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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第24シリーズレビュー第17回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

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S24 E14 『Yong Bao and the Tiger』『ヨンバオとトラ』

脚本: イアン・マキュー&デヴィッド・ストーテン

内容: ヨンバオは自分の炭水車に虎のエムブレムが描かれている理由をトーマスに話す。

テーマ: ご褒美

 

【高評価点】

・同名のミニストーリーの映像化にして、ヨンバオのバックボーンと成り立ち。

・エムブレムに焦点を当てたアレンジをしながらも一ミリもブレないプロット。

・丁寧なアニメーション描写。

 

【低評価点】

無し

 

 

【前語り】

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©︎Mattel

 『Yong Bao and the Tiger』は、他の記事でも言及したように、2016年10月に発売された中国語版『The Great Race』*1のDVDに収録されているミニストーリーが初出です。現在は削除されていますが、2017年に中国版YouTubeにて投稿されたことで国外のユーザーにもその存在が知られることとなりました。今回のCGアニメーションではなく、「Great Race Friends Near and Far」シリーズに似た絵柄の2Dアニメーションでした。

 

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©︎Mattel

 中国人ユーザーによる英訳を介してそのミニストーリーを視聴した時、私は中国の子供たちが羨ましいと思っただけでなく、TGRキャラ、例えばヨンバオの掘り下げは中国だけでなく、全ての国で観られるようにするべきだと思っていたのをよく覚えています。キャラクターの魅力を活かす最高の方法だったからです。

後に英国の公式YouTubeチャンネルにて原語版で公開されたりもしましたが、あれは所々カットされており、完全ではありませんでした。

また、当時の中国版YouTubeでは、そのほかにも、BWBAシリーズのようにトーマスがヨンバオと共に中国を冒険し、ヘリコプターや貨物船などのキャラクターと出会いながら冒険を繰り広げるミニストーリーがいくつか公開されていました。なので、BWBAシリーズを目前にしたときに、私はそれらが映像化することを願っていました。

 

 

【このエピソードについて】

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©Mattel

 さて、それが実際に本編で映像化されると知ったとき、私は大喜びでした。ヨンバオをはじめとしたTGRキャラクターの当初の設定は、設定として存在するだけで劇中で描写されることがほとんどないからです。まともに描かれたのはラジブとシェインとラウルくらいかな。そして私が第22シリーズのレビューで述べたように、本編のヨンバオは性格が完璧すぎる他案内役に回ることが多いので逆にキャラクターとして未発達と思っていました。

 

 内容はヨンバオがトーマスに回想を語る現在の場面を除いてミニストーリーとほとんど一緒です。道徳のテーマが"ベストを尽くしたご褒美"であるように、ヨンバオの過去がどうだったかではなく、彼のエムブレムに焦点を当てて物語っているところがポイントです。これと3Dアニメーションのおかげで元々強い物語が更に強く息が吹き込まれたと言っても過言ではないでしょう。物語はもちろん、視聴者を釘付けにするバランスの良いペース配分で、正直、第20シリーズのアールズデール鉄道回の脚色に匹敵する満足感でした。

 ちなみにトラと一緒に走る場面では、ミニストーリーと同じBGMがアレンジされて流れています。ヨンバオのキャラクター図鑑や、これまでの中国回でヨンバオが疾走するシーンにかかっていることが多いので、差し詰めヨンバオのテーマといったところでしょうか。

 

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©Mattel

 このエピソードの回想でヨンバオがかつてどのような機関車であったかを外見、仕事内容、状況、性格とその全てを明瞭に描写しているところが好きです。

 ヨンバオがボディを赤く塗られる前の姿は、紺色(劇中では青)で塗装されており、連結棒は錆びてボディ全体も汚れたみすぼらしい状態でした。仕事は操車場で貨車を入れ替えること。(このためフロントの連結器がイギリス製になっています。)

