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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

Thomas & Friends: All Engines Go 第2シリーズ第33話レビュー

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

AEG S2 E33 『Salty's Sea Shanty』

監督: キャンベル・ブライアー

脚本: ニキ・リットン

内容: ソルティーが歌い聞かせたシーシャンティをもとに、トーマスとパーシーはソドー島の宝探しを始める。

 

【このエピソードについて】

 ソルティーの話から宝探しするエピソードといえば、長編『謎の海賊船と失われた宝物』よりもまず先にオリジナル第10シリーズ『かいぞくのたからもの』が思い浮かびます。個人的には、『トーマスとジェットき』に次ぐ第10シリーズ中の名作の一つと考えています。誰も信じない中トーマスが柔軟な着眼点から見つけ出した達成感と提督の優しさと認められる瞬間が堪らないんですよね。

さて、AEGバージョンはどのような宝探しになるのでしょうか。期待と不安を胸にいざ出発進行です。

 

©︎Mattel

 通算第85話にして、ようやく港のディーゼル機関車ソルティーがAEG初登場です。書籍でプロモが掲載されて以来、ずっと楽しみにしていたんですよね。なぜって、ブレンダムといえばソルティーですから。

 実際にアニメーションで見るソルティーは、AEG並びに2Dアニメーションに非常に相応しく思えました。まず嬉しいことに、従来のTVシリーズと調子がまんまなんです。クランキーとの関係性もそのままでいてくれているし。なのでいつものソルティーだと同時にグニャグニャ動く彼をなんの違和感もなくすんなりと受け入れられました。顎やシワなんかがまたいい感じで。

 

©︎Mattel

 さて、既に『かいぞくのたからもの』と同じプロットですが、もう一つ関連するものがあります。はい、AEG第1シリーズ『にじをおいかけて』です。これと同じように、全体的に挿入歌を口ずさみながら物語が進んでいくパターンのやつです。でも、幸いにも中身と道徳までの道のりがあまりにもペラペラな後者と違い、話の導線はしっかりしていて劇中を通して流れる挿入歌は意味のある方法で成り立っています

 その挿入歌は「The Sodor Shanty」。シーシャンティというのは船乗りが甲板で作業する際に歌われる労働歌の一種です。これがまたソルティーらしいですよね。船乗りの歌を口ずさみながら働く従来の彼にも通じます。歌詞は海賊の財宝の在処のヒントで、ソルティーが港で歌い、トーマスとパーシーがその歌を元に財宝を探すというスタイル。先述の通り『にじをおいかけて』と同じように歌いながら展開されます。唐突に始まる「Chasing Rainbows」よりよっぽど理にかなっているやり方であると同時に、この耳に残りやすいリズムが楽しくて冒険感を与えてくれるんです。

 ソルティーがバルストロードに乗るのないし会うのなんて初めてのはずなのになんかかなり馴染んでます(笑)

 

©︎Mattel

 『かいぞくのたからもの』より良かった、楽しかったと思える点は楽しい歌とテンポの良さもそうなんですが、ソルティーも途中から行動を共にするところです。唐突に虹を追いかける、唐突に宝探しを始めるのではなく、ソルティーも長年探し求めていたという目的があるのと、柔軟な発想は子ども機関車たちに任せて褒め、彼らの鋭さを立たせる場面が好きです。大人より子どもはすごいんだぞみたいな展開好きなんですよね。『魔法の線路』で云う「小さくても大きなことができる」みたいなやつ。

結末も満足感があって良かったです。好奇心旺盛なパーシーが見られるのも嬉しいですが、ヒントを辿って友情を深める物語ならトーマスとパーシーが親友なのは前々からなので、トーマスとニアでも良かったような気もしています

 

