※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S1 E26 『No Power, No Problem!』『ていでんなんてもんだいない』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: ダン・サルガロロ
内容: トーマス、パーシー、カナは乗客にソドー島の景色を見せるため、停電の中で解決しようとする。
【このエピソードについて】
第24話『ほんとうのいちばん』でヴィカーズタウンが停電したばかりなのに、今度は島全体が停電するエピソードがきました。前にもゴードンの連結器が2話連続で破壊されることがありましたが、脚本家同士でアイディアについての連携は取れていないのでしょうか。
停電を題材にしたエピソードといえば、従来のS10『トーマスとながれぼし』の例がありますね。あらすじだけ見れば類似性があるようにも見えますが、実際には全く異なります。時間帯は昼ですし、前者では流れ星にばかり気を取られて整備士を乗せ忘れるという内容だったのに対し、こちらでは、皮肉にも遊び呆けることの多いAEGでは珍しく(?)最後まで仕事に集中していて、トーマスが運ぶ乗客に行楽ツアーで絶景を見せるために仲間たちが協力して成し遂げようというもの。
従来のソドー島なら、古き良き英国の鉄道と同じで信号も踏切もアナログなので、臨時列車が走ること自体に違和感はありませんでしたが、AEGのソドー島は北米化に加えて近代化しているため、信号もポイントも交差点の遮断機も跳ね橋も電気で稼働しているようです。
さてその中でどうやって解決したものかというところがこの回の面白みなのですが、ちょっと待ってください。ゴードンは「配達を延期する」と宣言しているのに、なぜトーマスの観光列車は優先されるのでしょうか。なぜパーシーとカナは発電所のことよりもトーマスを手伝うのでしょうか。配達の延期を考えるということは、停電中の鉄道を走り回るのが危険だということを示唆しているわけで、そうなら前提がヘンではないですか? もし彼らがトーマスの列車の補助をするのなら、ゴードンと一緒に今回出番がなかったニアで発電所へ臨時列車を走らせるくだりでもあればよかったのに。
前提はおかしいのですが、今回の面白いポイントは、カナが絵文字を使う時などに放電する電気で、トーマスの行く先々の障害を乗り越えられることに途中で気がつくところです。この辺はカートゥーンならではですね。しかし、充電が完了していない状態で制限があることが魅力的に感じられました。まあその役目を終えた時点で物語の葛藤は終わるのですが。
トンネルでのカナの活躍は特に素晴らしかったですね。活躍しただけでなく視覚的にも綺麗でかっこいい瞬間です。
また、今回の渋滞は理に適っていると思います。普通、鉄道に近道が存在しないことと同じように鉄道が交差点で渋滞を起こすことも滅多にないはずなんです。途中で停電が起きたことで、連絡が途絶えたとしたら、そうなるリスクが生まれます。道の塞ぎ方として、後の作品が渋滞にばかり頼りすぎなんですよね。エドワードとヘンリーはこの時点では残念ながらまだ単なる背景キャラ(後述)なのですが、ジェームスにまだプライドがあってディーゼルと張り合っていたのが面白かったです。側から見たら8歳の少年に対しておとなげない態度の大人なのだけど。
トンネルと跳ね橋を通り抜けて海岸に行くまでに「もうすぐ」と言っているのにとつぜん夜に場面が切り替わるのはなかなかに違和感がありますね。仕事を完了した段階で灯台の明かりがつく、いわゆる「やり遂げた後のエモいシーン」を単にやりたかっただけに見えます。むしろ灯台に関しては停電に備えて発電機があるでしょと、思わずツッコミを入れたくなるのですが。
【チェックポイント】
AEGは元々7台の子ども機関車と、それに話しかけるゴードンだけで展開する予定だったという話は前にもしましたね。リック・サヴァルがコスト制約の中でもジェームスやエミリーなど子どもたちに人気なキャラクターや、特徴的なウィフらを出し続けたいとのことで後から追加したことも。
では、エドワードとヘンリーはと言うと、上記のくだりに彼らは存在せず、いわく彼らの登場が決まったのはもっと後からだったといいます。元々、第1シリーズから完全に省かれる予定だったところに、アニメーターがもっと機関車キャラクターを必要としたため、土壇場で追加したのだそうです*1。それゆえ、両方とも脚本に居ないため、第2シリーズの前半まで喋らなければ名前を呼ばれることもない、単なる背景の賑やかしに過ぎないキャラクターになっています。
