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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第20シリーズレビュー第2回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S20 E03『Toby's New Friend』『トビーとフィリップ』

脚本: アンドリュー・ブレナー

内容: フィリップはトビーと仲良くなろうと競走を持ちかけるが、トビーは競走が好きではなかった。

 

【高評価点】

・トビーの性格。

・フィリップが適切な教訓を学ぶ描写と純粋さを表す描写。

・トーマスの役割。

・競走シーンの音楽。

 

【低評価点】

なし

 

 

 

【このエピソードについて】

 タイトルカードの時点で、フィリップの話をアンドリュー・ブレナーが書いてると知った時は嫌な予感がしました。これは、第19シリーズの各レビューに書いた通りです。私はフィリップの最も子供っぽいキャラクター像といろんな可能性を秘めている彼が大好きなのですが、だからこそ彼の評判の悪さを常に気にかけています。チャーリーと霧島組もね。

ブレナーの2つのエピソードで彼に嫌悪感を示すほど迷惑に感じるキャラクターと、変に彼を歓迎するキャラクターと両極端な絡みをしたことと、両方のエピソードでもフィリップ自身が教訓を学んだのかがはっきりしない(イコール、物語を台無しにする)展開があったため、華々しいデビュー作なのに、おそらく脚本家の意図に反してファンに嫌われる要因が作成されており、どうにか改善してほしいなとその後強く切望していました。今回はトビーと絡むことになるのですが、はてさて。

 

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©︎Mattel

 さいわいにも無用な心配でした! 今回は物語がしっかり構成されていて、扱いが上手かったです。確かに彼はまだ独断的で最後まで押しが強いので、キャラクター像自体を苦手としている人もいるかもしれませんが、ここで教訓をしっかり学ばせたことのは彼にとって大きな一歩です。さらに成長する可能性があります。しかも、彼を極端に嫌うゴードンやジェームス、極端に歓迎するトーマスではなく、彼に対して微妙な反応を示すトビーと絡ませたことで、フィリップの性格がよりしっくりくるようになったとさえ思います。

 全体を通してわかるのは、S15『あたらしいなかまベル』の焼き直しということです。同じ教訓でトビーが絡んでいる以上、それしか言いようがありません。同じ鐘を持つ者同士でベルがトビーと仲良くなろうとすり寄るのを、フィリップがトビーを同じ形のディーゼル機関車と勘違いするのに置き換えるとこの話になります。

しかし、このエピソードで本当に良かったことはトビーの性格です。第5シリーズからシャロン・ミラー/サム・バーロウ時代にかけて、あとS18『トビーとしんごう』では弱気な性格で描かれていた彼が、本来の性格に戻っただけでなく、素晴らしいキャラクター性を見せたんです。

『あたらしいなかまベル』では競走することに拒否感があった理由が「古いから速く走れない」という謎設定で対話を待たずにどこかへ行ってしまう小動物みたいな行動をしましたが、今回は動機が「穏やかな風景を走るのが好きだから」に置き換わっています。さらに、ヘンリエッタに「競走するには古い」*1と言われるとしばらく怒るなどプライドの高い一面も描かれましたそう、そうです。これでこそトビーなんですよ!! 古いとか電気機関車とか思われるの嫌うんですよ!! 意外とプライド高いんですよ!!

競走をする前に作業員のことを気にかける様子もトビーらしいです。作業員たちが競走に興味津々だったのが面白かったです。ヘンリエッタとの夫婦漫才も素晴らしかったですね。S18『トビーとしんごう』と違って対等に描かれていた感じがします。フィリップとの対話もお婆ちゃんと孫みたいでほっこりしますね。

 

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©︎Mattel

 競走といえば、このエピソードで最も好きな瞬間です。フィリップは勝つことより友達との瞬間を楽しむ方が好きなようで、トビーが追いつけないことに気づくと、自分を追い越せるようにスピードを緩めるんです。どれだけフィリップが友達に対して純粋かがよくわかります。第4シリーズの挿入歌「きょうそうしようよ」を思い出しました。「勝つことばかり考えないで、大事なのは楽しむこと」それをあえて言及せずに映像で落とし込むことでより効果的に子供に伝えることができます。一緒に遊ぶときに友達を持ち上げることができるフィリップ、なんて魅力的なのだろう。

クリス・レンショウの音楽も素晴らしいです。競走の時は本当にダイナミックで、スピードを緩めてトビーが追い越していく瞬間、フィリップとトビーがどれほど楽しんでいるのかを表しているかのようでとても印象的です。

 

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©︎Mattel

 「人それぞれ好みは違えど友達は作れる」という教訓のテーマも、今のフィリップに適しているだけでなく、これから幼稚園や学校で友達作りをするであろう視聴者の子供たちにも価値があります。私には友達が複数人いますが、その中で共通の趣味を持っている人は僅かで、それでもまだ友達として親しんでくれている人たちがいます。あるいは、共通する趣味があっても違う趣向や考えを持っている人もいますね。

ニュアンスは少し違うかもしれませんが、"日本人だからといって全員寿司が好きとは限らない"とか、"スポーツ好きや鉄道好きといえば男性"といった偏見にも機能しますよね。それらが共通しない人とでもお互いを理解をし合えば友達になれます。

 トーマスの扱い方も良かったですね。特にトーマスはこの教訓をすでにS15『ヒロのホームシック』で学んでいるので、教訓を伝える役割としても、彼の支線がフォーカスされていることもあってナップフォード駅が彼にとって始発/終点という描写でも最適でした。

 冒頭のナップフォード駅ではドナルドとダグラスが急行列車を重連する様子も見れます。カメオ出演ですが必見です。

 

 

【チェックポイント】

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©︎Mattel

 S15『あたらしいなかまベル』の焼き直しとはっきりわかるのは、ベルが出てくる点ですね。彼女の鐘を一瞬トビーと間違える瞬間が可愛らしいです。

 

 

全体的な面白さ:☆☆

鉄道らしさ:☆☆☆

リアリズム:☆☆☆

キャラ活用:PERFECT

BGMの良さ:GREAT

アニメーション:☆☆☆

道徳:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 最終的にフィリップはまだ成長しなくてはならない部分を残していますが、お互いにお互いの好みを理解しているので大丈夫です。それにとても素敵なエピソードということに変わりはありません。テーマは本当に素晴らしいです。

 

総合評価: 8/10

 

 

【第20シリーズ総合評価】

1 うたうシドニー 9/10

2 トビーとフィリップ 8/10

 

 

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:吹替版では「速く走れない」と意訳をされました。