※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の感想は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
S22 E22 『Samson and the Fireworks』『サムソンとはなび』
脚本: リー・プレスマン
内容: 信号雷管の起爆音を恐れるサムソンは濃霧の中で動けなくなってしまう。
テーマ: 脅える仲間を落ち着かせる
【高評価点】
・教訓内容。
・サムソンとブラッドフォードの掘り下げ。
・濃霧における信号雷管の使用の仕方(鉄道らしいネタ)。
【低評価点】
無し
【このエピソードについて】
前回とテーマが似ていますが、アプローチは全くの別物です。今回は「もし仲間が恐がっていたら、どうするか」というのが本題。これが”質の高い教育”という物でしょうか。国連の取り組みに関連してるかどうかはわかりませんが、主役を客観視した内容は実際に質が高く感じました。
普段は自尊心が誰よりも強く、ただただ滑稽になるか最後まで腹が立つ役割の多いサムソン*1のもう一つの実態、プラス、生産性のある成長が見られた事にとても満足しています。子供たちの多くが共感するであろう爆発音への恐怖に焦点を当てて相棒と共に成長する過程が描かれました。
何度も言っていますが、物語を創る上で共感性を得るようにするというのは視聴者の理解力を高めるという点でも大切な事です。オードリー牧師も、子供は子供、機関車は機関車と区別しながらも、どこか似ているところを感じ取ってもらう事を大切にして執筆されていました。
彼の相棒のブレーキ車ブラッドフォードも今回の主役の一台。脚本家のリー・プレスマンを知る人物によれば元々は一発屋の予定だったようですが、ハンナと同様に大役を貰って帰ってきました。32秒の遅れを気にしたり、貨車に載ったカモメに規則を怒鳴りつけるなど、そのあまりに細かすぎる性格はそのままに、初登場時にも見せた柔軟性を活かし相棒として一躍買います。
相棒としての出番が観てみたかったので正直後述のシリルよりも凄く嬉しかったです。許可なく貨車に鳥を乗せてはいけないという規則は正式に存在するのでしょうかね。私は彼が暗記している『公式の鉄道安全マニュアル』に一度目を通してみたいです(笑)
上記のように厳格な性格でありながらサムソンが恐怖で走り回るときにブレーキ車としての責務を果たさなかったことは少し残念ですが、相棒として彼をよくわかっているからなのかもしれないですね(?)
最も評価したいのは、共に大きな爆発音が鳴り、鉄道要素の一つである信号雷管*2と、道しるべとなる花火を掛け合わせた独創的なシナリオになっていることです。加えて、信号雷管は正しい使われ方をしています。これの用途は実際の鉄道でS6のように濃霧を警告する時だけでなく、濃霧で腕木信号を視認できないときは、腕木信号の代わりにポイントの手前に設置して車両に警告または停止指示を伝達する為にも使われます。今回やたら設置個所が多いのはそういう事です。よく見るとすべてポイントの手前に設置してあります。
私は現在、何者かの再登場をファンサービスだとは思いません。例えばスピンオフ作品のみの舞台だったがS19『あかとあおのたいけつ』で本編にも導入されたドライオーのフットボール・クラブのように、過去の設定(特に鉄道由来)をサッカーを扱う新しい展開で使う事は生産性があって良い事ですし、今回のシリルは濃霧を扱うエピソードにはかなり合理的な再登場だと私は思います。信号雷管に関するエピソードをもう一度観られて嬉しいです。寧ろこの16年の間、濃霧の際に出てこなかったのが不思議なくらいですけどね。それゆえなのか、やたら陰気なキャラになってませんか?(笑)
そして久しぶりの登場ですので改めて信号雷管の説明を受けるシーンにおいて、試験的に使用するのがレギュラー陣ではなくフィリップというところもまた良い演出ですね。彼はソドー島に来て間もない上に若いですし、さぞ新鮮な体験だったことでしょう。
相変わらず加減が分からずに衝突してしまうレベッカはお茶目でかわいいけど、私は乗客の安否も心配です(笑)
【チェックポイント】
信号雷管とは、この線路に取り付ける赤いぽちの事を指します。イギリス英語でDetonator(爆薬)と称すので、吹替え版の”起爆装置”もあながち間違いではないのですが、正式な用語がある事を覚えて頂けたらと思います。
きれいですね。この時に流れる、まるでサムソンの自信とリンクしているかのようなテンションの上がる音楽が良い。
私も子供の頃は花火の爆発音と危険性を恐れていました。今は大好きです。
全体的な面白さ:☆☆☆
鉄道らしさ:PERFECT
キャラ活用:☆☆☆
BGMの良さ:☆☆☆
アニメーション:☆☆
道徳教育面:PERFECT
【最終的な感想】
すみません、結構間が空いてしまいました。これは凄いなと思った物や大好きな作品について話すことは容易ではありませんでした。思い入れが強すぎてまず何処から語って良いのやら。そして間が開くと本当に書きたかったことを忘れるという。
素晴らしいメッセージ性とキャラクターの活用、そしてリアリズムをバランス良く仕上げた良いエピソードでした。プレスマン執筆回は良い意味で普段通りの軌道上に乗りながらも全く新しい展開でシナリオを進めていくので大好きです。
一方、信号雷管を用いた全く別のシナリオも書けそうだと思いました。まだまだソドー島で出来る事は巨万とあります。
総合評価: 10/10