※この記事には2021年公開予定の映画『おいでよ!未来の発明ショー!』に関する重大なネタバレが含まれています。
閲覧は日本での公開後を強く推奨します。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
S24 E11 『Sonny's Second Chance』
脚本: ベッキー・オーバートン
内容: 仲間に信用してもらえないサニーはディーゼルと友達になるが…
テーマ: 誤った判断
【高評価点】
・自業自得で信用されないディーゼルのキャラ開発。
・サニーが送り返される場合のリスクを仄めかす描写の数々。
・道徳。
【低評価点】
無し
【このエピソードについて】
さて、今期のレビューも後半に差し掛かりました。ここから先は「Marvelous Machinery」の後日談が中心的に描かれています。まず最初は詐欺師から寝返ったサニーがソドー島に残ってからのお話。
日本では恐らくですが劇場での上映となる見込みですので、繰り返しになりますが閲覧は公開後を推奨します。
非常に良いエピソードだったと思います。私はこの物語でサニーがどのように行動を取ったかが好きです。
サニーを知る上で先に中編『A New Arrival』と『World of Tomorrow』を見る必要があります。中編で見せてくれたように、サニーは過去に泥棒を働いていて、そこから更生する姿勢を見せたため、視聴者は同情することが出来ます。
彼は島のみんなから信頼に値する機関車になりたいと思っていますが、ゴードンとジェームスのなどの大きくて懐疑的な機関車達は、トーマスのように実情を知らないので、言葉だけでは彼を許す考えには至りません。番組上ではカメオ出演で表情も映ってなくても、彼の挨拶を無視したヘンリーも恐らく同様でしょう。
ここでディーゼルが面白がって正直者なサニーを利用した事は、S23で彼が行動した事よりも遥かに面白かったです。自分の仕事を押し付けるという点では、個人的にディーゼルよりも、怠け者のデニスの方が枠に収まるとも感じますが、二番煎じになりかねませんし、ゴードン達がいつまでも信用出来ない存在としてもディーゼルの存在が理に適っています。
それにディーゼルであることによって興味深い瞬間も得られました。
サニーを信用できない機関車の一台にジェームスが使われた事も好きです。ジェームスが汚れるのが嫌いな事を知ってか知らずか、サニーは木箱から落ちるスイカからジェームスを助けましたが、事情を知らないジェームスは彼がぶつけてきただけと思い込みました。
最終的にソルティーが見ていた事で噂が広まり、ジェームスは後にその事をサニーに謝りました。ことオーバートン脚本において、つい最近彼に不祥事があったばかりなので、自分の口から素直に謝るという行為は、該当エピソードからの成長とも見て取れますし、私の中ではポイントが高いです。
ゴードンも然り。彼は一応認めましたが、曖昧なところもポイント高めです。なぜなら目の前で信頼に値する行動を目撃したわけではないからです。プライドの高い彼が完全に認めるにはもう少し時間がかかりそうですね(笑)
サニーには、ソドー島で信頼に値しなければいけないリスクが課せられています。それが掛け金として物語が成り立っているという点も、面白みの一つです。
具体的にどうなるか詳細には分かりません。しかし、こう言うのは好ましくないかもしれませんが、私にとってそれは、原作のドナルドとダグラスが背負ったリスクを連想させられました。少なくとも、見た目も古い機関車であり、泥棒の所有物だったということは、もし本土に送り返された時、大型博物館のようなソドー島以外に行き場は無さそうです。
その状況の中、魚の貨車=島の滞在に必要な責任を見捨ててまでディーゼルを助けに駆けつけるサニーはとても勇敢でかっこよかったです。魚の貨車は切り替わったポイントに勢いよく乗り上げてバランスを崩すというリアリズム付き。
一方ディーゼルの行動心理については首を傾げるところもありますが、トーマスに報告されればまた自分の立場が危うくなるだろうし、それ以前に命を救われた事は心から感謝していると思います。また、長年、殆どの機関車に信用されない彼だからこそ、その苦しみを分かっていると思うし、ここでサニーを庇わなければ彼が損すると考えたかもしれません。また、ディーゼルが正直に話したり、サニーが認められた事を喜んだのは、彼の成長の大きな一歩と言えるのではないでしょうか。
誠実なサニーと悪名高いディーゼルが仲良くなった今、ディーゼルが次にどのように行動するか、その後も見てみたいですね…。
サニーはとても忠誠的かつ正直で、誰かの役に立つため躍起になります。言動の優先順位が異なったり、自分の行ったことより相手の現状を優先して考える為、日常的にはかなり損する立場になる傾向が見られます。バズに利用されっぱなしだったのも、この性格が起因の一つと言えるでしょう。
覚えた言葉を頻繁に使うのが可愛らしいです。
サニーについてもう一つ好きなポイントがあります。それは彼が労働者を表すコックニー(ロンドンの下町)訛りで喋る事です。これはサニーのモデルになった機関車が、ヘイドック・ファウンドリーという炭鉱で使う為に製造された歴史に基づいていると考えられます。サニー自身もまた、モデル機に基づき、炭鉱で働く為に造られて、泥棒をする前は炭鉱で働いていた旨の設定が存在します*1。差し詰め、"炭坑夫っぽい擬人化"というところでしょう。
コックニーの証拠として、原語版のサニーは常に砕けた言い回しを行います。特徴的なのが、トップハム・ハット卿の事を普段は"Sir"ではなく、"Guv"(旦那、親方という意味)と呼ぶことです。あの声でダンナって呼ぶの、可愛くないですか?
英語の訛りは、そのキャラクターの出身地と特徴を表す上でとても重要です。ことサニーに関してはとても理に適っていると思います。車体のデザインも実機に忠実で素晴らしいです。
【チェックポイント】
冒頭では言葉だけでは伝わらない事を示していますが、ゴードンのプライドの高さからなる、スピーディーなコメディには笑いました。
4「Umm. Once a thief, always a thief.」
1「Oh Gordon, We always a mistakes.」
4「I don't!」
熱心な方なら、これがどれほどのmistakeかわかるはず。オーバートン脚本はコメディが秀逸ですね。
「時々君の考えてることがわからないよ」というディーゼルに対するパーシーの一言も、キレッキレで面白かったです。
ディーゼルも自覚しているようですね。
全体的な面白さ:☆☆☆
鉄道らしさ:☆☆☆
キャラ活用:☆☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆
道徳教育面:☆☆☆
【最終的な感想】
これを見る前からサニーが好きでしたが、更に好きになりました。今では10位内に入る推しです。
そして間違いなく印象的で、オーバートン脚本の中でもトップクラスに良かったといえるエピソードです。繰り返しになりますが、二度目のチャンスが与えられる道徳は、本当に良いですし、このシリーズにおいても適しています。
サニーとディーゼルのお互いのハッピーエンドではないので、ディーゼルの株はソドー島でまた落ちたかもしれませんが、そこでサニーを庇った事は彼と視聴者が知っています。;)
総合評価: 10/10
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*1:Meet the Characterより。