※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
S19 E23 『No Help at All』『もどってきてティモシー』
脚本: アンドリュー・ブレナー
内容: 役立たずと言われたビルとベンは、ティモシーを必要ないと言う。
【高評価点】
・同シリーズの『ソルティーはうみをいく』を含む別のエピソードの間の物語。
・マリオンの、貨車を運ぶ事が苦手という設定が活きた。
【中立点】
・ハーツホーン風『Down by the Docks』のアレンジは素晴らしいが、特に意味は無い。
【低評価点】
・押しつけがましい道徳。
・「Another engine, Sir? But you already have so many. / 新しい機関車ですか? でももうたくさんいますよ」というメタ発言。
【このエピソードについて】
エドワードとCG化されていないキャラを除く、ブレンダム勢のきちんとした物語です。主役はティモシー。第18シリーズでは彼のナイーブな性格を強調させるエピソードが複数存在し、クレイピッツでのどんちゃん騒ぎに一躍買っていましたが、今回は硬い意思と決意の側面をフィーチャーして、ビルとベンとのまともな対立が描かれます。それからポーターも彼らのサポート役として役割があります。この2台は見た目も役割もあまり目立たない方ですので、とても新鮮に感じました。
この話の特徴の一つとして、初めて短編シリーズで挿入歌が流れます。小さな機関車2台が港で忙しく働く、ただそれだけの場面であり、何かを示唆するメッセージ等はありませんがロバート・ハーツホーンによる「Down by the Docks」のアレンジは素晴らしくて楽しかったです。
それから、トップハム・ハット卿が経営者として、上司として、それから親のような役割としてバランスの取れた描写のされ方をしていたのも印象的でした。ティモシーを港に呼んだ経緯を話しづらそうにしていたところが好きです。
このエピソードの時間軸を示唆する台詞があります。まず第一にプロットが同シリーズの『ソルティーはうみをいく』でソルティーが本土へ派遣されている間の出来事であり、終盤では最後の場面とリンクします。
また、ナップフォード駅のトップハム・ハット卿の言及で、エミリーとメイビスが故障中である事が語られています。即ち『エミリーとケイトリン』と『デンとダートはいいコンビ』も同時進行していることになります。
前期の『ゲイターとトード』然りですが、このようなサイドストーリーが私は大好きです。とても興味深いですし、今回はこれといった矛盾は生じませんでした。
ナップフォード駅の場面では、管理に面食らっているトップハム・ハット卿に対してトーマスが「もう沢山いますよ」と言及するメタ発言があります。多くのファンが面白がっている事を知っていますが私は純粋にとても不快でした。それは確かに事実です。毎年玩具の為に新しい機関車キャラクターが沢山増えることに対する皮肉や、制作側の苦労が窺えますが、マーケティングに対する批判と、キャラクター各々の役割を否定しているように感じられました。また、このエピソードにとって非常に無意味です。
私は双子のビルとベンが大好きです。彼らの行動や言動はいつも面白いと感じています。しかし、どうもCGシリーズのビルとベンは、事態が収束付かなくなるまで悪化させて仲間が手を差し伸べてくれるのを待つパターンになりがちです。特に彼らが役割を持つエピソードにおけるふざけた態度は、彼ら自身をひどく見劣りさせます。子供との共通点は可愛げがありますが、救いようのない悪態が続くと、人気が落ちないか見ていて少し心配になります。(※幸いにも第22シリーズで少し改善しました)。
そしてオチはかなり強引です。今回の道徳は冒頭や中盤でも示唆されたように、このシリーズの典型例である「チームワーク」で、双子が学ぶ必要のある教訓ですが、直面している問題から若干話が逸れているように感じます。ビルとベンにとってティモシーがどれほど必要か理解させるまでを描くべきでした。それに、双子がもし、クレイピッツで何らかの努力をしていたら、それはより強固なメッセージなっていたかもしれません。結局そういう話に持ってくるのかと少しがっかり。
まずはお互いに「ごめんなさい」が道理でしょう。やっぱり協力して働くのが一番? どの口が言うか。
【チェックポイント】
劇中で流れる歌は、第6シリーズの挿入歌「Down by the Docks / みなとにいこう」(2003年リリース)です。日本語吹替え版では著作権上の都合か歌詞が変更されています*1。吹替え版は三宅健太が歌ってるのかな…?
また、エピソードの冒頭では第7シリーズ『アーサーとさかな』で流れるアーサーのテーマがハーツホーン流のアレンジで流れます。
マリオンは貨車を(特に牽引で)運ぶことが苦手という設定が活かされていました。恐らく彼女の構造上、ショベルを動かす力で精いっぱいなのでしょうね。そこに所属するティモシーがおらず、ビルとベンさえ動かなければクレイピッツは動かない事を示唆しています。
ちなみにマリオンの実機は、そもそも走行に必要な動力を持っていない為、貨車を牽引するどころか走ることが出来ません。
ティモシーと一緒にソルティーとポーターがクレイピッツにやってくる場面では『謎の海賊船と失われた宝物』の挿入歌「We Make a Team / チームをくもう」のインストが流れます。
ブレンダムの仲間として2台が駆けつけてくれるのはこう、滾るものがありますね。特に初登場回で海の見えない石切り場で気が沈んでいたソルティーの事を考えると、この場面はとてもアツいです。激アツです。
全体的な面白さ:☆☆
鉄道らしさ:☆☆
リアリズム: ☆☆
キャラ活用:☆☆☆
BGMの良さ:☆☆☆
アニメーション:☆☆
道徳:☆
【最終的な感想】
今回のエピソードでは、暴れまわる双子をティモシーとマリオンでは収拾を付けられないことがはっきりしました。前者は振り回され、後者は相応の反応を示して指図するだけです。これ以降ティモシーは短編に姿を見せなくなりましたが、いつかボコに双子の押さえ方をレクチャーしてもらう機会があったら良いなと思いました。ただ、2018年現在、制作チームは過去のキャラクターを復活することに対して消極的になったので、その未来は難しいでしょうか*2。
特にキャラの開発は行われず、道徳が強引だったことを除けば、エピソード自体は悪い物ではありません。物語は良く、キャラクターの相互作用や音楽は楽しかったです。
総合評価: 4/10