これを、その当時働いていたいじわるな機関車たちから毎日のようにいじめられていました。その中で、ある時操車場で見つけた希少な動物のトラとの出逢いから行動を起こすようになり、不思議な体験を得て彼の自信が成長します。

操車場でトラの安否を考えたり、探しに行ってそれについて行く辺り、当時のヨンバオはとても誠実で純粋なのだろうと思います。

 

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©Mattel

 100人の乗客を乗せた自分の列車ごとヨンバオに救われたことでいじわるな機関車たちも彼を認め、責任者と思われる鉄道検査官は尊敬の証にヨンバオのリクエストで彼にご褒美を与えます。シンプルな物語ですが、これを考えた脚本家(イアン・マキューかデヴィッド・ストーテンのどちらか)は『汽車のえほん』の良き理解者だと私は感じています。そして中国ではトラは百獣の王として知られ龍や赤い塗装と一緒に勇猛と幸福と力のシンボルであることを考えると興味深いものがあると思います。

また、ご褒美を与える道徳は、大人も必見です。

 

 ちなみに今回限りですが、ヨンバオの原語版の声優がダン・リーからクリス・ルゥクンホイに替わりました。理由は不明です。私はダン・リーが演じるのも好きでしたが、クリスの声はヨンバオの成熟した性格と、語りによく合っていると思いますし、聞いていて気持ちが良かったです。ダン・リーは鉄道検査官役で出ています。

 

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©Mattel

 ヨンバオのことをよく知らないトーマスに以上の出来事を話したことや、出番の少ないレイがチョイ役で登場したことも好きです。次はレイがなぜヨンバオたちと仲が良いのかも知りたいですが、残念なことに私たちには「次」が用意されていません。

ともあれ、ストーリー進行のやり方はとても良かったです。

 

 

【チェックポイント】

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©Mattel

 いじわるな機関車たち(The Mean Engines)は、ミニストーリーでいう大型テンダー機関車のダリー*2と小型タンク機関車のシャオフー*3というキャラクターに該当します。ミニストーリーと同様の形状ではなく、一方はカルロスの流用、もう一方はヨンバオの流用でしたが、名前がない脇役であることを考えると、それはそれで理にかなっているように思います。寧ろ彼らがダリーとシャオフーと呼ばれてないことが救いかもしれません。私としては彼らが生き生きと動いていることに感動を覚えました。

 この回想が初登場で、このエピソードの現実と他のエピソードにも出ていないことを考えるに、現在はもう使われていないか、他の場所にいる可能性が高いです。

 原語版の声優はこの回のヨンバオと同じくクリス・ルークンホイが演じています。この2台に声の特徴分けがされていないのが私にとって唯一の問題かなと思います。

 

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©Mattel

 ジャム・フィルド・トロントによるアニメーションは、第24シリーズの中でも特に丁寧に描写されているように見えます。他のエピソードが手を抜いているという意味ではありません。しかし、力を込めて描写してくれたのは非常に喜ばしいことです。

春夏秋冬の操車場の景色と、山頂の景色、そしてトラのテクスチャに注目してください。

 

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©Mattel

 トラと息を合わせるように咆哮するカットインが好きです。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆☆☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳教育面:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 今期の世界編は前のシリーズに比べて少ないほか、イタリアとオーストラリアのエピソードは考えていたより弱いもので、第22シリーズのように再び心配でしたが、中国回は前のシリーズよりさらに強く、それも私の好きなミニストーリーからの引用で、キャラクターも進行もアニメーションも素晴らしく、非常に魅了されました。私の中では世界編の中で最高のエピソードだったと思います。マキューとストーテンのコンビも最高ですし、これを映像化してくれたすべての人に感謝します。

 特にヨンバオがどのようなキャラクターなのかこの作品に全て詰められているので、子供たちはもちろん、原作好きな方や、映画と前のシリーズでヨンバオを好きになった或いは関心を持った方に是非とも観てほしい作品です。

 

総合評価: 10/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:『走れ!世界の仲間たち』

*2:中国国鉄前進型

*3:中国国鉄ET7型