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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

Thomas & Friends: All Engines Go 第1シリーズ第8話レビュー

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

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AEG S1 E8 『The Biggest Adventure Club』『だいぼうけんクラブ』

監督: ジェイソン・グロー

脚本: ピーター・ガフニー

内容: サンディーは、クリスタルの洞窟への地図を発見したトーマスとの探検に着いて行こうとするが、探検するには小さすぎると言われて激怒する。

 

【このエピソードについて】

 8話でようやくサンディーにスポットライトが当たります。1話からすでにキャラ的にも立場的にも玩具のギミック的にも有能っぷりを見せる彼女の初の主役回でどういった物語を展開するのか。

 

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©︎Mattel

 ここでAEGシリーズの新キャラクターであるサンディーについて焦点を当てていきましょう。彼女はレール・スピーダー、要は保線作業時に使われるモーターカーがモデルです。デフォルメされているため明確な実機はわかりませんが、アメリカのフェアモント・レイルウェイ・モーターズ製のモーターカーが近いと思われます。

AEGではあまり実機の話は持ち込まなくていいのですが、その役割上コンパクトな見た目をしていて、立場的には従来のウィンストンで、劇中ではビクターとケビンの役割を果たしています。カートゥーンのおかげで彼女のフロント部分からは補助に役立つアームやウィンチ、スコップなどが出てきて、アニメ的な"手"の役割として活躍します。その見た目通りの活発な幼い少女で、トーマスらちびっこ機関車とよく一緒に遊び、砂や泥遊び、冒険好きといった面がある中、彼女の仕事のスキルか察しが良く、こだわりや溢れ出る熱意を除けば、ちびっこ達の中では比較的賢くてまともな性格をしていると思います。

 声優はUS版ではグリー・ダンゴ。とても楽しそうに飛び跳ねるサンディーにとてもぴったりです。本来はカナ役を担当する予定だったようです。UK版ではホーリー・ディクソン。グリーとは大幅に印象が異なりますが、サンディーがいたずらっぽいセリフを発するときに特に輝いて聞こえます。

 小さい見た目以上になんでも出来て、成長と可能性に満ち溢れた、活発で元気いっぱいの冒険好きな幼い少女の車両キャラクターは、従来のシリーズでは他に類を見ませんでした。女の子版フィリップみたいな。活発な少女という点ではカーリーやクレオが近いですが、それでもトーマス全体では新しくて面白いです。

しかし世間的に見ると、なぜ今までこのようなキャラクターが居なかったのかと思えるほど、典型的なよく見る主人公っぽい性格で、この番組だけの秀でたキャラクターアークが備わっているとは今の時点では言えません。

加えて、今回の物語を小さな車両が大冒険クラブ(The Big Adventure Club)の仲間に自分の価値を証明するというあらすじにした場合、典型例であると共に、オリジナルシリーズの類似性が浮かび上がるわけです。再び。

 

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©︎Mattel

 とはいえ、大冒険に出かける部分は悪くなく、面白かったです。特に中盤で、トーマスのフレネミー(ライバルと同時に友である)的立ち位置のディーゼルと利害が一致して、サンディーに気圧されながらも同行する場面が好きです。

(40年間使われなかった古い給水塔から出てきた)宝の地図を頼りにクリスタルの洞窟の機関車形水晶を探しに行くといったコンセプトにも実際にワクワク感があって楽しかったです。

 

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©︎Mattel

 また、いくつかのメッセージが込められていると感じます。元々の番組でも「小さな見た目でもそれ以上の事ができる」をテーマにした歌詞や物語がいくつか*1あるように真新しい物ではありませんが、教訓を学ぶのは自信たっぷりの彼女ではなく、トーマス、パーシー、カーリーの3台の方というのがミソです。小さな車体では冒険に出せないと仲間に身を案じられたサンディーが、誰よりも冒険を楽しみ、道を覚えつつ、誰よりも早くクリスタル機関車を見つけ出すといったお話です。小さくても大きなことができる、杞憂な心配*2、(※サンディーが彼らと同じ年齢の場合)ルッキズムに関係する道徳があるように思えました。

 そうは言いつつも、問題ないとも言い切れません。それはメインキャラクターがターゲット層の視聴者のお手本となる「子供」と設定されていることです。厳密には『トレインズ』のように親子関係があるわけではない*3し、サンディーとトーマスたちが同じ年齢かどうかにもよりますが、誰の監督もなしに意図的な「子供たち」だけで危険が多い洞窟を探検するのは間違っているような気がしなくもない印象です。このエピソードに限った話ではないのですが。

 従来では小さいと言われることが嫌いだったトーマスが学ぶのもどうなんだと思えるかもしれませんが、遊びに出かける洞窟の探検とは訳が違うと思います。

 

 

【チェックポイント】

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©︎Mattel

 カーリーもクモやヘビなどの一般的に"怖い"と称される虫や動物に対して好奇心を持っていて、相棒に負けず精神的に強いところが好きです。

対してパーシーは冒険に積極的に参加するものの、めちゃくちゃ慎重に行動します。おばけ退治マシーンやらシュノーケルやら変な発明品を持ってくる様はまるで『エド エッド エディ』のダブルDみたい。

 

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©︎Mattel

 激おこサンディーかわいい。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

遊び心:☆☆

キャラクター:PERFECT

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆

独創性:☆

道徳:☆☆

 

【最終的な感想】

 ほとんど記憶に残らないものですが、サンディーの魅力的な側面がこの1話にぎゅっと詰まっていて、冒険も楽しいものでした。

 一部のエピソードを除いて、最初のシリーズの大半の道徳が従来の番組からの引用や子供番組の典型と類似しているのが長年見続けている私にとっては少々残念です。2Dの絵柄に親しみやすい新しい子供のためにこれまでの良い教訓を用意することに意味があるのかもしれませんが、どうせキャラクターも動作からなる世界観構築も全く異なる別物なのだから、全く新しい教訓をたくさん用意した方が清々しいのではないかと思うくらい。そういうわけで次回の個別レビューは飛んで11話になります。

 

総合評価: 6/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てMattel, Inc.に帰属します。

*1:長編1作目『魔法の線路』、スピンオフ『Alfie Has Kittens』、S24『じょおうへいかのきかんしゃ』

*2:S23『レベッカといたずらかしゃ』

*3:トーマスとゴードンがその雰囲気を出していますがAdultとKidだからと言って親子設定ではないはずです。