※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S1 E32 『The Super-Long Shortcut』『スーパールートでいこう』
監督: ジェイソン・グロー、ショーン・ジェフリー
脚本: ピーター・ガフニー
内容: ゴードンは手伝いのトーマスの言動全てにケチをつけてしまう。
【このエピソードについて】
さて、第一報では、トーマスとちびっこ機関車たちを中心にソドー島で働いたり遊ぶのがAEGのコンセプトと言われていました。私は意識的に、主要キャラクターの中で唯一大人のゴードンは基本的にアドバイスや説教、陰から支えてちびっこたちにご褒美を与えるなど父親っぽい役割以上の活躍がないのだろうと考えていました。
ところがどっこい。ゴードンが主人公のスポットライトが当たる日は案外早く訪れたのです。
これは自分にとって期待以上でした。今回のお話はトーマスと一緒にゴードンも教訓を学ぶ、2台の主役回です。従来だったらゴードン主役回は毎回の恒例ですので驚きはしないのですが、AEGだと珍しいですよね。しかも1シリーズ目に。
お互いに言い争いをし、迷子になって初めてトーマスはゴードンのアドバイスを聞かなかったこと、ゴードンは過剰な心配でトーマスを信用しなかったことに気づいて反省し、改めようとします。これは子供のみよりも、大人にも響くというか、親子に共通する道徳ですね。お互いに詳しい場合、よく話を聞いて尊重し合うことが大事です。経験が少ないからと言って侮れない。危ない方向に行きそうになったらきちんと教える。年齢差のある友達とうまく付き合う方法でもあると思います。
ゴードンが故障するところから始まるのはもはやテンプレートと言えますが、今回は彼の代わりに配達を行うのではなく、彼と一緒に最短ルートで配達を手伝おうとするのがポイントです。また、連結器だけでなくブレーキの空気圧が漏れていて掛からないという、蒸気機関車っぽい故障の仕方をしていることにも注目。制作会社が違うとはいえ、S21『はやいぞ! あかいきかんしゃ!』の間違ったブレーキの仕組みから改善されていますね。
そしてその故障の前提、遅れ、重いレンガが物語に一定の「制限」を設けており、自由度が高い中で緊張感をもたらすように作用しているのがとてもいい点です。
キャラクターの扱い方もとてもいいです。AEGのゴードンは経験豊富の真面目で慎重な年寄りのような印象があり、今回で描かれた掘り下げも、違和感なく、ありそうだな〜と思って自然に見られました。
傲慢な性格は完全に消えており、小さな機関車を貶すことはなくなりました。貨車も牽く*1し、自分より速いカナのことも尊重しています*2。うぬぼれやな面は従来のシリーズと比較すると落ち着いていますが、今回は過去の武勇伝を嬉々として語ったりしていましたね。
他のエピソードでは馬鹿げた行事にイライラしたり*3、期待にそぐわない場合すぐに不機嫌になったりと、従来との共通点も健在で、100%丸くなったとは言い切れません。
あと、トーマスが自分の計画の妨げにならないように、ゴードンの気を逸らそうと武勇伝を語るように唆す悪知恵を働かせていたのが印象的でした。いつものトーマスがやりそうだし、AEGのトーマスでも違和感がないですね。
ディーゼルも完璧でしたね。負けず嫌いが思わずクスッとくる形で表現されています。最後にどんなルートで帰っていったのかも気になりますね。
【チェックポイント】
典型的なギャグシーンだけど、どんなルート通ってこうなったよ。
まさかピール・ゴッドレッドが出るとは思いもしませんでした。情景はハーウィックの流用で、風車を消して区別化が図られています。とはいえ、流石に内陸に港の風景は厳しいですねぇ…。AEG設定ではどこにあることになっているんだろう。
全体的な面白さ:☆☆☆
遊び心:☆☆
キャラクター:PERFECT
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆☆
独創性:☆☆
道徳:☆☆☆
【最終的な感想】
もし、漫画的な動きやトーマスとゴードンの年齢差を気にしなければ、ある程度の制限と緊張感が面白さを増幅させていて、その反面遊び心が薄い分、従来のシリーズ(CG中期・後期辺り)にあっても違和感がない内容だと思います。AEGとしてのキャラクターの扱いも完璧なのではないでしょうか。
ガキ大将とやんちゃ小僧みたいな"面目丸潰れ同盟"とはまた少し違う、慎重なパパとわんぱく坊主のまるで親子関係のようなトーマスとゴードン。この2台が絆を育む回も久しぶりな気がするので嬉しく思います。ラストでお互いに半目で目を合わせる瞬間がとても好きです。
総合評価: 9/10