©︎Mattel

 クランキーと同様に信じない機関車もいるのも『かいぞくのたからもの』と同じですね。個人的には終始怒ってるジェームスとエミリーに比べられば不快感は残りません。カナのように仕事に励んでいる様子が見られるのも、現実的なことにしか興味がないディーゼルが見られるもいいです。不満ではないけれど、ただちょっと引っかかるのが、ニアやカーリーとサンディーが財宝を信じなかったことですね。彼女たちなら冒険に食いつきそうなものなんですが、それ以前に実は試みていて結果的には見つからなかった→「これは作り話である」とかなんですかね。

 

©︎Mattel

 鍾乳洞みたいな場所はとても綺麗でしたね。

 

 

【チェックポイント】

©︎Mattel

 というわけでチェックポイントではAEGのソルティーについて深掘りしていきましょう。最初にお話しした通り、オリジナルシリーズと口調や趣味を含む調子がそのまんまで変更点がほとんどないこと自体が嬉しいのですが、もっと嬉しいことがります。それは大きな変更点に該当するものです。

 まず、従来のソルティーはイングランドとソドー島から離れたことがなく、港での噂を耳にしながら世界中の海の伝説を仲間達に話すという滑稽なキャラクターだったことに対し、AEGのソルティーはケンジよろしく世界旅行をしていたらしいんですよね。これにより説得力が増幅して、(憎めない)胡散臭さがなくなるんですよね*1。ウィフが発明のために篭っていたことといい、従来のキャラクターがどのように過ごしていたのか、なぜこれまで姿を表さなかったのかをメタ的にしないよう描写するのがお上手ですね。

 それから、先述したように、単に噂を流すだけのキャラクターじゃなくなったのも嬉しい点です。元々、従来からソルティーには行動力が備わっていて初登場の時点から多数の物語で主役を務めていたのですが、基本は港を離れない(離れたくない)キャラクターに設定されていましたので、S7『ソルティーとあらし』やS8『いきすぎだよ、ジェームス』みたいに展開の都合上やよほどの仕事がない限りは海辺から外へは移動することが殆どなく、特に怪談や海の噂を流した後は基本的に傍観者で、冒険に加担することはなかったんです。そこが『かいぞくのたからもの』と異なる点であり、次のエピソードでも利点として働いています。

 声優はUS版がスコット・マッコード。『イン・ヤン・ヨー!』のヤン役などの人です。本当に素晴らしい声の出演で、一声でソルティーでわかる彼らしさとスコット氏らしさを兼ね揃えている上、アイルランド訛りだし、何より歌がお上手なんです。楽しそうに演じられているように聞こえて、ずっと聴いていたくなります。

UK版はガイ・ハリス。私のわかる範囲では『Becca's Bunch』のRingo役の人ですね。(詳しい人がいたら教えてほしいです)。こちらもがなり声がソルティーらしくて好きなんですが、歌のキーが合わないのかキャラ声が難しいのか挿入歌が聞き苦しくて残念です。挿入歌に関して、子役は許せるんですが、英国の大人の声優に関しては、どれほどシャロン・ミラーのセンスが良かったかが可視化されますね。ベレスフォードといい。

 

©︎Mattel

 ロルフ城にこんな秘密があったなんて。少々強引な気もしますが、このように残されているということは海賊と王族になんらかの関係があったのかもしれませんね。問題はこの地図が鉄道が敷かれた後に作られたものということですかねぇ。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

遊び心:☆☆☆

キャラクター:☆☆☆

BGMの良さ:GREAT

アニメーション:☆☆☆

独創性:☆

道徳:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 独創性はなく、洞窟内に遠回りの線路があるとか何かと都合の良い展開もありますが、楽しくて満足感のある今期のお気に入りのエピソードの一つです。またまた怒られるかもしれませんが個人的には『かいぞくのたからもの』より面白く感じましたし、子ども機関車たちが全員バカで描かれることもなければ、ソルティーが良い個性をそのままにグレードアップしているのが嬉しいです。

 

総合評価: 9/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てMattel, Inc.に帰属します。

*1:S19『ソルティーはうみをいく』が無ければと思いながらも、そもそもあの現実的な世界観でビミニに"いた"こと自体がおかしいんです。