※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S1 E4 『Rules of the Game』『たのしいコースであそぼう』
監督: ジェイソン・グロー
脚本: エイドレア・ウォルデン
内容: トーマスは仲間たちのために障害物コースを作るが、誰も自分のやり方で遊んでくれないことに腹を立てる。
【このエピソードについて】
物語のベースとなっているのは物作りに関係する道徳で、AEG第1シリーズ前半の中でも珍しく全年齢に共通する教訓です。最も近いのはレクリエーション企画とか、ゲーム業界とかでしょうか。自分は拘ってて面白いと思っていても、相手はどうとるかわからない。自分の思い通りに遊んでくれないかもしれないし、それぞれ得意不得意があって手にとってくれないかもしれない。何となくこのAEGシリーズも共通してる気もしますけど...(笑)
個人的な話になりますが、今回のエピソードを観て、Nintendo Switchソフト『スーパーマリオメーカー2』で、私が設計をこだわりにこだわって、即ミストラップなど意地悪な仕掛けが無い誰にでも楽しんでもらえる自信作を作ったのに、主に海外の方から「難しい」や「F*ckin' boring」やら猛批判を食らってショックを受けたことを思い出しました。ゲーム初心者には難しいし、アクション特化のアイディアは良くても遊びは大して面白いものではなかった、つまり遊んでもらう相手への配慮が一切足りてなかったんですね。
まさにそれと同じような状況が今回のトーマスです。ショックを受けた私と違って、AEGのトーマスはまだ小さな子供なので怒ってしまいます。誰もルール通りに遊んでくれないし、カーリーとサンディーが障害物を通らない線路を付け加えるし、終いには仲間たちはコースから離れて別の遊びを始める。
そういえば私も小さい頃はジャングルジムがすごく怖くて、幼稚園の先生が用意したコースをまともに走れなくて理不尽に叱られたことがあったなぁ。
"スーパー・グルグル・くるりんぱ線路"の販売促進エピソードのように見えるかもしれませんが、物語はきちんと成り立っていてまともです。
物語の後半は、トーマスが実体験や実情を経て、どうして仲間たちが嫌がってコースから遠ざかっていくのかをその身を持って学ぶところが描かれます。貨車の石を平らにするときに勝手にピーピー汽笛を鳴らすことに対して、ゴードンに「俺がしないことはするな」と叱られます。これはトーマスが仲間たちに怒ったこととよく似ていますね。ていうかこの台詞めちゃくちゃゴードンっぽいしまるで人生の先輩だな…(笑)
現実の高速列車が急カーブを苦手としているのと同じように、カナも共通していたのは個人的には少し驚きでした。メキシコ放送当時はまだ映画を観てなかった時です。鉄道はカタチだけで描写はめちゃくちゃだと思っていたからです。まあめちゃくちゃなんですけども。
他にもパーシーは高い坂に恐怖を覚えるし、ディーゼルの黒煙はトンネルで充満させるには煙たすぎた、サンディーは単に泥遊びが好き。それぞれ楽しませるのに遊びの幅を広げ、柔軟な対応をするのが必要だったと。
ニアが登場しなかった理由は今回のトーマスと同じ性質だからでしょうか。
先程の通り、物語はまともで、スーパー・グルグル・くるりんぱ線路も物語に統合されているし、構成は上手いです。教訓も遊びを考えたい全年齢に共通し、ヒントになり得ます。ただ、その一点に集中しているため、冗長に感じてしまい、退屈でした。それが一見バカバカしく見える一因なのかもしれないと思います。全てを完璧に説明しなくてはわからないほど子供たちはそれほど理解力が無いわけではないのです。
【チェックポイント】
スーパー・グルグル・くるりんぱ線路(Super Duper Loop de Looper)という従来の『きかんしゃトーマス』では絶対にやらない仕掛けが登場します。…え、『Go! Go! 地球まるごとアドベンチャー』に出てた? あれは線路じゃなくて脱線して一回転しただけじゃないですかー。しかもなんの意味もないアクションだったし。
これはおもちゃの販売促進というよりは、AEGがどのような世界観で機関車が動くのかをわかりやすく描写したものだと思います。現におもちゃは1年後に販売されましたし。フィッシャー・プライスから出ているトラックマスター・レボリューションのセットは『BWBA』の頃に出た仕掛けの流用品でしたし。プラレールは放送前に出たけど。
それにこのくるりんぱ線路はこれ以外のエピソードにも出てきます。
蒸気でハイタッチする"Sky-Five"。
日本語吹替版では、"けむりタッチ"と訳されました。
全体的な面白さ:☆
遊び心:☆☆☆
キャラクター:☆☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆
独創性:☆
道徳:☆☆☆
【最終的な感想】
教訓自体はとても良いと思います。その伝え方が退屈だったので、それほど繰り返して観たいとは思いません。最初の頃にレビューを飛ばした理由、なんとなくわかったでしょう?
しかし、ものづくりに勤しむ私にとって、大変良い学びになったのはまごうことなき事実です。
総合評価: 6/10