※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S1 E30 『Calliope Crack-Up』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: サラ・アイゼンバーグ、ベッキー・ウォンバーグ
内容: 毎年恒例のカーニバルにアトラクションを届ける機関車たちは相次ぐミスで蒸気オルガンを壊してしまうが、ある解決策を思いつく。
【このエピソードについて】
さて、日本での放送がAEG第2シリーズ(第26シリーズ)を交えながら2クールを終えて一旦3DCG期の再放送に移行したところで、AEG第1シリーズのレビューの続きを行いたいと思います。今回は何故か日本で放送を見送られた蒸気オルガン回からスタートします。
オリジナル第16シリーズ『パーシーとパイプオルガン』以来、蒸気オルガンがAEGにも出てくるとは思いもしませんでした。そのエピソードは、無理やりにでも蒸気機関車と関連付けさせようとする点や、日本においてCalliope(蒸気オルガン)がパイプオルガンと誤訳されていること*1を除けば、テレビシリーズ初期の面影のない時代のものにしては最初期のトーマスのテーマが古めかしい蒸気オルガンから演奏されるというファンにとって好印象の演出と、古いものの復元と保存を題材にした良い内容でした。
流石に音楽家もコンセプトも異なるAEGの蒸気オルガンから初期のトーマスのテーマ音楽が流れることはありませんが、私の中では本作を結構気に入っています。
その一つが問題解決の方法です。まず順を追って内容について話していきます。
主人公はいつもの5台のちびっこ機関車ですが、音楽好きのニアがフォーカスされていて、かつ全員にそれぞれの特徴を活かす機会があるのが良いですね。
音楽のテンポを上げてノリノリになったトーマスの牽引するコースターが外れた事から始まって、ディーゼルを除くみんなが立て続けに事故を起こしていきます。テンポの良いパニックシーンも良いですね。そんなこんなで誰のせいで事が起きたのか話し合う機関車たち。
ここで一通り省みた上で「誰のせいかは関係ない。問題はこれからどうしよう」と、一旦言論を整理するのが好きです。あるあるですけど、問題を目の前にしながら、誰のせいかを問い詰めるのってすごい時間の無駄だと思うんですよね。反省は重要ですが、後からでもできるじゃないですか。
うさぎのジェットコースターが貨車に積まれずそのまま牽引されたり、バウンシーキャッスルが膨らませたまま運ばれたり、『チャギントン』よろしくポップコーンがホッパー車でそのまま運搬されていたり、それを見た機関車たちの反応「Yum! (美味しそう!)」を含めて色々とツッコミどころはありますが、普通なら壊れた蒸気オルガンをみんなの力で修復して見せると思わせるところを、直せなかった蒸気オルガンの代わりに機関車たちの汽笛や警笛で音楽を演奏するというものは実際かなり独創的でした。ディーゼルの音階のない警笛のせいで和音になってさえいませんが、それもまた可愛らしいコメディとして一躍買っています。いい感じにベースラインにもなるし。
まあ、ベトベトのヘドロで補強するのは見ている分にはかなり汚いですけどね。
このカーニバルでは蒸気オルガンの代わりでしたが、その後の『ニアのかんぺきなパーティー』では元通りに修復されたようで安心しました。
【チェックポイント】
思い通りに音が鳴らないディーゼルが一番可愛いまである。
US版のトップハム・ハット卿の驚き方もやばくて一番笑いました。
全体的な面白さ:☆☆
遊び心:☆☆☆
キャラクター:☆☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆
独創性:☆☆☆
道徳:☆☆☆
【最終的な感想】
シンプルな内容と見せかけて実はかなりユニークで、独創的な解決策と代替案が、視聴者の未就学児のヒントになり得そうな気がしてとても良かったと思います。個人的には、一人のアニメーターがAEG放送開始前に絵コンテを個人サイトに上げなければもっと良かったのに。
日本で放送する暁には、パイプオルガンではなく、カライアピーでなくてもいいので正式に「蒸気オルガン」と訳してほしいですね。『ニアのかんぺきなパーティー』では「蒸気オルガン」と訳されていたので心配無用な気もしますけどね。
総合評価: 8/10
※この記事に添付したスクリーンショットの著作権は全てMattel, Inc.に帰属します。
*1:蒸気オルガンは確かにパイプオルガンに分類される楽器の一つだが、蒸気船などのボイラーから蒸気を供給して演奏するという最大の特徴を無視しているのはいただけない。