※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S2 E01 『Fast Friends』『とてもはやいふたり』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: サラ・アイゼンバーグ、ベッキー・ウォンバーグ
内容: カナやトーマスが水槽の材料を届ける一方でパーシーとニアは水槽を運ぶためにゆっくり走らなければならない。
【このエピソードについて】
さて、AEGの第2シリーズ(S26)レビューの開幕です。まだ第1シリーズのレビューが済んでいないですって? それらは日本語吹替版が放送され次第投稿するとして、米国での放送が休止期間に入り、第2シリーズ前半の意見もまとまったのでひとまず投稿しようと考えました。
第1シリーズの最終回が米国で放送された頃には次回作へのワクワクが止まりませんでした。ぶっちゃけその大半は制限がなくて面白くないし、私の中では変わらず従来のシリーズほど好きではありません。ですが、別の世界線の娯楽として楽しんでいましたし、これからどう描いていくのかもとても気になっていました。当初予定されていた104話のみならず2025年にかけて第4シリーズまでの制作が発表されたからです。さらに今期では自閉症のキャラクター、ブルーノが初登場とのことで、ますます物語に期待が掛かっています。
まず最初にレビューするお話にはブルーノは出てきません。制作オーダーではこのエピソードが第1話だそうです。『パーシーがきえた!』と『ブレーキしゃのブルーノ』は恐らくどちらもブルーノが活躍する話であるため、ブルーノをフィーチャーすべく米国、英国、日本で先行放送されたものと考えられます。ひとまず前期では影が薄すぎた2台の活躍に注目しましょう。
AEG S1の最終回からAEG S2の初回にニアが主人公を担当しているのを見られて嬉しいです。S1にはニアが活躍するお話はさほど少なくない印象ですけどね。
でもカナは? "速く走れる"だけに焦点を当てていたため、彼女の活躍回はレギュラー陣の中でも非常に少ないし、カーリーなんて主役回が一度もなかったのに、カナが何かした印象がカーリーより少なく感じられ、当初の予想通り第1シリーズ後半では完全に埋もれていました。キャラクター開発と肉付けを怠らなかったのは映画『めざせ! 夢のチャンピオンカップ』のみで、それに意欲を注いでしまったかのように見えました。
ですので、大大大冒険クラブの中で最も速く最もキャラクター性が薄いカナもニアと一緒に主役に躍り出たのも嬉しいですね。何か進展が見られると期待できますから。
実際にカナの出番はかなり良かったです。明確に『めざせ! 夢のチャンピオンカップ』(以下『RFTSC』と表記する)の後日譚として言及されたのは初めてですよね。最も良かったのが、スピードを過信して暴れん坊だったカナが、ここでは『RFTSC』を通して成長しているんです。ええ、ヒロの教えをしっかり身につけて後に活かしている上、"カナ"の性格からも大きく外れてはいないし、映画以来とても魅力的に見えました。聞き分けも良くなっています。
挿入歌「Fast to Go Slow」は一見『RFTSC』の『はやいってすごい』のバージョン違いに聞こえるのですが、自分が速く走るのがどれほど素晴らしいかを歌う映画の曲と違って、"急がば回れ"という教訓を主軸に映画で得た経験が活きた歌詞になっていて、曲調もよくて気に入っています。
そうそう、UK版でニアを演じるシャーデー・スミスが、前期と比べ物にならないほど歌唱力が上がっていて驚きましたね。
ただし、問題点はいくつかあります。どうせならニアがせっかちになる理由を明細に描いてほしかったし、挿入歌でトーマスを追い越しているにもかかわらず工事現場を飛び越える頃には結局トーマスたちより後に着いたことで視覚的には「思ったより速く着いた」感がなくて、単に『RFTSC』のオマージュをやりたかっただけのように見えてしまったんです。
前者に関しては、そりゃあ車軸が外れて遅れた為が理由に挙げられるでしょうけれど、ニアは初めから一貫して「グランドオープニングに間に合わせたい」「魚なしでグランドオープニングはできない」等の一心で速く走ろうとしてはいるんです。問題なのは、それを見逃してしまうくらいさらっと発言する程度だということ。それに普段から視野を広く持ち急がば回れの方法で走れているニアが映画以前のカナと同等レベルに陥っていることに違和感があります。ニアが目的のために一点の視野に狭まってしまう性格だとしてもです。ゴードンがトーマスに、プロットと関係ない潜水士の模型を紹介する描写より、初めからニアの葛藤を重点に置いていたらカナあるいはディーゼルと印象が被らずに済んだ気がします。
【チェックポイント】
魚の名前はそれぞれスケイリィ(Scaly)、ブループ(Bloop)、フラッシュ(Flash)、ジャンパー(Jumper)、モビー・リック(Moby Rick)、フィネガン(Finnegan)、ウィリー・オーシャン(Willy Ocean)、スプラッシュ(Splash)、スプラッシュ・ジュニア(Splash Jr.)、フィッシャー・F・フィッシュライト(Fisher F. Fishright)略してフィッシュ。劇中で全てパーシーが命名しました。後にニアが早口で彼らの名前をカナに紹介していますね。
モビー・リックは小説『白鯨』のモビーディックが元ネタでしょうね。他にも何らかの元ネタがあるかもしれません。もし気がついたらコメント等で教えてください。
また、日本語吹替版では共通した意味合いで独自の名前がつけられていましたね。それぞれうろっこ、えらっこ、ぴかりんこ、ひれっこ、ギョビー・リック、ギョラン、ウオーシャン、サカナッシュ、サカナッシュ・ジュニア、ミネラルうおーター。ギョランとサカナッシュの名前をつけるときだけカットされましたが後にニアが紹介してくれましたね。
本編の中で「絵文字(Emoji)」という言葉が出たのも初めてだしびっくりしています。申し訳程度の日本要素ですね。
全体的な面白さ:☆☆
遊び心:☆☆☆
キャラクター:☆☆
BGMの良さ:☆☆☆
アニメーション:☆☆☆
独創性:☆☆
道徳:☆☆
【最終的な感想】
展開がどうなっていくのか『タイタニック』の如く非常にわかりやすいし、ニアの描写に多少の違和感はありますが、会話は面白いし、テンポよく物語が進むので面白かったです。完璧ではないものの、今からでは信じられないほど単調で機械的なAEG第1シリーズ第1話とは比べ物にならないくらい良いスタートを切ったと思います。
加えて映画の経験を生かすなどキャラクターに成長が見られ、それをどう次に活かしていくのかを考えられている時点でAEGの脚本チームに信頼を寄せられます。
総合評価: 7/10