※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S3 E09 『Percy's Little Problem』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: ノエル・ライト
内容:オイル漏れを起こすパーシーは、それが修理されることを恐れる。
【このエピソードについて】
AEG第3シリーズのパーシー2度目の主役回。正直、私はあまりAEGのパーシーには期待していません。でも、小さな問題というのは気になります。それにしてもこのあらすじ、なんだか見覚えがありますね。早速見ていきましょう。
そうですね、オリジナル第21シリーズ『こしょうしたハーヴィー』で、ハーヴィーの歯車が詰まって動かなくなるのを、パーシーからオイルが漏れるのに置き換えると、この話になります。要はAEG版『こしょうしたハーヴィー』です。ジェームスが自分の問題から目を背ける『はやいぞ!あかいきかんしゃ!』にも似てますね。
しかし、ハーヴィーの話は歯車が詰まった原因と故障を報告できなかった理由が描かれたのに対して、このパーシーの話は最初からオイルが漏れているところから始まって、そのオイル漏れを隠そうとする理由は郵便配達を終わらせたかったから。でも描写からするに、それが彼自身の本音だとは思えなくてモヤモヤするのですが…。
おおかた、メインランドと遠い場所まで修理しに行くのが怖かったのかもしれませんが、あなたウェイランドまで配達に行った事なかったっけ…?
まあこれは『こしょうしたハーヴィー』のレビューでも書くつもりですが、自分の体調を後回しにしてしまうところは共感できます。病院に行ったり薬を飲むのが昔から嫌いで、検査を遅らせた結果死にかけたり、精神科に行くのを拒んだ結果うつ病が悪化して今の自分があります。おまけに他にやりたいことがあると尚更、ね。
『Duck Duck Whoosh!』の優先順位の道徳と『Choo Choo Check In』の体調管理の道徳をくっつけたようなもので、体調不良にしろ故障にしろ早めに治さなくては、自分自身も周りも困ったことになる、そんな感じの道徳的な物語です。
ちなみにパーシーから漏れるオイルとは、トーマスの言及や中盤のパーシーの車輪の動きから察するに、彼らがいつも使っている潤滑油ですね。ブレーキオイルでもなく。現実の蒸気機関車にも複数の油壺があり、毎回身支度で潤滑油を注入しますのでこの点は言う事ないですね。AEGでは石炭を入れる描写がないので別に重油燃焼式になっていても今更驚かないですけど。ただ、"エンジンが溶ける"ってのはどういう意味でしょう。原子炉かな? それとも単に車軸がガサつくことを大袈裟に言ってるだけ?
修理をしようと駆けつけたサンディーに誤魔化した直後に歌われる挿入歌「I Wish」。これは次の瞬間唐突に始まり、郵便物を時間通りに届けるか、自分の修理を受けるかの選択肢を考えるソロ曲です。曲調は良いけど、歌というより、リズムに合わせて早口で喋っているかのようで、あまり記憶に残りません。思い返そうとすると、似たようなAEGの楽曲「The Number One Engine」が頭に浮かびます。
というか、挿入歌が不要だったようにさえ思います。結局、自分を優先するかと思ったら歌が終わる頃には郵便配達の仕事に戻ってしまいますし。最後まで気の迷いがあった、ということなんでしょうけども。
物語の後半ではちびっこ機関車たち全員が線路に残ったオイルで下り坂から滑りまくる展開になります。またです。
全員くるくる回転しながらソドー島を滑り回り、重力を無視してキャノンボール・カーブを登ってしまうのは面白かったですが、茶番が長すぎで、尺のために水増しされているように感じました。そもそもなんでニアとパーシーが滑っているのを見てるのに、他の3台も同じ線路を辿ってしまうんだ。
ギャグは面白くて繰り返し見たくなるものですが、人生の中では一時的で、印象に残る道徳的かつ説明っぽくない描写の方が、いつかまた繰り返し観たくなるものだと思うんですよ。本作のオイルネタは『Not So Easy-Greasy』と違って道徳に直接繋がっているんですが、だからこそです。放っておけば重大な事故や怪我につながるリスクがあるという話ならば、長すぎる茶番劇よりも、事の重大さを描写してほしかったです。
サンディーが直せないほどの規模の大きい修理はメインランドで行われるということで、AEGではクロヴァンズ・ゲート修理工場(ソドー整備工場)、およびビクターとケビンが登場する可能性がさらに薄くなりましたね。もし彼らがメインランドにいるのなら話は別ですが。
でも、原作とオリジナルシリーズでヘンリーがクルーへ行ったことと同等のような気がしました。まあ油壺の修理ですし、ヘンリーみたく大きな改造が行われるとは考えにくいですが、面白いのは、次のエピソードではこの続きが描かれていることなんですよね。その話はもちろん次回に行います。
【チェックポイント】
AEGで安全側線みたいなのが出てくるとは思いませんでした。枕木が敷かれているので単に工事中なのかもしれませんが。
そこ開くの!?
今まで石炭だと思っていた黒いものは、レディーのコールバンカーみたいに、ハッチだったんですね。そこに手紙をしまうとは、ますます石炭燃焼ではない可能性が出てきました。
仲間たちの回想はトーマスの言及*1を除けば、今まで一度も映像化されていないものばかりです。連続性を持たせるためにもいつも通り過去のエピソードを参照してほしかったし、ニア、カナ、ディーゼルの言及したエピソードを見てみたかったです。
ただのギャグシーンなのは良いのですが、再びジェームスが挨拶bot化してます。AEG S1後半からまともな出番は増えてきたけど、他の大人キャラみたいに準主役で登場してほしいなぁ。
全体的な面白さ:☆
遊び心:☆☆☆
キャラクター:☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆☆
独創性:☆
道徳:☆☆☆
【最終的な感想】
私は『こしょうしたハーヴィー』が好きで、今回のも含めてこの道徳を気に入っています。しかし、今回は… 文脈がひどいと思いました。
使い古されたオイルパニックでお茶を濁していたのも然り、パーシーが修理を恐れる明確な理由を描く方に注力すべきだったと思います。確かに郵便配達を終わらせたいという気持ちはパーシーらしいけど、せっかく子どもたちと関連性があるのだから、メインランドへ行って親友と会えなくなるのが怖かったとかにして、共感性があり、後味の良いエンディングを迎えてほしかったです。
総合評価: 4/10
【AEG第3シリーズ総合評価】
1 What's the Buzz? 6/10
2 Bells are Ringing 5/10
3 Abraca-Diesel 5/10
4 Overcommitted 5/10
5 Sandy's Fine Mess 6/10
6 Nia's Green Surprise 9/10
7 Duck Duck Whoosh! 7/10
8 Choo Choo Check In 1/10
9 Percy's Little Problem 4/10
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*1:AEG第1シリーズ『かわくまでまてない』