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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第22シリーズレビュー第13回(※訂正あり)

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S22 E13 『Seeing is Believing』『みえないきかんしゃマーリン』

脚本: アンドリュー・ブレナー

内容: 見えない機関車の話を聞いたパーシーは自分もマーリンに遭いたいと考える。

テーマ: ごっこ遊び、何が真実か見極める事

 

【高評価点】

・純粋で嘘も信じてしまうパーシーのキャラ活用。

・トーマス、レベッカ、マーリン、ソルティーの4台が画面に入る拘りよう。

 

【低評価点】

・本題に入るまでの前半が長すぎて後半はあまりにも急に終わったように感じる。

・トレバーの汽笛を変更した理由は明かされず、汽笛を連続で鳴らしまくる理由も描写されていない事。

 

 

 

【このエピソードについて】

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©Mattel

 独創的で結果的に私はこのエピソードを楽しみましたが、このシナリオの何がどう良いのか、どう悪いのか、このレビューでどう評価すればいいかわかりません。教育アニメとは一切考えないで日常的なアニメとして観れば、心の暖まるかなり面白い回です。

 全体的に主役を含むキャラクター活用は上手かったです。にも拘らず私が微妙と感じる理由は、まずプロットがほとんど存在しないように見えるからです。その原因の主な発端となっているのが7分尺に縮小した事でしょう。恐らくこの回はS21の段階、つまり10分尺を前提に脚本が書かれた物であると私は推測します。S22に合わせていろいろ削ったりニアとレベッカを導入するなどの調整を行った結果なのか、色んな所が中途半端です。前半がやたら長く、後半は2分と物凄く性急に物語が終わります。今までのS22の中で最も尺のバランスが悪いと感じました。オチは弱くないのにそこで終わるのって。

 トーマスによるマーリンへの手厚いフォローとごっこ遊びは自閉症の子*1の自信を護るような立場で素晴らしいですが、主役のパーシーの方はどうでしょうか。お浚いでは「ごっご遊びは楽しいが、何が本当かわかってる事が重要」とあるも、パーシーは誤解したままです。自分も皆と同じように見たと思い込んで幸せを感じるさまは小さくて純粋な子供との共通点があって可愛いけど、彼は果たしてそれで良いのだろうか。…と、視聴者に考えさせる方法は意図的なのでしょうかね?

 S20『じかんをせつやくしよう』と云い、解決だけが道徳じゃないみたいなブレナー脚本はやはり深いなと私は感じます。判断しかねますが。。。

 

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©Mattel

 脇役は出てくることに意味があります。S20『おそろしいようかい』の一回きりで音沙汰なかったトレバーが役割を持って登場したことは非常に喜ばしいですし、彼の陽気で気さくな人格は物語の中で良く活きていました

しかし、その扱い方ははっきり言って良いとは言えません。脚本が創られた時期を思うに、出るたびに汽笛の音色が変わることを考慮したのかしてないのかはわかりませんが、今回では意図的に設定されました。しかし、その理由は明らかにされていません

それどころか、終盤ではトレバーが汽笛を鳴らしまくって森の中の丘を下ってきて、パーシーに誤解を与える役割があり、物語への関与の仕方は非常に面白いものとなっていますが、鳴らしまくる理由も描写されないのでその為だけに扱われている事が残念

 

 だけどそれはそれとして、トレバーに関する面白い瞬間が幾つかありました。トラクション・エンジンを初めて見るマーリンはトレバーの姿を見て最初脱線したのかと言いました。今まで誰かが言いそうで一度も言われなかった事です。そして、恐らく彼はトレバーを見て仲間のセオを思い出したはずです。そして、トレバーが「線路は必要ない」と自信を持って言及するのも彼らしくて良いところ。

 

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©Mattel

  純粋でなんでも信じてしまうパーシーを主役に回したのはとても良いです。しかも、よく見るオーバーな恐がりは一切見せませんでした。騙されやすいキャラと云えばパクストンもそうですが、マーリンをよく知るトーマスとジェームスを加えたティッドマス機関庫での暖かな団欒が大事なポイントだと私は思います。また、マーリンを見つけるだけの為に仕事を放棄しなかったことも嬉しいです。

 今回のファンタジー・シークエンスは素晴らしく理に適っていました。マーリンの噂を耳にしてキーワードを並べたその空想は、対象がマーリンだからこそであり、まるで子供の想像や夢のよう。

 

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©Mattel

 JBSの癒し枠第一号、ステルス機関車マーリン。大好きなキャラの一つです。

 どこまでが本気でどこまでが虚偽かは不明ですが、彼の遊び心は私を芯から楽しませてくれます。トーマスの手厚いフォローのおかげもあってか、みんな暖かい目でごっこ遊びを楽しんで快く迎え入れてくれましたね。ソルティーとレベッカの扱い方も上手でした。欲を言えばジェームスとも絡んでほしかったな。

今回は彼の特徴が話題になるという立ち回りでしたが、マーリンの人格と個性はここでは語りきれないほど濃いのです。三本の煙突だって能力的にも、実際の戦争でのステルス実験でも何の役にも立たないガラクタ級の装備でしたが、用途と関係ない何かには役立てると思いますし、今後もちょくちょく顔を見せたり、『JBS』のような考えるより行動を起こす活躍っぷりや失敗談を短編でも見せてほしいです。

 

 また、声優のヒュー・ボネヴィル続投はこれまた大変嬉しい事でした。マーリンの英米版声優は私にとってはボネヴィル以外に考えられません。それほど素晴らしい演技。

 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 この場面にはかなりの拘りを感じます。ここで映っているトーマス、マーリン、レベッカはみんなSR(サザン鉄道)出身の機関車なんです。*2また、ソルティーのモデル機もSRに配属された物もあります。

 

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©Mattel

  相変わらず独りよがりですぐ寝たがるゴードンでしたが、ジェームスの冗談と暖かい空気で思わず釣られて失笑してしまうのが微笑ましかったです。なんだかんだで前より馴染んでますね。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆☆

キャラ活用:☆☆

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳教育面:☆☆

 

【最終的な感想】

 このレビューを書き始める時、最初はパーシーが何の解決にも至ってないことを否定するつもりでした。そんな時「教育アニメで描かれる道徳は描かれた物が全てではなく、視聴者の子供にどう感じさせるかだ」という知人の主張を思い出し、様々な視点から見て、あやふやまたは肯定的に捉える事にしました。わからないからと否定するのは誰にでも出来るとっても簡単な事です。

これにより、問題に思ったのは尺の使い方だけになりました。この回がS21以前の構成前提で制作されたか否かは判りません。尺問題に関しては脚本家がこれに慣れる必要があると思います。トレバーは役割がきちんと成り立っていない為、尺問題と相俟って草案のように感じました。

私はこのエピソードを存分に楽しみましたが、良い評価が出来ません。

 

総合評価: 5/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:『JBS』で登場したマーリン、セオ、レキシーの3台の実験用機関車は自閉症の子供がモチーフになっています。

*2:トーマスはLBSCがSRへ統合する前に来島しましたが。