないんです。エンディングもかなり性急です。
最初はソドー鉄道の日常の景色を冒険するテレンスの非日常、それこそ『トーマスとスカーロイのえんそく』みたいなものです。中盤で修理が終わると、冒険と掘削が大好きなテレンスのできる・たのしめることを探しながらやらかしていくのですが、やらかしたのはほったらかしで、テレンス自身の問題解決に焦点が当たり、最終的には冒険したくて帰るのを拒んでいた我が家が一番良いという結果に落ち着きます。

ノランビー・ビーチでの、誤って破壊してしまった砂の城を子どもたちのために作り直して、ビーチで遊ぶための適応力を学ぶ場面は、ほっこりしますよね。テレンスに対して人間が小さすぎるとか、起こりうるであろう塩害などの細かいことを気にしなければ、私はこの場面が大好きです。夢があります。

迷惑をかけたことに後から気づいて負い目を感じる場面も良いと思います。ただ、駅をほったらかしにしたままなのは引っかかります。まるで遊び終わったおもちゃを片付けないで別の遊びに夢中になった後、出しっぱなしでそのまま夕飯と就寝に移行するかのようです。このルーティーンを繰り返し行うと収拾がつかなくなりますが、それまた別の話。
ノランビー・ビーチで「作り直すこと」を覚えられたなら、「やっぱり農場が一番だ」と学ぶ前に、ナップフォード駅も修繕してほしかったです。
まあ前期『きかんしゃじゃなくても』でテレンスが機関車に憧れた理由が少しわかったような気がします。ところで、その話では、すでにテレンスはナップフォード駅周辺に行っているはずなんですけどね。時系列がおかしいな?
【チェックポイント】

テレンスの足回りでもある無限軌道は、原作絵本ならびにオリジナル第22シリーズまで「キャタピラー」と呼ばれていましたが、本作ではトレッド(tread)と呼ばれています。聞き覚えがなかったので調べてみると、無限軌道全体のことではなく、あくまでも路面と接触するゴム層の面部分のことを指すようです。劇中で壊れた部分がちょうどベルトでしたから、こう呼ばれているのでしょう。
でも未だキャタピラーとは呼ばれていないんですよね。

喋るキャラクターは4台のみと少ないですが、台詞のないちびっこキャラクターを含め、ナップフォード駅では多くのキャラクターがカメオ出演しています。エドワード、ヘンリー、ゴードン、ジェームス、トビー、エミリー、ウィフ、ディーゼル、ソルティー、リフとジフ、ファローナとフレデリコが集結する様は圧巻で、まるで模型中期や3DCG中期のようです。
あとはたくさんの旅客列車や貨物列車を牽いていれば完璧なのですが。
全体的な面白さ:☆☆
遊び心:☆☆☆
キャラクター:☆☆☆
BGMの良さ:☆
アニメーション:☆☆☆
独創性:☆☆☆
道徳:☆
【最終的な感想】
テレンスの衝動という個性の活かし方や、今までは絶対に見ることができなかった斬新なアプローチは面白かったです。が、破壊したプラットフォームがほったらかしなのはやっぱり気になるし、魔が差したかのように異常に暴れ回るテレンスには圧倒されます。特に、私みたいに従来のテレンスに慣れ親しんだ人には良くも悪くも刺激が強いですよね(苦笑)
それはそれとして、物語がすっきりしないように思えてなりません。全体的な見栄えが良くても、どういうわけかモヤモヤが残るほど、物語の構成がうまく行っていない事例が、AEGではかなりの頻度で見受けられます。従来を含めば、かれこれもう30年前からチラホラ見かけることですけど、一体誰がどう見てOKサインを出しているんだろう。
それから、もし、このエピソードでAEGのテレンスを後から「実はADHDなんです」と紹介しようものなら、個人的には気分が悪いです。紹介としては最低で、今よりもっと低い点数をつけたことでしょう。
総合評価: 3/10
【AEG第3シリーズ総合評価】
1 What's the Buzz? 6/10
2 Bells are Ringing 5/10
3 Abraca-Diesel 5/10
4 Overcommitted 5/10
5 Sandy's Fine Mess 6/10
6 Nia's Green Surprise 8/10
7 Duck Duck Whoosh! 6/10
8 Choo Choo Check In 4/10
9 Percy's Little Problem 2/10
10 Fill-in Friend 7/10
11 Cake It Easy 2/10
12 The Can-Do Crew 7/10
13 Pizza Picnic Problem 5/10
14 Travels With Terence 3/10