※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S2 E38 『Hay Fort Frenzy』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: スーザン・キム
内容: カーリーが手際良く集めた干し草にわざと激突するテレンスに、トーマスは仕事をするのに十分な時間がなくなるのではないかと心配する。
【このエピソードについて】
トラクターのテレンスがついにAEGに初登場します。従来のキャラクターが2D化する瞬間って、どう変わるか不安もあり、だけどちょっぴり見たさもありでワクワクするんですよね。バスのバーティーを差し置いて… と思ったけど、よく考えたら原作もオリジナルシリーズもテレンスの方が先に登場しているのであながち間違いじゃないというか、出しやすいのかもしれませんね。ともかく見ていきましょう。
テレンスが初っ端から主役と聞いて楽しみにしていたのですが、どうやら過度に期待しない方が良かったかもしれません。
テレンスが天真爛漫な性格で描かれていることは別に構いませんが、まずこのエピソードのポイントはなんでしょうか。楽しみながら仕事をすることもできる?
そんなのいつもAEGのトーマスやニアが実践しているじゃないですか。なんなら第1話から競走しながら仕事の手伝いをしていましたし、カーリーでさえ冒頭初っ端から積荷でゲームを手伝っています。何を今更!?
余裕が持てると状況把握さえすればカーリーがはっちゃけだすのも、テレンスがベーラー(農機具)を使って効率を考えながらわざと干し草の山に突っ込むのも、見ている分には楽しいですし、やりたくなる気持ちもすごく共感します。子どもはこういうの大好きですから。しかし、プロットはただそれだけです。
先述の通り、AEGのトーマスは過去何回も遊び心を持ち、ゲームを楽しみながら仕事を行なっています。なので、彼らに手伝いを頼むのはトーマスではなく真面目なキャラクター、例えば安全を第一に考えるエミリーとかにすれば良かったと思いますし、テレンスとカーリーに焦点を当てるなら、楽しみながら仕事をするために時間の配分を考える道徳を焦点に当てて展開すれば道徳的なメッセージになったのではないでしょうか。テレンスの気持ち良いアクションを除けば何も新しいことはなく、音楽の割に身に染みるメッセージを残しておらず全体を通して無意味な仕上がりで残念でした。
このエピソードで最も好きな点は、ジェームスの出番が多いことです。慌てて素を隠そうとしたり、トーマスと一緒に仲良くメインランドへ配達に行く様子がかわいいです。なんだか『とびだせ! 友情の大冒険』の後日譚として通ずるものがありますよね。この調子で続けて。私もっとこういうの欲しいわ。
【チェックポイント】
AEGバージョンのトラクターのテレンスは、オリジナルのイメージと性格も見た目もだいぶ様変わりしましたね。日本の書籍でイラストが先行公開された時、顔にほうれい線が無くなったために子どもキャラクターとして登場することは想像に難くありませんでしたが、客観的に見るとだいぶ印象違うので圧倒されました。
何事にも楽しいことや挑戦が好きで、無神経と思いきや効率を考えられる賢さがある、元気で前向きな少年として描かれていますね。個人的には従来のテレンスが好きなんですが、今思えば、キャラクター性はあまり発展していなかったので、わかりやすく動かしやすい感じになったのは大きいんじゃないでしょうか。発展はしなかったけど。
それから、多分ですがブレードを持ったブルドーザー的なキャラクターが欲しかったんじゃないですかね。ブレンダは綺麗好きだし、バイロンだと大人っぽくてでかいし、サイズ的にもちょうどいいのがテレンスだったのではないかと今回のエピソードを見て思いました。ジャックに近い印象です。
もちろん原語版の声優は子役です。US版のはカイ・ハリス(Kai Harris)。『パウ・パトロール』の第8シリーズからRyder(日本版でいうケント)役を務めています。天真爛漫なテレンスのアクションにぴったりハマっています。その声質を買われたのか、後にデヴィッド・コールスミスに代わってトーマス役も務めています。
UK版はウィル・ブリッジウッド(Will Bridgewood)。詳しいことは分かりませんが、こちらもかなりのハマり役です。ディーゼルに近い雰囲気です。UK版では(当時コロナ禍で)宅録だからなのか老若問わず棒読みが多い中、感情が乗っていてとても印象強いです。
全体的な面白さ:☆☆
遊び心:☆☆☆
キャラクター:☆☆☆
BGMの良さ:☆☆☆
アニメーション:☆☆☆
独創性:☆
道徳:☆
【最終的な感想】
キャラクターが楽しそうにしているのを見るのは視聴者側も楽しいですが、テレンスをイメージしたカントリー調のBGMや素晴らしくダイナミックなアニメーションに対して物語は常に平坦でメッセージはかなり弱く、後味に今更感が残ります。出番が多くなったとはいえ今のところほとんど何もないカーリーにももっと個性が与えられるといいんですけどね。
総合評価: 2/10