エドワードのデザインがゴードンの2Dモデルを流用して巨大化している事からも、よく考えられず急遽制作された事が伺えますよね。
そんな彼らですが、ファンにとって嬉しいお知らせがあります。2022年に英国・米国で発売された英語版のキャラクター図鑑『Meet the Engines』にて詳細な設定が明記されているほか、日本で発売された第2シリーズまでの情報を詰めた『キャラクターずかん』にヘンリーの正確なプロモが掲載されているため、そう遠くないうちに正式なキャラクターとして出番があることが予想できるという事です。
サンディーが些細な問題をややこしく考えてしまう描写が面白かったです。頭がいいならではの弊害ってやつですかね。
全体的な面白さ:☆
遊び心:☆☆
キャラクター:☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆☆
独創性:☆☆
道徳:☆
【最終的な感想】
前回投稿したレビューと異なり、最終回かと思うレベルでたくさんのキャラクターが出てきて賑やかで楽しい印象です。トーマスたちは仕事熱心だし、チームで解決しようとしているのが好きですね。ただ、停電の問題にしては前提がおかしいのと、それが取ってつけられたように見える展開、そして絶景を見るために走る以外にプロットポイントが存在せず、どっこいどっこいだというのが最終的な感想です。
総合評価: 5/10
【AEG第1シリーズ前半総合評価一覧】
従来なら第26話で1シリーズ分ですが、AEGのS1, S2はそれぞれ52話あります。振り返ってみれば、良いエピソードもあるにはあるけれど、これだけの話数で同じ展開が連続する回がいくつかあったり、微妙に理屈が通らない・退屈な回が大半を占めていて不十分な印象です。52話の枠があってよかった(?)。散々言っていますが、AEG S1はぶっちゃけ後半から一気に面白くなったと思います。ひとまず前半はこんな感じでした。
※あくまでも面白さを重視する自称厄介オタクによる評価です。AEGに興味がある人は、私の評価に関わらず全てのエピソードを観て損はないと思っています。
1 A Thomas Promise トーマスのやくそく 5/10
2 Thomas Blasts Off トーマスロケット 3/10
3 License to Deliver ひみつのスパイ ナンバー・ワン 7/10
4 Rules of the Game たのしいコースであそぼう 6/10
5 A Quiet Delivery しずかにはしろう 8/10
6 Kana Goes Slow 8/10
7 Dragon Run ドラゴンときしだん 3/10
8 The Biggest Adventure Club だいぼうけんクラブ 6/10
9 Percy's Lucky Bell パーシーのラッキーベル 4/10
10 Sandy's Sandy Shipment サンディーは すながすき 5/10
11 A Wide Delivery いえをはこぶほうほう 9/10
12 Counting Cows かぞえて モーモー 4/10
13 Music is Everywhere おんがくはあちこちに 8/10
14 Backwards Day ぎゃくにするひ -5/10
15 Chasing Rainbows にじをおいかけて 2/10
16 Nia's Balloon Blunder ニアのおおきなふうせん 5/10
17 Capture the Flag はたをおいかけろ 8/10
18 Mystery Boxcars ミステリー プレゼント 8/10
19 Super Screen Cleaners トーマスはスーパートレイン? 8/10
20 Overnight Stop パーシー はじめてのキャンプ 5/10
21 The Joke is on Thomas じょうだんでわらおう -2/10
22 Lost and Found ビーチはどっち? 5/10
23 Thomas' Day Off ぼくだけの ぼうけん 7/10
24 The Real Number One ほんとうのいちばん 8/10
25 Roller Coasting ジェットコースターってさいこう 7/10
26 No Power, No Problem! ていでんなんてもんだいない 5/10
144/260 ※マイナス点は「0点」とする。
次回→ The Tiger Train ゆうかんなトラのきかんしゃ